兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。
幸せな家族には、過去に辛い出来事があった。
その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。
連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。
そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。
謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは。
事件の裏にある”謎”を解き明かすミステリー小説と、”家族の絆”について考えさせられる感動小説の二つの異なる一面がある物語。
伊坂幸太郎による小説である。
「重力ピエロ」のここが面白い
泉水と春の兄弟
弟が生まれた時、私ははしゃいでいた。覚えているわけがないが、そのはずだ。少なくとも、親の苦悩や、周囲の人間の冷ややかな目の理由に気づいてはいなかった。
その弟が二階から落ちてきたのは、それから十七年後、つまり、彼が高校生の時のことになる。
(出典:『重力ピエロ』)
泉水と春は二歳差の兄弟である。仲も全然悪くはない。
だが、春の出生には秘密があった。
泉水と春は血が半分しか繋がっていない。春が連れ子というわけではない。
泉水が一歳のころに、母が突然部屋に押し入ってきた男に襲われた。
犯人は未成年の少年だった。
こうして、血が半分しか繋がっていない兄弟が誕生した。
仙台市内の連続放火事件
兄弟が住んでいる仙台市内では奇妙な連続放火事件が起きていた。
放火現場の近くには必ずグラフィティアートが描かれていた。
犯人が捕まらない状況で、事件は続いていく。
泉水は遺伝子関係の仕事をしている「ジーン・コーポレーション」に勤めている。
そして、この泉水の会社が放火魔のターゲットとなり燃えてしまうことになる。
放火のルール
この連続放火事件には、ルールがあった。
放火現場の近くには必ずグラフィティアートがあり、このグラフィティアートには謎が隠されている。
この謎に興味を持った泉水と春は独自にこの事件の調査を開始する。
そして、事件の真相や家族の絆を揺るがす衝撃的な「真実」に気づいてしまうことになる。
終わりに
伊坂幸太郎による小説『重力ピエロ』。
実写映画化もされた名作で、謎が含まれたミステリー小説としての要素と家族の絆を描く感動小説としての要素が含まれる。
連続放火事件は想像を超えた、思わぬ方向へと転がっていく。
涙無くしては見られない”兄弟の絆”に心揺らがさせる物語となっている。
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