東京都内で一時58万戸が停電 施設でのトラブルが原因か

東京都内で一時58万戸が停電 施設でのトラブルが原因か
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12日午後東京都内の広い範囲で停電が発生し、停電は合わせて58万戸余りに上りました。この停電の前に埼玉県新座市にある東京電力の関係施設で送電線のケーブルが燃える火災が起きており、東京電力はこの施設で起きたトラブルが原因と見て調べています。
東京電力によりますと、12日午後3時半ごろから東京の港区、千代田区、練馬区、中野区、杉並区、板橋区、豊島区、文京区、北区、中央区、それに新宿区の11の区で停電が発生し、停電の戸数は58万6000戸に上りました。
東京電力によりますと送電ルートを変えるシステムによって停電は午後4時25分ごろ、復旧したということです。
これより前の午後2時50分ごろには埼玉県新座市にある東京電力の地下の無人の施設で火災が起き通気口から激しく黒い煙が上がりました。

東京電力によりますと、この施設には、新座市の変電所と東京・練馬区の変電所をつなぐ送電線のケーブルがあり、何らかの原因でケーブルを覆う絶縁体が破損した場合には高い電流が流れて火災が発生するおそれがあるということで、この施設で起きたトラブルが原因と見て詳しく調べています。

東京電力ではケーブルを覆う絶縁体に油が使われていることから、この油に引火して練馬区の変電所につながるケーブルだけでなく、同じ地下の施設に敷設されている豊島区の変電所につながるケーブルにも被害が広がったのではないかとしています。
警察などによりますとこれまでのところ、けが人などの情報は、入っていないということです。東京電力は午後7時半ごろから記者会見を開き、「お客様をはじめ広く社会の皆様に大変なご不便、ご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます」と謝罪しました。

首都圏の過去の大規模停電

首都圏で発生した過去の大規模な停電としては、昭和62年7月、猛暑が原因で、影響が280万戸に及ぶ最大規模の停電が発生しました。
また、平成18年8月には、東京・江戸川区と千葉県浦安市の間の旧江戸川にかかる送電線にクレーン船が接触し、東京の23区や千葉県、それに神奈川県の一部でおよそ139万戸が停電して、首都圏の鉄道各線が一時、運転できなくなったほか、エレベーターに人が閉じ込められるなどのトラブルが相次ぎました。
このほか、平成22年11月には、変電所のトラブルから東京の八王子市や多摩市などで停電が発生し、およそ25万8000戸が一時、停電しました。

火災のあった地中送電線

東京電力や経済産業省によりますと、火災が起きたのは、都内に電力を供給するための27万5000ボルトの地下を通る送電線です。埼玉県新座市の変電所と、東京・豊島区の変電所を結ぶ「城北線」と呼ばれる送電線で、地下のトンネル内に敷設されています。隣接する地中には新座市と東京・練馬区の変電所を結ぶ「北武蔵野線」と呼ばれる送電線も通っていて、今回、この送電線でも一時、電気を送れなくなりました。
東京電力によりますと、ビルや住宅が密集する都市部に電気を送る場合、鉄塔を建設することが難しく、地下のトンネルやマンホールに送電線を敷設する、地中化を進めているということで、都内の地中化率は2014年度末で92%となっています。
また、停電が発生した場合、短時間で復旧させるため、停電の区間を特定して別のルートから電力を供給する仕組みがあり、今回、送電の系統がおおむね復旧するまでにかかった時間は、およそ20分間だったとしています。

なぜ大規模停電?

都市の電力システムに詳しい電力中央研究所の栗原郁夫首席研究員は、1つの施設の火災が大規模な停電につながった理由について、「東京では、都心を取り巻く場所にある拠点の変電所から、複数の送電ルートで電気が送られている。こうしたルートの中で1か所でもトラブルが起きると、それよりも下流の電気はすべて止まってしまう。特に、高い電圧を扱う送電ルートが止まった場合にはそれだけ停電の規模も大きくなることから、今回は、ある程度規模の大きい送電ルートが途絶えたと考えられる」と話しています。そのうえで、「停電が起きた場合には、送電のルートを切り替えて復旧を行うが、一気に復旧作業を行うと、特定の送電ルートに負荷が集中して再びトラブルが起きる可能性があるため、細かい送電ルートごとに問題がないかを確認しながら復旧を行っていくことになる。停電の規模から考えると、今回は比較的速やかに復旧作業が行われたと言える」と話しています。