原発廃炉費用の「利用者負担」 賛否がぱっかり割れた大手紙社説

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   原発の廃炉費用負担の議論が経済産業省を舞台に始まった。「廃炉費用」には2つある。古くなった原発と、大事故を起こした東京電力福島第1原発だ。電気料金への上乗せという形であれ、国の支援であれ、最終的に国民負担になるだけに、どう理屈づけし、国民の理解を得るか、大きな問題だ。

   経産省はこの間、有識者の会議を相次いでスタートさせた。2016年9月27日に初会合を開いた「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」は、電力自由化の課題などを議論する場だが、経産省はここに、「託送料」(大手電力の送電網の使用料として新電力などが支払う)に廃炉費用を上乗せする案を提示した。新電力が上乗せ分を電気料金に転嫁すれば、負担は利用者に回る。

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「古い原発」と「福島第1原発」と

   もうひとつは10月5日に初会合を開いた「東京電力改革・1F問題委員会(東電委員会)」で、東電福島第1の処理費用負担を協議する有識者会議だ。

   「2つの廃炉」のうち、まず普通の原発の廃炉について。その費用は火力より1桁多く、大型炉1基で560億~830億円という。原発事業者は、あらかじめ電気料金をもとに廃炉費用を積み立てる仕組みだ。ただ、既存の全原発を廃炉にする費用約3兆円を賄うには、積立金が現状で1.2兆円不足している。電力自由化が進めば、新電力に利用者が流出し、料金値下げ圧力がかかるほか、「3.11」を契機とした運転停止の長期化、想定より早く廃炉に追い込まれるなどで積み立て不足が加速するリスクが高まっている。このため、経産省は発送電分離にかこつけ、送電に上乗せする形で新電力も負担する仕組みを計画したわけだ。

   一方、福島第1は、廃炉費用が通常の原発よりさらに桁が上がり、全体で想定の2兆円をさらに大幅に上回るのは確実。このほか、損害賠償が当初見通しの5.4兆円から8兆円、除染費用も2.5兆円から7兆円に拡大する見込み(電気事業連合会試算)で、東電の経営が揺らいでいる。このため、東電ホールディングス(HD)は国に支援を要請してきた。

   10月5日の東電委員会では、東電に他の電力会社との提携や再編を求める「自力更生」の方針を決めたが、会合にオブザーバーとして出席した東電HDの広瀬直己社長が、昼過ぎ、会場から出た際、報道陣に「債務超過になり、東電が倒れるリスクがある。そこはぜひ制度的な措置をつくってリスクを取り除いてほしいとお願いした」と漏らした。この情報は市場にあっと言う間に伝わり、東電HD株価は前日比8%安に急落。現状のまま進めば東電の債務超過が不可避なことは世間の「常識」とはいえ、この東電委員会の使命が、東電の破たん回避にあることを、端無くも、広く知らしめるところとなった。

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