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輸入米の調整金 政府調査は疑問が多い

 国が管理している輸入米の入札で調整金と呼ばれるリベートが払われ、同水準のはずの国産米価格より安く売られていた疑いが浮上し、農林水産省が調査結果を発表した。

     「国産米価格に影響ない」と結論付けたが、輸入米の流通価格はほとんど調べていない。なぜ影響ないと判断できるのかなど疑問が多い。

     この入札は「売買同時入札」と呼ばれ、輸入商社と卸業者がペアで参加する。国は商社から輸入米を買い、卸業者に高く売る。その際、流通価格が国産米と同水準になるよう予定価格を設定する。予定価格を上回ったペアが落札できる仕組みだ。

     安い輸入米が出回って国産米が値崩れすると、コメ農家に打撃になる。関税の役割を持たせる狙いだ。

     だが、商社が国から受け取った代金の一部を調整金として卸業者に渡していた問題が発覚した。卸業者はこれを原資に外食産業などに安く販売したと指摘される。

     調査では入札に参加した業者の4割が調整金の授受を認めたが、農水省は国産米価格への影響は認めなかった。調整金があっても入札対象の輸入米は年最大10万トンで国内流通量の1%強に過ぎないという理由だ。

     調整金の存在が確認されたからには、卸業者が輸入米の安売りに使ったとみるのが自然だろう。毎日新聞の取材によると、国産米より2割安く売買されていたケースがあった。

     しかし、調査は調整金を受け取った卸業者の売却価格をほとんど調べていない。農水省は「任意のため答えてもらえない」と説明するが、調査の体をなしていない。

     農水省は調整金を禁じる方針を示した。だが、入札に参加しない卸業者が参加業者から輸入米を転売してもらい、調整金を受け取る行為も水面下で横行しているとされ、実効性に懐疑的な見方も出ている。

     環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が発効すれば、売買同時入札の輸入枠は最大7万8400トン増える。水面下で調整金が残れば、安売りの輸入米が増え、国産米の価格に影響する可能性もある。

     政府はTPP発効後のコメ生産への影響はゼロと試算し、農産物全体の生産減少額も最大2100億円と試算している。安倍晋三首相はきのうの参院予算委員会で調整金問題は試算に影響しないとの認識を示した。政府・与党はTPP承認案の審議入りを急いでおり、調整金問題の幕引きを図りたい考えだ。

     コメの試算に疑問が生じれば、農産物全体の試算も説得力を欠く。農家の間では以前から「試算は楽観的」との声が出ており、不安が増しかねない。政府の農業対策の前提にもなるだけに調査を徹底すべきだ。

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