日本のホステル業界は今、どのような状況にあるのでしょうか?
建築基準法や消防法、旅館業法など、日本は法律の要件が厳しいので、出店のハードルは世界で一番高いと思います。新築でやると、どうしても宿泊単価が高くなります。となると、用途変更をしやすい物件を探すか、ホテル・旅館として建てられた用途変更の必要がない物件が出るのを待つしかないんです。
日本のホステル業界は、多店舗展開できている会社が国内に3社しかないほど弱いんです。ここが増えないと、日本に来たいと思っている人を取り逃します。また、バックパッカー宿は、リピーター、ワーホリ、留学、起業、定住、そういう話のすべてのスタート地点です。これから人口が減っていく中で、日本はどうするのか。例えば、オーストラリアは国の政策として、ワーホリと留学生の受け入れ枠を増やすと同時に、バックパッカー宿の整備をしました。一時のブームに左右される富裕層を追いかけるのではなく、確実に定着する若い個人旅行客の受け入れ窓口の整備をすることが課題だと思います。安く泊まれる宿は、大事なインフラなんです。
今後の展開についてお聞かせください。
現在、墨田区観光協会の協力を得て、外国人観光客向けのWi-Fi活用やバックパッカーズマップ制作企画が進行しています。地域でバックパッカーを受け入れていく時に、どういうノウハウや観光インフラが必要なのか、行政とも連携しながら模索し、そのプロセスを含め「すみだモデル」として発信していきたいと思っています。
また、日本には、あまり有名ではないけど、外国人が喜ぶような場所が無数にあります。「優先順位は低いけれど、本当は面白いコンテンツ」にリーチさせるためには、そこに行きたいというモチベーションを与えるか、滞在日数を延ばすしかありません。滞在日数を延ばすための一番の特効薬は、宿泊単価を下げることです。安い宿を提供することで、面白いものとの出会いを経験してもらいたいし、そうすることがリピートにもつながると思います。
これからアジア域内のトラフィックは増えていきます。オンラインで手軽に行き先を選べるので、ディスティネーション間の競争はさらに激しくなると思います。カオサン東京の2000円とか3000円という料金は、常にタイで何バーツ、マレーシアで何リンギと換算して考えています。バンコクやクアラルンプールは、バックパッカー宿の業態の蓄積があるので、大部屋のベッドの作り方から飲食との合わせ方まで、本当にレベルが高いです。
その一方で、カオサン東京のスタイルをクアラルンプール、バンコク、上海でやりたいという話もあります。世界中の街中でがんばっているバックパッカー宿が、僕らの最大の競合です。
そんな中、昨年世界的なホステル予約サイト"ホステルワールド"のアワードで、弊社京都店が世界で5位(アジア3位、日本1位)の評価をいただきました。「日本は宿が高くて、個人旅行がしづらい」という海外の旅行者のイメージを払拭するためにも、土地が高くて、法的ハードルが高くても、日本のバックパッカー宿が国際的な競争力を持ち得ることを、世界に示していく必要があります。来たいと思ってくれている人がいる限り、僕らはここで踏ん張って、世界水準のバックパッカー宿のクオリティと値段を保たなくてはいけないと思っています。
カオサン東京
http://www.khaosan-tokyo.com/ja/
取材:Kanako Morishita