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文芸メイン、その他もろもろ

犬とドラマと、花のこと①

昨日は動物霊園で法要があり、ひとりで出かけてみた。

霊園は深大寺の敷地の中にある。何かイベントをしていたようで、いつもに増して人で賑わっていた。

参道には、食べ歩きできるお団子や饅頭を売るお店がずらりと並び、美味しそうな匂いが辺りを漂う。見慣れたいつも通りの光景だった。

ペットを連れて入れるお蕎麦屋さんもあって、私達は春も夏も秋も冬も、年に何回も犬を連れて遊びに来た。

犬達も、ここに来ると楽しそうだったから、きっとこの場所が大好きだった。

Lはとても食い意地が張った犬で、食べこぼしを探して鼻をクンクンさせながら地面に這いつくばって歩いた。

この時期は、ドングリまで食べようとするので大変だったな…。

そのLが死んで、9か月になろうとしているが、未だに悲しい。

考えてみたら、自分の子を流産した時よりも悲しみが続いている。

流産の時には、精神に異常をきたしたものの、身体が癒えると共に心も回復していった。またいつか、妊娠するかも知れないという希望もあったから。

けれどもLは、もういない。Lは、二度と戻ってこない。

あの時ああしていたら、こうしていたら、Lはまだ生きていたのにという考えが、無限ループになってそこから抜け出せない。

頭がおかしい人と思われるだろうが、Lはペットでも子供でもなく、私の彼氏だった。

周りの友人達が、自分の息子に、芸能人に、不倫相手に、まれに夫に抱く恋心を、口に出して否定はしないものの理解出来ずにいた。

けれど、私にとっての恋愛対象はLだった。

いなくなってから気がつくなんて…

霊園にLの骨はあるけれど、Lが居るわけではない。

ここに来れば、Lに会えるわけではない。

Lは死んでしまって、もうこの世にはいないのだと思い知らされるだけだった。

なのにLは、寂しくここでずっと待っていたような気もする。

「また、来るからね」と、声をかける。

なるほど墓というものは、まだ生きている人の心の拠り所のためにあるのかも知れない。

 

 

 

中学時代からの友人ふたりとLINEで繋がっている。

私達は中3の頃、交換ノートのように順番にノートを回して、リレー小説を書いていた。

それはまるで少女漫画のように現実には有り得ない展開をした。それが面白いらしく、結構な数の読者がいた。

私は受験勉強よりも熱心に、その執筆活動(笑)に取り組んだせいで成績が下がり、ふたりとは別の高校に進学した。

私が上京してからは疎遠であったが、長い年月を経て今、こうしてLINEで繋がり交流が復活している。

先日、たわいのないLINEのやり取りの中で、私がラーメンを食べに日暮里の繊維街に行った事が話題となった。

友人のひとりは手芸作家なので、布などには興味があるのだろうと思っていたが、そう言う話ではなかった。

テレビドラマの1シーンに、日暮里繊維街が登場していたと言うのだった。

私は、あまりテレビドラマを見ない。

見る番組は夫が勝手に決めてしまうし、それに娘が反発していつでも揉めている。私はその間ネットばかりしている。

手芸作家でない方の友人が、その繊維街が映ったというドラマに嵌っていて

「面白いから絶対に見て!」と言う。

「もう3話まで進んでいるけれど、1話と2話の再放送が見られるから必ず先にそれを見てね。」と、再放送の日時まで事細かに教えてくれた。

それは、原田知世と斎藤工が出ている、大人のラブストーリーという事だった。

ファンの方々には申し訳がないけれど、斎藤工というだけで少し拒否反応が起きた。

「昼顔」の再放送を少しだけ見ていたが、どうして同世代の主婦層は皆、斎藤工に夢中になったのだろう。

そして、堰を切ったように我も我もと、人妻が不倫に走ったのが理解できなかった。

原田知世には「私をスキーに連れてって」の、溌剌とした可愛い少女のイメージが浮かぶ。

今でも女優業を続けていたとは、知らなかった。

この映画の頃、世の中はスキーブームに沸いたが、そういえば私は人生で一度もスキーをした事がない。

ドラマを見るかどうか、どちらかというと見ないかも…と思いながらLINEを続けていたが、友人はとても熱心に推してきた。

これは想像だけれど友人は、自分と一緒に私にもキャーキャーと、同じものにときめいて欲しいのだと思う。

せっかくいろいろと教えてくれたのに全く見ないのも悪いから、娘に再放送分の録画を頼んだ。(自分で出来ない)

娘はそのドラマを見ていなかったが、どこかで見聞きしていたらしく

「これを薦めた友達という人は、きっと韓流ドラマも好きでしょ?」

と言った。

大当たりだった。

その友人は、韓流ドラマや映画が大好きで、韓国アイドルグループのファンでもある。

私は、韓流ドラマも見ない。冬ソナもヨン様にも興味がなかった。

私は常に時代のブームから離れたところにいて、それをぼんやりと眺めてきた。

夢中になれるものがあっていいわね。

ときめくものがあって、羨ましいと言いながら。

本心では、もう愛だの恋だのなんてうんざりだと思っていた。