12日に東京都心部で起きた大規模停電で、都心から約20キロ離れた埼玉県新座市の変電所近くで燃えた送電ケーブルは、敷設から約35年が経過していた。詳しい火災原因は現時点で分かっていないが、送電網のたった1カ所で起きた火災が約58万戸もの停電を招いた。首都圏のライフラインのもろさが浮き彫りになった。【森健太郎】
東京電力によると火災は12日午後2時50分ごろ、新座変電所と東京都の豊島変電所、練馬変電所を結ぶ送電ケーブルが通る地下約7メートルのトンネル内で起きた。
燃えたのは「OFケーブル」と呼ばれるタイプ。絶縁を保つため、ケーブル内の電線の周りに油をしみこませた紙が何重にも巻かれている。この紙に何らかの理由で亀裂やひびが入り、漏電による火花が発生し、油に引火してケーブルに燃え移った可能性があるとみられる。この火災による停電で一時最大約58万6800戸が停電した。
東電によると、新座変電所は発電所からの電気を都内に送る重要なポイントの一つ。練馬、豊島の各変電所につながり、さらにそこから都内の複数の変電所(北新橋、南新橋、池袋、常盤台など)に送電ケーブルがつながっている。基幹の送電ケーブルが焼けたことで広範囲の停電が起きた。中央省庁が集まる霞が関でも影響が出て、サーバーがダウンした役所もあった。
経済活動への影響もあり、今後企業から損害賠償などを求められることも考えられる。東電は「お客様から多数の問い合わせを受けている。真摯(しんし)に対応したい」と説明する。
一方で、経済産業省は一部の送電線でトラブルがあっても、別の送電線を使って送電できる「多重化」を進めるよう各電力会社を指導している。2006年8月、東京と千葉県境の旧江戸川でクレーン船が送電線を損傷させ、都心部や神奈川県、千葉県の一部で最大約139万戸が停電したことなどがきっかけだった。
今回、東電は電気の供給を、新座変電所に代わる別の首都圏の変電所を経由するルートに切り替え、約1時間で復旧させた。経産省の担当者は「今後、復旧作業が適切だったか確認したい」と話している。