東京都の小池百合子知事が奮闘している。築地市場の豊洲移転問題や東京五輪・パラリンピックの見直し、さらには衆院ダブル補選の応援と八面六臂の活躍だ。はたして東京の「小池改革」は成功するのか。
改革成功を期待しつつも、いくつか気になる点を指摘しておきたい。まず築地市場の豊洲移転問題だ。
豊洲市場で「いつ、誰が、どの時点で盛り土をしないと決めたのか」という肝心の問題について、小池知事は9月30日の記者会見で「ピンポイントで指し示すのは難しい。流れの中で、空気の中で進んでいった」と説明した。
率直に言って、私は「そんなバカな話があるか」と思う。知事の説明自体が頷けない。というのは、都が公表した自己検証報告書(http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/toyosu/siryou/pdf/team02.pdf)は明確に次のように指摘しているからだ。
「平成23年(2011年)9月6日、実施設計の起工決定が行われた。本起工決定が地下のモニタリング空間設置に係る局の機関決定であったと判断される。決定権者は中西(充)市場長(当時)であった」(6ページ)
そうであれば、中西氏(現・副知事)は決定権限を持つ責任者として承認印を押しているのだから、少なくとも責任者の1人が中西氏であるのは間違いない。なぜ、そう説明しないのか。
同年8月時点、さらにその前の段階でも新市場整備部の部課長会で地下にモニタリング空間を設置する案が議論されている。だから、たとえば部長とか課長とか下の役職者にも責任を問われるべき人間がいるはずだ。
どこまで責任を問い処分するかは小池知事の裁量に任せるとしても「空気の中で進んでいった」という言い方は、まるで知事自ら責任をあいまいにしようとしているかのように聞こえる。
そもそも報告書自体のデタラメさも明らかになっている。
報告書は08年12月25日に開かれた技術会議で「技術会議の独自提案として」モニタリング空間が提示された、と記していた。ところが、10月7日の都議会経済・港湾委員会で都は「実際には都が提案していた」と誤りを認め、訂正した。
都は盛り土をせず、地下に空間を設けた責任を技術会議に転嫁しようとしていたのである。肝心要の部分が嘘だった。こんな報告書を受けて「流れの中で決まった」などと説明した小池知事の責任も免れない、と私は思う。報告書の出し直しは当然だ。
私は9月16日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49736)で「改革のテーマと段取りを決めるのが副知事や局長たち」である点を指摘して「これで『改革本部』とはあきれてしまう。官僚任せにしていて、真の改革などできるわけがない」と書いた。
まさに心配した通りになった。
麗々しく「自己検証」などと銘打って事実究明を官僚任せにしているから、官僚はデタラメ文書をでっち上げて急場をしのごうとしたのだ。彼らは責任逃れが性分なのだから、自ら犯した失敗の自己検証などできるわけがない。
上司の責任を問おうものなら、たちまち役人世界で村八分になって、自分の天下り先がなくなってしまう。これは原理の問題である。責任追及をするつもりなら、役人と利害を共にしない人間に任せなければダメだ。
次に東京五輪・パラリンピック問題である。こちらは都政改革本部の東京オリンピック・パラリンピック調査チームが9月29日に報告書を出した(http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/kaigi02/olympic/01houkokusyo.pdf)。
これは全部で97ページもある内容盛り沢山の文書だ。たとえば予算管理の不備や五輪関係者で作る調整会議のガバナンス不在を指摘し、ボートとカヌーの競技場である「海の森水上競技場」など3施設の代替案を具体的に提示した。
私が気になったのは「調査チーム」とは何者か、という点である。政策に関わる報告書は執筆者やメンバーの氏名が冒頭か末尾に記載されているのが普通だ。英語の文書なら責任者のサインもある。責任を明確にするためだ。
ところが、この報告書には「調査チーム」とはだれなのか、どこにも書かれていない。もしかしたら、どこかで公開しているのかもしれないが、報告書本体に記載するのが作法だろう。つまり「正体不明」の報告書なのだ。