ダーリントン接続
ダーリントン接続は電流増幅率が非常におおきいトランジスタを合成する回路手段である。具体的には同極性のトランジスタQ1、Q2を用い、Q1、Q2のコレクタを共通接続し、Q1のエミッタをQ2のベースに接続した形である。
この接続により、Q1のベースが全体のベース、Q2のエミッタが全体のエミッタ、Q1、Q2のコレクタが全体のコレクタとなり、Q1、Q2のhFEの積の電流増幅率をもつ1個のトランジスタが得られる。
Q1は相対的に低い電流値で動作するので、一般には、データーシートのhFEよりかなり低い実効電流増幅率にはなるが、全体として見れば、1000を超えるhFEをもつトランジスタに見える。
ただし、hFEは大きくなるが、見かけ上のVBEは(VBE1+VBE2)となり、ダーリントン接続ではVBEが約2倍となり、飽和電圧はVBE2+(Q1の飽和電圧)となる。単体の飽和電圧:0.1~0.3Vに比べ、1V近い値となる。これがダーリントン接続に伴う負の側面である。特に、SW用途で使う場合には、ダイナミックレンジの減少に注意し、ON時の電力損失が5倍程度になる点を覚悟する必要がある。
この欠点を回避する手段として、エミッタ接地で使うなら、Q1のコレクタを切り離し、別電圧源に接続する方法がある。この接続だと、ON電圧を低く維持できるので、IC中ではよく使われる。しかし、単体トランジスタの場合、早いパルスを扱うときには、相対的に大きな、従って、速度の遅いQ2が、Q1の負荷として動作すると、Q1が全電力を負担する瞬間もあり得る。
共通コレクタなので、接合分離することなく、1個のトランジスタを作る半導体プロセスでダーリントン接続を実現できる。IC化ダーリントントランジスタでは、Q1のB-E間やQ2のB-E間に抵抗を意図的に挿入したものも多くあり、このようなトランジスタでは、hFEの大きな電流依存性があり注意を要する。多くのダーリントン接続では、初段トランジスタを低電流密度で動作させるため、SW速度や高周波特性が単体ほどには良好でない筈だ。
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