グテーレス氏、国連事務総長へ 元ポルトガル首相
- 2016年10月6日
国連の次期事務総長に、元ポルトガル首相のアントニオ・グテーレス氏(67)が選ばれる見通しとなった。国連安全保障理事会の大使たちが5日、明らかにした。安全保障理事会は6日に正式に投票で候補を決め、国連総会に勧告する。国連総会の承認決議によって、新事務総長が決まる。年末で任期が切れる潘基文(パンギムン)国連事務総長と、来年1月に交代する。
最終的に残った候補10人について、安保理は5日に非公式投票を行った。その結果、理事国15カ国のうち13カ国がグテーレス氏に「支持」票を入れ、2カ国が「意見なし」と投票。不支持票はなかった。
安保理の現議長でもあるロシアのビタリー・チュルキン国連大使は、候補者13人全員が「非常に賢明で、世界の今後について理解し懸念していた」ものの、「明らかに1人が優勢で、その人の名前はアントニオ・グテーレスだ」と話した。
米国のサマンサ・パワー国連大使は、候補絞り込み作業には「驚くほど」異論がなく、「最後には単に、一人の候補の経験とビジョン、様々な分野にわたる多彩な能力が、非常に説得力をもっていたということに尽きる」、「(候補選びの)作業の間、一貫して大勢を感心させた人の周りに大勢が集まった」と述べた。さらに、事務総長候補を決める今回の手続きは以前よりも慎重に行われたという。
英国のマシュー・ライクロフト国連大使は、グテーレス氏が「その指導力で国連を新たなレベルに引き上げる」と期待を示し、「世界が様々な問題で分断しているこの時代に、道徳的権威となるだろう」と期待を示した。
初の女性事務総長や初の東欧出身者を期待していた運動していた人たちの間では、落胆の声もあった。
グテーレス氏とは
工科大学出身で、1974年に社会党に入党。50年におよぶ独裁政権を終わらせた同年の「カーネーション革命」後、1976年に行われたポルトガル初の民主選挙で初当選した。
以来、急速に頭角を現し、1992年には社会党書記長に就任。1995年に首相に選ばれた。
2005年から2015年末まで国連難民高等弁務官を務めた。シリア、アフガニスタン、イラクなどにおける甚大な難民危機に取り組み、紛争地域から逃れる難民支援にさらに尽力するよう欧米諸国に繰り返し要請した。
AFP通信によると、ポルトガルのカバコシルバ前大統領は今年初めに、グテーレス氏は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)での業績を通じて「発言が尊敬されるようになり、世界中が傾聴するようになった」と話していた。
他の候補は
歴代の国連事務総長が全員男性だったのに対し、今回の次期総長選びでは女性が多数立候補したことも話題となった。途中で2人が撤退し、最終的には正式候補10人のうち5人が女性だった。
ブルガリア出身のイリーナ・ボコバ国連科学教育文化機関(ユネスコ)事務局長、前ニュージーランド首相のヘレン・クラーク国際連合開発計画(UNDP)総裁、モルドバのナタリア・ゲルマン前副首相兼外務・欧州統合相、クロアチアのベスナ・プシッチ第一副首相兼外務・欧州問題相、ブルガリア出身のクリスタリナ・ゲオルギエワ欧州委員会予算・人的資源担当委員などの女性が出馬したが、非公式投票の結果、ボコバ氏が4位で女性ではトップだった。
全体ではセルビアのブク・イエレミッチ元外相(元国連総会議長)が2位、3位はスロバキアのミロスタフ・ライチャク外務・欧州問題相だった。
国連事務総長の役割は
国連で最も影響力の強い機関は、常任理事国5カ国が拒否権をもつ安全保障理事会だ。
それに比べると事務総長の権限は安保理ほど強くないが、国連を率いる行政責任者でトップ外交官だ。
BBCの外交担当編集委員ジェイムズ・ランデールは「世界で最も大変な仕事」と呼ばれてきたと話す。
国連事務総長は、巨大で扱いにくい官僚機構を運営しつつ、大国のバラバラな言い分を巧みに扱わなくてはならない。
国際紛争の悪化を防ぐために国際舞台の表と裏で立ち回り、影響力を発揮することが、国連事務総長の何より重要な役割だ。
任期は5年で、最長2期に限定されている。
(英語記事 Portugal's Antonio Guterres set to be UN secretary general)