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[インタビュー]

ワークスタイル変革を「ただの掛け声」で終わらせない![前編]

変革プロジェクト始動時に確認すべき“4つの要素”と“4つのハードル”

2016年10月13日(木)池辺 紗也子(IT Leaders編集部)

ワークスタイル変革は、ICTの進展と共に長年叫ばれてきた言葉だが、組織全体でしっかり実践し、顕著な成果を上げている企業は思いの外少ない。生産性を高め、イノベーションを生み出す真のワークスタイル変革を実現するためには何が必要なのか。PwCコンサルティングでワークスタイル変革のコンサルティングに携わる井手健一氏に話を聞いた。

 「ワークスタイル変革」という単語を耳にしたことがない人はもはやいないだろう。経済のグローバル化や少子高齢化が進むなか、従来の均質・長時間労働のスキームにしがみつくことは企業成長の頭打ちを意味する。そこでこれからの競争力強化の鍵と目されているのが、ワークスタイル変革だ。働き方の自由度を高めることで現場の力を引き出し、生産性の向上やイノベーションの創出、ワークライフバランスの実現による従業員満足度向上などにつながると期待されている。政府も2016年6月閣議決定の「ニッポン一億総活躍プラン」の中核に「働き方改革」を据え、文字どおり国を挙げての取り組みが始まっている。

 ――しかし、実際の企業ではどういう状況だろうか。大企業ではもはや当たり前に取り組んでいると思われがちだが、ただ「時短制度を制定した」とか「ツールを導入した」だけで満足をしている企業はまだまだ多い。

 組織全体での業務生産性を高めてイノベーションにつながる、真のワークスタイル変革を実現するためにはどのようなアクションが必要なのか。今回、PwCコンサルティングでワークスタイル変革のコンサルティングに従事している井手健一氏(写真1)に話を聞き、以下にまとめてみる。

写真1:PwCコンサルティング シニアマネージャーの井手健一氏

日本の生産性は先進国最低レベル
しかし課題意識を持つ人はまだ少ない

 上述したように、政府が働き方改革を推進していることもあり、ワークスタイル変革を経営課題としてとらえる企業は増えてきているが、その意識レベルには大きな差がある。

 公益財団法人日本生産性本部が分析している「日本の生産性の動向 2015年版」(http://www.jpc-net.jp/annual_trend/)によると、2014年の日本の労働生産性はOECD加盟34カ国の中で第21位と低迷しており、主要先進7カ国でも最も低い水準となっている。この状況は10年近く変わっていない。

 「総GDPを労働時間で割ったものが生産性です。これを改善するためには分母を小さくするか分子を大きくするかしかありません。つまり、働き方の効率を上げていくか、イノベーションを起こしてGDPの拡大余地を増やしていくか、このどちらかを起こしていかないと日本の生産性は上がらない。その実現施策の1つとして働き方を変えるということがあるのです」(井手氏)

 少子高齢化がいっそう進む中で、「健康な男性の均質な長時間労働」に頼って生産性を上げる戦略には限界が訪れていることをまず認識しなければならないだろう。

 ワークスタイル変革の重要性が叫ばれて久しいが、実践や成果の享受に至っていない企業はとても多い。今になってようやくワークスタイル変革を経営課題として本腰を入れて取り組みたいという企業もあれば、いったんワークスタイル変革に取り組み、リモートワークなどのITシステムも整備したものの、実際にイノベーションが発生する組織にするためにはこの先どうすればいいのかと立ち止まって途方にくれている企業もある。実践にあたっては現場の働き方、考え方を大きく変えていかなければならないが、まだまだ経営層以外の現場では、「自分たちの生産性は高くない」という課題意識を持っている人間は少ないのが現状だ。これまで従来の働き方をしてきた企業人としてのプライドもあるのだろう。

 「むしろ、スタートアップ企業のほうが、リモートワークや社内コミュニケーションなどの環境が充実しています。大企業の多くでは、そういったテクノロジーを取り入れて自分たちの働き方を改善していこうという動きが活発に起こっているとは言えませんね」(井手氏)

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