2016年10月7日17時32分
■小野善康・大阪大特任教授
都会と地方との経済格差が問題になっている。雇用が都会に集中し、地方は就業機会も少なく、所得水準も低い。そのため、都会への人口集中と地方の過疎化、地方自治体の財政難、地方交付税に対する都市住民の不満が生じている。
一方、安倍晋三首相は、都会の景気回復がもうすぐ地方にも波及すると言い続けている。いわゆるトリクルダウンだ。この主張の根拠は、都会で景気がよくなれば消費が増え、地方でつくられた製品も売れるから、地方の景気もよくなる、というものである。
グラフは大都市(政令指定都市および東京都区部)と人口5万人未満の市町村の1家計あたり消費支出を示している。見る限り、地方はもちろん、都会の消費も伸びていない。トリクルダウンは起こるはずがない。それどころか安倍政権発足以降、格差は拡大しているようだ。都会の住民は、所得が伸びても金融資産が増えても、消費を増やしていない。
また、都会には優秀な人材が集まり、一生懸命に働いているから景気がよい。地方もがんばれば、景気の改善は日本全体に広がるという見方もある。経済特区はこれを狙ったものだ。
しかし、それでも問題は解決しない。現在の景気低迷は生産力に比べて日本人のモノを買う量が少ないから起きている。総需要が不足している以上、どこかで景気がよくなれば、どこかで悪くなる。モグラたたきの状況だ。
総需要が十分にあれば、都会と…
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