検証3:統計の条件を考える -年齢・性別・職業
さらには統計を丹念に分析するとわかる、単純な条件の違いがある。
犯罪学者の高橋正巳は、大正期から昭和初期の在日朝鮮人と日本人の犯罪数を比較した。
『日本の犯罪学1・原因1』東大出版会(1969)より
この数字の意味するものは「人口10万に対する刑法犯新入受刑者」である。これをみると朝鮮人って悪いやつが多いんだなと思う。だれでもそう思う。
次に高橋正巳は、当時の朝鮮人人口における男女比、年齢分布、職業分布を提出する。数字は省略する。そして犯罪学上の次の総計的事実を述べる。
男と女では男のほうがたくさん犯罪をやる。
老人子供より壮年者がたくさん犯罪をやる。
貧乏人は金持ちよりたくさん犯罪をやる。
(中略)
そしてこういうのだ。
もし在日朝鮮人の人口の男女比率が日本人と同じであり年齢分布が日本人と同じであり、職業分布が同じであるならば・・・それやこれやの犯罪率の係数をかけあわせて、パチパチと算盤をはじくと、在日朝鮮人と日本人の犯罪発生率はほぼかわらず、したがって朝鮮人がその民族的資質において犯罪的であるわけではない。
『あらゆる犯罪は革命的である』平岡正明
こうして、移民や外国人は犯罪率が高い・・・というデータが、実は合理的に考えれば、「人類は同じ環境におなじ状態におかれたら、おなじ割合で犯罪をやるだろう」という結論になるわけである。
なお本分析で高橋正巳は、戦前に対して、終戦後の一時期にこの性別・年齢・職業による偏差をなくしたうえでも、犯罪率が日本人よりも高くなったことを指摘している。この時期、確かに彼らが民族的な解放感と復讐感情からいわば「超過相殺」に走ったことは残念ながら事実と考えられる。ようするにやりすぎたのだ。
いずれにしても、生活環境やその集団の成員の性質から、単純に統計的に数字が高くなってしまうということはありうるのだ。それが外国人に対する偏見を生む。
おそらく「刑務所の囚人内訳」の国籍別データも、統計的に詳細に検討していくと、男女比・年齢・職業分布で簡単にその「偏見」の原因を明らかにしていくだろう。
なお、アメリカでは移民より非移民の犯罪率の方が高いという分析もある
なお、先ほどの警察庁のように、定着居住者と来日外国人を分類すると、この傾向はうっすらと浮かび上がってくる。先の表のとおり、外国籍の人うち、生活ベースをもった定着居住者(永住者・特別永住者)と、生活ベースが不安定で語学などの基本的な教育がかけている人たちの刑務所の収容者数は倍近く違う。これも環境の違いや性別・年齢による誤差とみなしてよろしいものと推測できる。
このへん日本における移民問題を考えるうえでも大切なヒントになることでもある。
先の2ちゃんのまとめサイトのインチキな数値はともかく、統計データというのは切り取り方によってはいかようにも解釈することができる。その裏側や統計の手法なども含めて、慎重に見極めていかないと、ネットのデマに流されることになりますので、皆さまお気をつけを。
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