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ユニバーサル基板のプロになる!
連載 第10回目「超入門…ユニバーサル基板配線術~応用編1~」

 ユニバーサル基板(以降:自在基板)の応用編1「チップ部品を使おう その1」です.

p01.jpgのサムネール画像
写真1 チップ・コンデンサを使った基板

●抵抗と積層セラミック・コンデンサ

 「チップ部品を使おう その1」では,抵抗と積層セラミック・コンデンサ(以降:コンデンサ)を使います.
 アマチュアでも抵抗やコンデンサのチップ・タイプが容易に入手できるようになりました.全部の部品をチップ化する必要はありません.電子回路でよく使うバイパスコン用の0.1μFやプルアップに使う10kΩや47kΩなどを入手しておくと重宝します.

 メリットは,なんといっても省スペースと,特価品をうまく活用すれば部品単価が低くなることでしょう.デメリットは,リールで購入すると最低でも500個以上,2000個以上のものもあり,使いきる前に消費期限がくることもあるので,比較的性能の落ちにくい抵抗と積層セラミック・コンデンサに限定すると良いと思います.化学反応型の電解コンデンサや半導体は経時変化や湿度によって影響を受けるので、保存にはとくに注意が必要です.


●チップ部品のいろいろ
 「リード(足)」が出ていて,基板の穴に挿入して実装するタイプに対し,基板の表面のパッド(穴なしのラ ンドのこと)に,はんだで固定する表面実装型の部品に対する呼び方で,その中でも抵抗,コンデンサ,ダイオードなど受動部品や単構成の半導体を主にチップ 部品と呼んでいます.多数の足をもつICの表面実装版は,その形状から「フラットIC」と呼ぶこともありますが,その境目は厳密ではありません.

  また,チップ部品に対して,リード部品を「ディスクリート部品」と呼ぶこともありますが,本来「ディスクリート」とは形状のことではなく「受動部品や単構成の半導体」の総称で,集積回路(IC)に対して使います.この記事の中では「チップ部品」は「フラットIC」も含めたものとして扱います.

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写真2 チップ抵抗とチップ積層セラミック・コンデンサ

  写真2はいろいろなサイズのチップ部品の例です.左から1608,2012サイズの抵抗,1608,2012,3216サイズの積層セラミック・コンデン サです.携帯電話やゲーム機には,これよりはるかに小さいサイズが使われていますが,自在基板で使いやすいのは上記のサイズです.

 この サイズの呼称は幅・縦の寸法をあらわし,1608なら一般的には幅1.6mm,縦0.8mmとなり,厚さはこの中には入りません.この呼び方はメーカで違 いがあり,ミリとインチもあるので混同しやすいものです.上記のサイズに対して一覧表を作りました.厳密なサイズはメーカごとに違い,奨励パターン・サイズ も違ってくるのであくまでも目安です.

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表1 チップ部品のサイズの例

●コンデンサは無記名が多い.耐圧にも注意
  値を印字してある抵抗に対し,コンデンサはなにも印字してなく形も同一なものが多いので,異種を同時に使うときは混同しないように注意が必要です.そのほか,大容量のものは耐圧が低いので確認しましょう.電池動作は心配要りませんが,ACアダプタを使うような工作は確認が必要です.

 もう一点,大容量の積層セラミック・コンデンサを三端子レギュレータの入出力に使うと発振することがあるので,「低ESR:ok」のレギュレータかどうか確認できないときは,ここには電解コンデンサを使います.

●電力に注意
 リード型の抵抗に比べて定格電力が低いので,電力を消費させるときは注意してください.たとえば12V系でLEDを10mA駆動させると,1608サイズの定格(0.1W前後)と同じか越えてしまうことがあります.算出できるところは確認しておきましょう.

●部品の足やスズ・メッキ線の間にチップ部品をおく
 スズ・メッキ線や部品の足が0.5mm前後,ランド間隔が2.54mmなので,その間に挿入するのは2012か1608がちょうどよいです.

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図1 部品の足とランド間隔,チップ部品寸法の関係

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写真3 自在基板に乗せてみたときの2012(上)と1608サイズ

 今まで,青色のリード・タイプの積層セラミック・コンデンサの替わりにチップ・タイプを使ってみましょう.ICと電源ラインにいれてみます.

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写真4 まず電源ラインをスズ・メッキ線などで敷く

p05.jpg写真5 取り付ける場所の片方をはんだで盛り付け,0.1μF 1608を実装する.素早く!

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写真6 反対側もはんだ付け.ここも素早く!

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写真7 電源ピンにはんだブリッジで接続

●はんだは少なめに.鉄アレイ型は×
  チップ部品を密集して配置しているときに起こったことですが,限られたスペースに無理やり押し込んでいたら,溶けたはんだが裏で回り込んでいたことがあり ました.溶けたはんだに上から押し付けたのが原因と思われます.上から見てもわからないのですが,導通を確認するとショートしています.はんだを吸い取っ てやりなおしらた回復しました.はんだは少なめに,回りこむことを前提に作業するようにしましょう.
 両端が鉄アレイのようにパンパンに盛り上がってしまっ たら,すこし除去しておくことが大切です.

●IC周辺の回路をチップ部品で構成してみる.回路を置き換えることも有効
  図2は前回作った電子ルーレットの回路の抜粋です.この部分だけチップ部品で配線してみます.このICは同じ回路が4回路入っているので,初めからチップ 部品を使う予定なら,コンデンサをGNDに接続しやすい側に配置します.具体的には11~12ピンの回路は,5~6ピンに置き換える回路図にします.
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図2 チップ部品用回路に配置換え

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写真8 コンデンサを取り付けるランドをはんだ上げ

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写真9 コンデンサを取り付ける

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写真10 片側もはんだ付けしてコンデンサは完了

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写真11 抵抗を取り付ける

p12.jpg写真12 片側もはんだ付けして抵抗も完了.2,5ピンは再度軽くはんだ上げしなおすと完璧

 ICソケット以外表に部品がでていないのは,すごいことですね.

●チップ部品を積極的に使った配線の例
 取り付けは少し雑ですが,ちゃんと動作しています.このときはスペースに困ったためダイオードも裏づけしてあります.

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写真13 配線例

●斜め実装
 3216や2012サイズは斜めにはんだ付けすることも可能ですが,難易度は上がります.はんだに慣れてきたら慎重にやってみましょう.隣のランドにはんだが回りやすいので接触してショートしないように注意しましょう.

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写真14 斜め実装の例

●こんなことも
  写真11は,あるツールの中の47μFタンタル・コンデンサを手違いで吹き飛ばしてしまい,修理したときを再現しました.平型の10μFを5個縦に合体させ て,50μFコンデンサにして,タンタル・コンデンサの基板パターンにあわせて交換しました.合体させるときは短く切った線材を両端に補強兼ガイドにして います.

 産業製品でこんなことは絶対にやらないし,あまりお勧めしませんが,これでうまくいくのならこんな裏技もありです.

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写真15 10μFを合体させて50μFを作ったときの再現

コラム チップ部品とはんだゴテ

 チップ部品のはんだ付けには,温度調節型のはんだゴテが断然有利です.以前も書きましたが,無制限タイプでは小容量のはんだゴテでも,先端温度は500℃を超えます.
 リード・タイプの部品では,部品に熱が流れるので先端温度が下がります.チップ部品は体積が極小なので,その分不利です.メーカのデータの一例では,350℃,5秒以内厳守という決まりのものもあります.

  温度を下げる方法として温度コントローラを使うという方法があります.温度一定というわけにはいきませんが,70~80%に下げるだけでもかなり効果があ ります.このコントローラの中身はトライアックを使った調光器とほぼ同じで,キットも多数販売されていて手作りも容易です.100Vを扱うので,安全対策 にはご注意を!

pA.jpg写真A はんだゴテ温度コントローラの例

 次回は,フラットICやトランジスタの実装例を紹介します.

<高野 慶一>

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