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幸せ感振りまく「感情労働」、行き過ぎは不幸

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2016/10/8 6:30
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 近年、世界中の企業の間で、社員に前向きであることを強要する風潮が強まっている。経済に占めるサービスの比重が高まる中、最前線の働き手の対応が業績に直結することが背景にある。しかし、社員に幸せ感を表現するよう強要するのは個人の自由の侵害で、無駄な会議を減らす方が意味があるはずだ。

 1924~29年に英国の教育相を務めたユースタス・パーシー卿は、国内各地の学校で当時、幸福感の追求ばかりを強調した「進歩的」な教育が広まっていることを快く思っていなかった。そんな教育はばかげていると宣言し、「人生には不幸なこともあると教えて育てるべきだ」と言い切った。

 パーシー卿と同じように、筆者は世界の企業や一部の政府の間で最近、幸福感ばかりを強調した経営理論が流行していることに疑念を抱いている。

■ハイテンションで靴を売れ

従業員に幸せと信じ込ませれば生産性は上がる?(写真は米トイザラスのサンノゼ店舗で顧客に接する販売員ら)=AP
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従業員に幸せと信じ込ませれば生産性は上がる?(写真は米トイザラスのサンノゼ店舗で顧客に接する販売員ら)=AP

 そうした経営手法で際立つのが、インターネットで靴を販売する米ザッポスだ。同社のスタッフは、まるでこれ以上の幸せはないかのようなハイテンションで靴を売ることを求められる。

 英ファストフードチェーンのプレタマンジェは、サンドイッチだけでなく、底抜けに明るい愛想の良さを売りにしている。飛行機の客室乗務員は滑らかに会話できるよう訓練されるものだが、英ヴァージン・アトランティック航空の場合は、今にも歌って踊り始めそうな勢いだ。

 米グーグルでは最近まで、「盛り立て責任者」という役職があり、一緒に仕事をする相手への心配りや共感することの大切さを説いて回っていたという。

 怪しげな第一人者とされる人物や様々なコンサルティング企業が、「幸せと感じることが何より大事」という、いわば「幸福教」なるものを売り込んでいる。

 米ハーバード大学で教壇に立ったこともあるショーン・エイカー氏は現在、世界中の大企業を講演して回り、従業員の“幸福度”を高め、それをいかに企業の競争力強化につなげるかを教えることで生計を立てている。

 エイカー氏が掲げる原則の一つが、「幸福衛生」を改善することだ。毎日欠かさず歯を磨くのと同様、前向きなことを考えたり、元気いっぱいのメールを書いたりすべきだというわけだ。

 ザッポスは、働く喜びに対する自社の取り組みに満足しているらしく、「デリバリングハピネス(幸福を届ける方法)」という名のコンサルティング企業まで設立している。

 ザッポスは、社内に「最高幸福責任者(CHO)」から、世界の各拠点で働く人の満足度を高める「グローバル・ハピネス・ナビゲーター」、現場で満足度の向上を担う「ハピネスハスラー」、幸福錬金術師の「ハピネスアルケミスト」、そして哲学好きの顧客向けに「ハピネスフクロウ」まで置いている。

 また、カナダのスマイル・エピデミックというベンチャーから生まれた同プラスティシティ・ラボというIT(情報技術)企業は、10億人の人に対しプライベートと仕事の両方で幸せを見つけるための手助けをすることを目指す。

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