イルカ漁の太地町漁師ら、映画『ザ・コーヴ』を語る 釜山国際映画祭
2016年10月14日 17:04 発信地:釜山/韓国
このニュースをシェア
【10月14日 AFP】米アカデミー賞(Academy Awards)長編ドキュメンタリー賞を受賞した映画『ザ・コーヴ(The Cove)』でイルカの追い込み漁を批判的に取り上げられた和歌山県太地町の漁業関係者らが12日、議論を呼んでいるイルカ漁について沈黙を破り、映画が地域に与えた影響などについて初めて海外メディアに語った。
ルイ・シホヨス(Louie Psihoyos)監督の『ザ・コーヴ』は2009年に公開され、イルカ漁に対する国際的な批判を高めるきっかけとなった。映画では400年の伝統を持つイルカ漁について、イルカを入り江に追い込んで食肉処理する様子や、漁師と環境活動家らとの対立が描かれた。
韓国・釜山(Busan)で開催中の第21回「釜山国際映画祭(BIFF)」でこのたび、太地町でのイルカの追い込み漁などををテーマにしたドキュメンタリー映画『ふたつのクジラの物語(A Whale of a Tale)』が上映された。映画は、太地町の協力を得て追い込み漁の現場を取材するとともに、漁に批判的な反対派の声も拾って、この問題を取り巻く状況を丁寧に描いた。
太地町では毎年約2000頭のイルカを捕獲している。『ザ・コーヴ』の撮影時、漁師たちは制作側に対してコメントすることを拒否したが、同町漁業協同組合の貝良文(Yoshifumi Kai)氏はその理由について、制作側の動機が明らかでなかったためだと述べた。漁師たちは、この映画の中で自分たちが残虐であるかのように描かれたことに動揺したという。
貝氏と一緒に上映会に出席した太地町の三軒一高(Kazutaka Sangen)は、『ザ・コーヴ』に対する国際社会からの反発は追い込み漁という手法に対するものと思えるとしながら、人々の目に触れないところで動物が殺されることには議論が起きないのかもしれないと述べた。その一方で、社会が変化していることや、動物のと殺がデリケートな問題をはらんでいることには理解を示した。
米ニューヨーク(New York)を拠点に活躍する、『ふたつのクジラの物語』の佐々木芽生(Megumi Sasaki)監督はAFPの取材に、この作品が論争を招くであろうことはわかっていたが、両者の意見を提示することが重要だと感じていると語った。
「観た人に考え、感じ、判断してもらいたい」と、佐々木氏は述べている。(c)AFP/Mathew Scott