私はかれこれ10年ほどゲーム業界で働いてきました。
そして、働き始める前もゲーム漬けの日々を送ってきました。
その歴史は物心を付いたときから数えて25年近くになります。
この四半世紀のゲーム機の進歩はすさまじいものがありました。
しかし現在、ゲーム専用機は存続の危機に立たされています。
しばらく連載形式で、家庭用ゲーム機の未来について私の思うところを投稿しようと思います。
今回は、これまでのゲーム市場を振り返ってみようと思います。
デジタルゲームの一般化
この時代は私は直接触れてこなかった時代です。
代表的なタイトルはインベーダーゲームで、テーブルにブラウン管テレビが収まったテーブル筐体という形で、業務用ハードの歴史が動き始めます。
喫茶店などで遊ぶことができ、これまでインタラクティブな映像遊びに触れてこなかった人たちを虜にしていったと聞きます。
家庭にゲームハード
家庭用ゲーム機という存在が登場し、自宅でゲームが遊び放題な時代が来ました。
この時代の代表ハードは ファミリーコンピュータ(ファミコン) でしょう。
業務用ハードと比べるとポンコツレベルの描画性能でしたが、
それまで自宅で業務用ゲームにの移植作品を体験をするには、X68000やPC98、MSXといった高価なパソコンしか選択肢がありませんでした。(こちらもポンコツ移植だったようですが)
そんななか、15000円ほどで購入できるファミコンは価格性能比で優れており、人気を得ました。
私は幼少期にファミコン中期を経験しました。
※ X68000はファミコンより後やで。というツッコミをもらいました。失礼しました。
一強皆弱
その後、スーパーファミコンの世代が訪れます。海外ではジェネシス(メガドライブ)が人気でしたが、日本においてはまさに一強皆弱の時代です。
ファミコンからスーパーファミコンへのスペックの進歩はすさまじいものがありました。
文句無しでファミコンからスーパーファミコンへの置き換えは進んでいきました。
思い返すと、私はこの時代が一番家庭用ゲーム機が輝いていた時代ではないかと感じています。
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王者交代
次は、俗に32bit世代と呼ばれる プレイステーション、セガサターン、ニンテンドー64 世代です。
この頃、ゲーム機は同一仕様のハードウェアが大量生産される事例として唯一といえる存在で、非常に贅沢な投資が行われました。
その結果、価格性能比は圧倒的なものになりました。
まさにゲームを遊ぶなら業務用ハードやパソコンよりもゲーム機のほうが優れている。という時代です。
この世代の覇者はプレイステーションとなるわけですが、これは素直で開発のし易いハードウェアという特性もあったでしょうが、
一番の変化はCD-ROMを採用したことで、製造コストを下げて(小売の取り分も下げて)、ゲームソフトの最終販売価格を下げたことが大きいでしょう。
CD-ROMは非常に読み込みに時間がかかり、正直なところ、スーパーファミコンと比べてゲーム体験は快適なものではありませんでした。
しかし、それでもスペックの進歩は魅力的で、ロード時間の問題は些細な問題でした。
任天堂は当時ロード時間を強く問題視しており、ユーザのニーズ(低価格>ロード時間短)や、映画などの映像業界色の強い海外主導で初めてゲームハードを開発したことで、ゲーム開発者の気持ちと離れた、開発のしづらいハードウェア設計をしてしまった。といったことが重なって覇権を譲ってしまいました。
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マルチメディア化と開発マインドの変化
ゲーム専用機は、プレイステーション2、ドリームキャスト、ゲームキューブ、XBOXの世代になります。
引き続き潤沢な投資が行われ引き続き圧倒的な価格性能比でハードウェアが製造されていました。
特にソニーの思惑はゲーム専用機にとどまらず、マルチメディア端末を見据えた動きを見せ始めます。
当時まだ未普及だったDVD視聴機能を搭載し、ユーザをひきつけました。
正直なところ、ゲーム機としての性能で見たとき、後続のゲームキューブ・XBOXだけでなく、先行して発売されていたドリームキャストより劣るものでした。
しかし、顧客が求めていたのは グラフィック性能 ではなく、マルチメディア機能によって生活が変わることだったようです。
一番売れたのはプレイステーション2だったかもしれませんが、本当にゲームが好きな人の中には、この世代で最も価値があったのはドリームキャストだった。という人もいるのではないでしょうか。
商業的には失敗しましたが、そのくらいゲーム専用機としては魅力的なハードでした。
このころ、開発サイドとしても大きな変化がありました。
開発費の高騰が問題視されるようになってきました。
この頃まで、ビジネスというよりは趣味的にゲーム開発は行われてきていました。
そのため、開発者の興味という要素で会社が回ってきましたが、開発費の高騰とゲーム市場の頭打ちによって利益率が落ちてきたのです。
結果、企業の倒産や統廃合が進みました。
この頃から、ゲーム開発は趣味的な色からビジネス的な色を強くしていきました。
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王の帰還…?
これまで据え置き型の家庭用ゲーム機ばかり触れてきましたが、ここでそうは言ってられない変化が訪れます。
ニンテンドーDSの登場です。任天堂の仕掛けてきた革新的な変化は、2画面でもタッチスクリーンでもなく、Touch! Generations という、従来のゲームの枠を超えたゲーム体験の提案でした。
脳トレ、nintendogs、しゃべるお料理ナビ、大人の常識力トレーニングDS。これまでのカテゴライズではゲームと呼ばれなかった製品が、一度ゲーム機から離れてしまった人々を再び呼び戻し、次々ミリオンヒットを飛ばしていきました。
その流れにのって、据え置きハードである Wii も爆発的な売れ行きを見せました。
こちらも、Wii Sports や Wii fit といった、異色のタイトルが人気を得ました。
しかし、そうした状況は長く続きませんでした。
ニンテンドーDSのブームから5年も経つ頃には、奇跡的に呼び戻したユーザたちも再びゲーム専用機を離れ、ゲームバブルは弾けていました。
この時の任天堂の失敗は、せっかく呼び戻したユーザたちを固定客化することに失敗したことでしょう。
黒船来航
Wii の影に隠れながら プレイステーション3 と Xbox360 も発売されていました。
これらのハードウェアは相変わらず惜しみない投資が行われ、プレイステーションは投資に見合った成果がだせませんでしたが、Xbox360は素晴らしい成果を上げ、未来を先取りしたようなハードウェアスペックで世に送り出されました。
日本市場がDS/Wiiバブルに湧いていた一方で、海外はXbox360への投資が進んでいました。
これは、プレイステーション2の時代に開発者よりビジネス系の人間の発言力が大きくなっていた日本と比べて、海外ではまだ開発者の発言力が大きく
よりハイスペックで、優れた開発ツールで、自由な開発の出来る Xbox360 の人気が高かったのです。
その影響は日本にも訪れていました。
国産ゲームはニンテンドーDSを中心に展開されていました。
そのため、プレイステーション3やXbox360向けには国産ゲームの発売が途切れがちだったのです。
そんなハードコアゲーマーの心の隙間を埋めてくれていたのは海外産のゲーム。いわゆる洋ゲーです。
この頃から徐々に日本でもハードコアゲーマーを中心に洋ゲーが受け入れられるようになっていきます。
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\無料です/
ゲーム市場を語る上で避けられない変化がもう一つ起こっていました。
いわゆるソーシャルゲームの登場です。
最初は facebook や mixi といったソーシャルネットワークサービス上の友達と一緒に遊べるWEBゲームが始まりでした。
しかし、日本では変わった形で普及が進みました。
携帯電話向けには i-mode を代表するプラットフォームが公式サイトという形で月額300円程度でファミコン〜スーパーファミコンくらいの規模のゲームを遊べる環境を作っていましたが、モバゲーとGREEが無料でゲームが遊べる!というのを謳い文句に非公式サイトで勢力を拡大していきました。
当時モバゲーやGREEが提供していたものはゲームと謳っているものの、ほとんどゲームの体をなしていない1ボタンFlashゲームでした。
怪盗ロワイヤル、ドラゴンコレクション、ドリランドといったタイトルでブラウザゲームとしてガチャやスタミナといった独自の文法のゲームが人気を集めていきました。
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iPhoneブーム
次はソーシャルゲームの世界で新しい流れが生まれました。
iPhone3GS/iPhone4 あたりでソフトバンクが実質無料、割賦販売という方式で、iPhoneブームに火を付けました。
iPhone のブームはソーシャルゲームを飲み込みます。パズドラの登場でした。
ここで初めてソーシャルゲームは家庭用ゲーム的な要素を手に入れたことになります。
その流れは 黒猫のウィズ、モンスト、白猫プロジェクト と続いていきます。
そして、進歩するに従って、ゲーム的な要素はどんどん強化されていきました。
専用設計の終焉
すっかり、電話機まわりの話題が続きましたが、再び専用機に話を戻します。
ニンテンドー3DSが発売されましたが、人々の興味は iPhone をはじめとしたスマートフォンに移っており、うまく販売を伸ばすことができずに大幅な値下げを余儀なくされました。
当時の任天堂はDS/Wiiで異常なまでの利益を出していたため、ニンテンドー3DSはコスト感を失い、性能に対して原価が異常に高い状態になっていたため、値下げにより大きな痛手を負いました。
もう一つ、ソニーのVITAです。ここでこれまでで初めてアーキテクチャ面で大きな変化がありました。
ゲーム専用機は同一仕様のハードウェアを大量生産することで、価格性能比の高い製品を世に出し続けてきましたが、同一仕様のハードウェアの製造数では iPhone をはじめとしたスマートフォンの方が圧倒的に多くなっていたのです。
そのため、VITAでは専用のハードウェアの開発をやめ、スマートフォン向けの技術を応用してゲーム機を作るというアプローチにかじを切りました。
この裏では、ソニーがプレイステーション3に対して莫大な投資を行ったにもかかわらず、結果を出せず債務超過に陥ったソニー・コンピュータエンタテインメントという会社を解体させてしまうくらいの打撃を負った事があります。
その後、同名の会社を再度設立しプレイステーション事業自体は継続されました。
ソニー、SCEのネットワーク事業を吸収合併 新SCEが誕生 - ITmedia ニュース
そして、現在。
専用機ではプレイステーション4が世界で猛威を奮っています。
プレイステーション4 も VITA と同じく、ハードウェアの専用設計はやめて、独自色の強いアーキテクチャで、開発者の適応によって性能を引き出していく。という従来のやりかたは開発費の高騰を招き、開発者に嫌煙されるため、パソコン向けの技術を転用し、移植性を高めることにしました。
おっと。忘れてはいけません。マイクロソフトの Xbox ONE はといいますと、開発当時にWiiブームを見てKinectというモーショントラッキングによるゲーム開発などに興味を持ってしまい、更にはリビングの中心にあるデバイスとしてホームハブを目指して開発が進められました。
その結果、Xbox360ではゲーム機の性能に全力投球して未来を先取りしたような性能を出していたのに対して、Xbox ONE は少々物足りない性能に落ち着いてしまいました。
結果、iPhoneなどの普及もあり、もはやゲーム専用機にはハードコアゲーマーしか残っておらず、スペック重視でプレイステーション4が選ばれる結果となりました。
ああ、もう一つありましたね。Wii U。
Wii U はニンテンドー3DS同様、高コスト体質になった任天堂が価格性能比に合わない製品をだしてしまい、またハードウェアの特徴でも有るゲームパッドの魅力を伝えられず早々に土俵から蹴り落とされてしまいました。
再びプレイステーション4に話を戻して、ハードコアゲーマーの心をつかむことに成功したソニーは次の一手を用意していました。
PS VR です。VR によって新しいゲーム体験を生み出して、ライトゲーマーの心をつかみたい。といったところなのかもしれません。
しかし、現在見ている限りはVRはライトゲーマーの心を掴めそうな代表作が出てくる気配がありません。今後どうなるか注目したいところではあります。
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次回予告
次回は今後のゲーム専用機がどうなっていきそうか。私の予想に関するお話をさせていただきたいと思います。
※ この記事は個人の主観で書かれており、過去に所属していた会社や所属している会社の見解ではありません。