──
将棋連盟は具体的な物証を示していないようだ。したがって通常の警察の出てくるような「物証を集める」という手法は使えないことになる。(隠しカメラによる VTR などは存在しない。仮に存在したとしても、スマホ画面がうまく映るわけがない。カメラの解像度はすごく低いからだ。)
物証がないとすれば、推理によるしかない。では、推理は?
(以下で言う時期は、2016-10-13 という1日における時期。)
初期
まず、状況を聞いた限りでは、「冤罪では?」という気がした。仮にスマホを操作している場面が目撃されたとしても、将棋ソフトを使っていたということにはならないからだ。
「ひょっとして不倫していて、不倫相手とスマホで連絡を取っていたのでは?」
というふうに想像したこともあった。
そもそも、棋士がスマホを使うなんて、およそありえそうにないし、不自然なことだ。もともと十分な実力があるのに、あえて棋士資格を喪失するようなリスクを冒すはずがない。まったくの素人が不正をするのならまだわかるが、これほどの高段者が(棋士生命を賭けて)不正をするなんて、あまりにもリスクが高すぎる。とうていありえそうにない……というのが、状況からの推測だった。
──
この後、三浦棋士の結婚生活という記事が見つかったので、読んでみた。17歳も年下の女性と結婚したそうだ。毎日幸せな結婚生活を送っている……と思ったら、そうではなく、毎日「我慢、我慢、我慢」であるそうだ。
《 三浦弘行九段、年下女性との結婚生活は「我慢、我慢、我慢」 》
中村女流「どうですか?なにか変化はありましたか?」
三浦九段「そうですね・・・まあ、年齢が離れていると、我慢することが多くて。疲れます」
中村女流「話が合わなかったりとかってあります?」
三浦九段「そうじゃないんですけど・・・いやー我慢することが、ええ」
中村女流「やはり年上の(三浦九段の)方が我慢することが多い?」
三浦九段「いやー私ばっかり我慢してる気がするんだけど」
中村女流「結構我慢が必要?」
三浦九段「か、かなり。かなり」
視聴者C「将棋と奥様どちらが好きですか?」
三浦九段「なんとなく『仕事が忙しい』だと不満そうなので、例えば趣味があればそっちを我慢して、奥さんへの時間に充てる。だからもう、自分の時間がないんですよ」
・結婚の決め手は?
三浦「優しいと思ってしまった。いやー大変ですよ本当に。優しいから結婚したら楽だなと思ったら・・・」
・年齢差で苦労することは?
三浦「ひたすら我慢ですよ。我慢大事。喧嘩しても勝てないし、とにかく我慢です。何事も我慢です」
・新婚生活はどう?
三浦「大変なんですよ。ゴミ出しは私なんですよ。食器も私がよく私が洗うんですよ、洗濯もたまにはやってくれるんですけど私がよく干すんですよ、料理も作ってくれることもあるんですけど・・・分担・・・私のほうが多いんじゃないかな」
・(三浦九段が突然言い出す)
三浦「最近思うんですけど、自分が女で、自分と結婚したかった。こんだけ家事やってる人いないから、棋士で」
中村女流「それだけ家事をするのはすごいことですね。女性の立場からすればそれを続けてほしい」
三浦「いや冗談じゃないですよ。冗談じゃない。冗談じゃない」
( → 将棋ワンストップ・ニュース )
結婚したら、相当、ひどい状況であるようだ。こんな状況なら、棋力は下がっても当然だな、という気がしてきた。
中期
その後、新たな情報が出た。下記だ。
→ 三浦九段と将棋ソフトとの指し手一致率 対久保九段、渡辺竜王戦で高い一致率も
これを読むと、相当、怪しいという感じがしてくる。状況証拠ではなくて、棋譜を見ることで、「黒だ」と認定する人が多い。
そこで、私も棋譜を見てみた。
→ 久保利明九段 対 三浦弘行九段
→ 三浦弘行 九段 vs. 渡辺 明 竜王
前者は、読売新聞の朝刊で連載されたばかりなので、私も覚えていた。
「へえ。三浦九段って、いつのまにかこんなに強くなったんだ。まるで別人みたいだ」
と感嘆したのを覚えている。
そこで、今改めて全体を見直したら……
「これは人間の指し手ではない」
と判断するしかないね。
こんな手で人間が勝つはずがない。ずっと不利に見えていたのに、続けていたら、いつのまにか有利になって、最後に一瞬にして討ち取った、という感じ。まるで達人である。
これに似たことは、羽生もときどきやる。今の読売新聞で掲載中の棋譜もそうだ。行方尚史八段との順位戦で、銀損から角損へとなって、駒の損得では圧倒的に損になる順を選んだ。有利なのは、と金を作ったことだけ。ところがこれで優位の状況となっている。普通に考えれば不利なのに、なぜか優位になっている。そのまま押し切って、勝利した。
→ A級順位戦 ▲行方尚史八段 × △羽生善治三冠
パッと見たところでは損をしているのに、10手ぐらいあとになると優位に立つ。こういうことは、羽生みたいな達人は、ときどきやる。こういうのは、羽生クラスになって、ようやくできることだ。
では、先の「三浦 × 久保」戦では? 驚くべきことに、「久保の方が大幅に有利」と見える状況が、10手ぐらい続いたあとで、いつのまにか混乱状態となり、その後は久保が不利となる。
「僅差に見えたのに、いつのまにか優位になっていた」
というのなら、羽生だってときどきやるが、
「大幅に不利に見えたのに、いつのまにか優位になっていた」
というのは、羽生だってほとんどやったことはないと思う。
「現実に不利だったのが、相手のミスで逆転した」
という例なら、いくらでもある。しかしながら、
「誰もミスをしていないのに、現実に大幅に不利に見えたものが、実は有利だった」
というのは、指し手が圧倒的に高い能力でないと無理だ。そして、そういうことは、羽生クラスになって、ようやくできることだ。つまり、他の棋士よりも明らかに1ランク上である場合だけだ。
三浦は、そういうことをやってのけたのだ。しかも、羽生がかつてやったどんな場合よりも切れ味鋭く、やってのけたのだ。
対局後に、久保は驚きの声を上げた。
△6七歩成にはびっくりしました。
一直線に進めて先手玉は詰まないし、後手玉には詰めろがかかります。
それで先手が勝てないとは思いませんでした。
( → 三浦九段と将棋ソフトとの指し手一致率 対久保九段、渡辺竜王戦で高い一致率 )
「勝てないとは思いませんでした」
という感想を述べている。これはつまり、久保の想像の範囲を超えて、圧倒的に読み勝っている、ということだ。久保は羽生を相手にしてもこんなことは言わない。ということは、このときの三浦は、羽生よりも1ランク上か2ランク上の実力があった、ということになる。天下無敵の圧勝だ。
そして、このこと(圧倒的力量)は、渡辺明竜王との対局で、ものの見事に見せつけた。
渡辺明竜王との対局の棋譜は、上記にあるが、それを見てびっくりした。まさしく、天下無敵の圧勝だ。渡辺明竜王に比べても、1ランク上か2ランク上の実力があった、と言える。
このような圧勝は、A級棋士とC級棋士の間でも、滅多に起こらない。相手が奨励会に入門したてのガキレベルの相手のときだけに起こる。
逆に言えば、渡辺明竜王を、奨励会に入門したてのガキレベルとして扱うほど、三浦九段は圧倒的な実力の持主だ、ということになる。(不自然だが。)
以上が、棋譜を見たことから、判明したことだ。(不自然さの発見)
そして、それは私の解釈だが、私だけでなく、他のプロ棋士もみんな同じように理解しているはずだ。そう思う。
後期
そう思っていたところへ、まさしくプロ棋士の発言が出た。私と同じように思っているらしい。
橋本崇載・八段がツイッターで発言した。物議を読んで、すでに削除されたが、一応転載しておこう。
橋本 崇載 @shogibar84
ファンには酷な知らせと思うが、個人的にも1億%クロだと思っている。奴が除名になるかどうかは知らないけど、俺は二度と戦う気しない。以前からソフト指し、モラル、カンニング、再三警鐘を鳴らしてきたつもりだが、最悪の形になりただただ残念だ。これでも潔白を信じるという人はどうぞご自由に。
10月13日(木) 14:18:57
橋本 崇載 @shogibar84
数週間か1か月ほど前に、奴と対戦した人が不正行為をやられたと憤慨していると聞いた。恐らく、その後に決定的にクロ断定できるものを掴んで、踏み切ったのだろう。
将棋連盟はタイトル戦開催まで数日というギリギリのタイミングでよく英断したと思う。始まってからでは、より取り返しがつかない。
10月13日(木) 14:09:00
橋本 崇載 @shogibar84
取材の依頼とかきてたくさんきてこまってるんでツイート消します。この件の取材は一切NG。ちなみに言っとくけどこの件は僕ちゃん激おこだかんね。
10月13日(木) 15:29:45
橋本崇載・八段は、はっきりと根拠を言語化して示したわけではないが、棋士としての判断力で、「これはソフトを使った将棋だ」と明白に認定したのだろう。それは、私が推定したのと同様のことだと思う。
・ 私 …… アマの棋力で認定したが、はっきりと言語化した。
・ 橋本 … プロの棋力で認定したが、はっきりと言語化はしない。
この両者は、異なるというより、相補っていると見なすといい。
橋本崇載・八段は、明確に「カンニング」と認定したのだが、その根拠をはっきりと言語化してはいない。そこで、彼の足りない言語化の部分を、私が本項で述べているわけだ。
ただ、私が言語化しただけでは、「ほんとかよ」と疑う人が多いだろうから、そういう人の疑いを解くためには、結論だけを述べた橋本崇載・八段の判断が役立つだろう。
──
なお、先に私は「不自然だ」と述べた。(三浦九段の圧倒的な勝利の仕方が。)
これについては、数字やデータを見ると、いっそうよくわかる。データとしては、棋士の実力を得点化したレーティングを見るといい。下記にある。
→ 2016年 レーティング(三浦九段)
仮に、不正をしていなければ、次のいずれかになるはずだ。
・ 圧倒的な棋力をもつがゆえに、レーティングも圧倒的な高得点。
・ 普通のA級の棋力をもつがゆえに、レーティングも普通のA級の得点。
ところが、現実には、そうなっていない。かわりに、こうだ。
・ 圧倒的な棋力をもつのだが、レーティングは普通のA級の得点。
このせいで、レーティングを見る限りは、並みのA級棋士である。特に不正をしているとは見えない。素人がデータを見た限りでは、何ら不正は疑われない。
それでいて、棋譜を見ると、渡辺竜王を圧倒するほどの強さを持つ。つまり、レーティングが実力を反映していない。
このことを合理的に説明するのは、次のことだ。
「竜王戦と順位戦の重要な対局でのみ、圧倒的に勝利する。一方で、B級クラスを相手にした予選などでは、ボロ負けする」
つまり、こうだ。
「渡辺竜王のような強者に対しては圧倒的に勝利するが、弱い相手に対しては次々と負け続ける」
その結果、次のようになる。
「竜王戦や順位戦では、非常に好成績を収めて、高額の賞金を獲得する。その一方で、予選では次々と負けるので、レーティングは異様に高くなることはない。レーティングを見る限りは、何ら不正を疑われない」
これにちょっと似たことは、スポーツの世界でもなされる。
「薬物を服用してドーピングするが、アンチ・ドーピングの薬を服用することで、ドーピングの証拠を消去する」
不正をしながら、不正がばれないように、うまく工作する。まったく、たいした知恵者だ。これで、たいていの人をだませるだろう。
ただし、プロ棋士は別だ。プロ棋士が見れば、「これは人間の思考方法ではない」ということが、一目瞭然だ。だからこそ、橋本崇載・八段はそう認識した。
また、橋本崇載・八段以外の人もそうだ。
数週間か1か月ほど前に、奴と対戦した人が不正行為をやられたと憤慨していると聞いた。
これは誰か? 時期的に、久保九段だろう。(他にはいない。) で、不正によって竜王戦に出場する機会を奪われた久保九段が、「これは不正だ」とはっきり確信して、不満を述べたのだろう。
──
さらに、もっと推測できる。
まず次の二つの疑問が生じる。
「なぜこの時期に、将棋連盟は不正と認定したか?」
「なぜ物証をつかまずに、推測だけで不正だと認定したか?」
この疑問に、どう答えるか? それは、「これが竜王戦の直前だ」ということからわかる。
私の推測では、こうだ。
仮に現時点で不正だと認定しなければ、三浦九段は竜王戦に出場する。そして、そこでまず間違いなく、不正をする。そのことが目撃され、隠しカメラで撮影され、まぎれもない現行犯として竜王戦の最中に拘束される」
つまり、「拘束の寄せ」である。 (^^);
こんなことになったら、史上最大の大スキャンダルだ。もはや将棋界の騒ぎでは収まらず、世界的なスキャンダルとして報道される。将棋そのものが軽蔑されて、将棋そのものが衰退してしまうだろう。
とすれば、それを是非とも、避ける必要がある。そのためには、次の二点が必要だ。
・ 竜王戦の前に不正を認定する。(出場停止処分。)
・ 決定的な証拠は明示しない。(曖昧さを残す。)
この二点によって、曖昧さとオブラートにくるまれて、三浦九段も将棋界も、ともに救われる。スキャンダルの規模は小さくなるし、三浦九段への処分も限定的となる。(永久追放処分にはならず、短期間の出場停止だけとなる。)
というわけで、謎は解明されたことになる。
・ なぜこの時期に?
・ なぜ証拠もなしに?
という謎に対しては、上記で説明されたわけだ。
( ※ ついでだが、以上のことからして、今回の処分の主導者は、渡辺竜王だと推測される。「不正をしている相手と竜王戦を戦いたくない」という強い意思が働いた、と思える。)
将来
では、将来はどうなる?
まず、三浦九段だが、彼が法廷闘争などをするのであれば、泥仕合になる。連盟は「彼が不正をしたこと」を証明しようとするが、それは、棋士の証言だけで足りるだろう。
「実際に不正をした証明」
は不要であり、
「不正をしたと十分に疑われる根拠」
があれば十分だ。それで処分は正当化できる。かくて、連盟は裁判で勝利する。一方で、三浦九段は決定的な敗北を負う。裁判で負けると同時に、将棋界からは追放となりそうだ。
一方、彼が法廷闘争をしないのであれば、短期間の出場停止で済むだろう。その後は、復帰できるだろう。将棋連盟の温情に感謝できるだろう。
ただし、復帰した場合、もはやスマホの利用は禁止されるので、以前のような「鬼のごとき強さ」は、もはや見られまい。そして、そのことから、「彼がかつて不正をしていたこと」は、明らかだと認定されるだろう。
※ たぶん、実力相当で、B級かC級に落ちるだろう。
なお、可能性としては、「彼が不正をしていない可能性」もあるが、その場合は、彼は人間レベルを超えた超絶的な能力の持ち主だということになるので、もはや世の中はひっくり返る。「1+1=2」が否定されるのと同様だ。
( しかし、そんなことはありえない。だから心配は不要だ。)
[ 付記1 ]
続報がある。
日テレ「news every.」でも、三浦九段は対局中に不自然な離席が多い(10分から20分)と「5人前後の棋士から指摘されていた」と報道
— 将棋ワンストップ (@shogi1com) 2016年10月13日
テレ朝「スーパーJチャンネル」では「対戦相手5人前後から終盤の勝負所で20分も30分も不自然に離席し、ソフトを使っていると指摘された」と
この5人というのは、渡辺と久保を含み、他に、佐藤康の可能性がある。いずれにせよ、一流中の一流ばかりだ。それらをなぎ倒した三浦が、いかに怪物級の活躍をしたか、よくわかる。
[ 付記2 ]
「三浦九段はコンピュータのスタイルを真似しただけではないか?」
という疑問を出した人がいた。しかし、それは成立しない。なぜなら、コンピュータのスタイルとは、
「大量の分岐を、マシンパワーに任せて、大量に処理する」
ということを基本とするからだ。そのためには、何億通りもの経路を短時間で探る CPU と、それを記憶するメモリが必要だ。そんなものは、人間には備わっていない。
人間の思考と、コンピュータの計算処理とは、まったく別のものなのである。人間がコンピュータの真似をすれば、ものすごく劣悪な能力しか出せないだろう。真空管式のコンピュータにも負ける計算能力しかないんだから。
【 関連項目 】
三浦九段については、2013年の電王戦のときに、対局を論じたことがある。
→ 電王戦 第5局の考察
このとき、棋譜を分析したが、あまりにも弱いのにがっかりした。A級の大将対象として戦ったのだが、それ以前に出た棋士よりも、明らかに棋力が劣っている、と感じられた。将棋電王戦 第3局 では船江恒平五段が立派に戦ったのに、三浦九段はそれほどの棋力を感じさせずに、あっさりと敗北した。(ま、相手も一番強いソフトだったが。)
このときのひどい負けっぷりからしても、私は以前から、三浦九段については低く評価していた。
ところが、先日の久保九段との対局では、とんでもない(桁違いの)強さを見せつけた。それでちょっと不思議に思ったものだ。
今にして思えば、「やはり」ということか。
[ 余談 ]
三浦九段に対しては、私は同情的である。彼の不運は、たぶん、奥さんが「夫を出世させるタイプ」ではなかったことだろう。結婚相手のせいでこうなった、と言えるかもしれない。
ただ、時期的には、電王戦第5局で大将として戦ったころ(2013年)から、すでに順位戦で圧倒的な成績を収めていた。このころはまだ奥さんとは知り合っていない。奥さんのせいばかりとは言えないかも。
なお、ひるがえって、羽生・三冠の奥さんは、素晴らしい。
→ 理恵さんが語る、羽生善治さんの2016年3月から10月
夫の状態をちゃんと見抜いて、夫の邪魔をしないように、最大限の心がけをする。将棋以外のことで患わせないように、余計なものを取り除く。こうして、夫を将棋に集中させる。
三浦九段の妻とは正反対だ。何とすばらしい妻であることか。羽生・三冠が現在までずっと好調を保っていたことの背景には、こういう妻の内助の功があったのだ。仮に理恵さんではなくて、別の女性と結婚していたら、これほどの好成績は収められなかっただろう。
タイムスタンプは 下記 ↓