会社が成長するためには、人材育成が重要なキーになります。これは経営者であれば誰もが実感しているところでしょう。
やる気に満ちた優秀な人材を育てるには、社員全員が経営理念を正しく理解し、共感することが必要です。そのための大事なツールとなる「ビジョン実現シート」について解説します。
「ビジョン実現シート」を作る意味
「ビジョン実現シート」は、「経営計画書」と「人材育成計画」をA4用紙1枚にまとめたものです。ここで多くの経営者が「そんな大事なものをたった一枚のシートにしてしまって大丈夫?」と思われるのではないでしょうか。
一般的に、経営計画書は少なくても20ページ程度で、なかには50ページ以上にわたるものもあります。しかし、1枚にまとめられた「ビジョン実現シート」のほうが、多くのページを割いて作られた経営計画書より実効性が圧倒的に高いのです。
それには2つの理由があります。1つは全体像が一目で分かること、もう1つは浸透させやすいことです。ビジョン実現シートには、経営理念やビジョン、5年後の人材像といったものが記されており、各要素の関連性が示されます。そのため社員が「これから自分は何をするべきなのか」が明確にイメージできるのです。
また、1枚のシートであることから、掲示板などに掲示しやすいのもメリットです。このように、会社の経営理念と目標を日ごろから社員の目に触れさせるように工夫することで、意識を浸透させやすくなります。したがって、各社員が机の引き出しにしまいっぱなしになりがちな分厚い計画書よりも、必然的に実行度が高まるのです。
「ビジョン実現シート」の作成方法
ビジョン実現シートは、次のステップで作れます。手順に沿って1つひとつ考えていけば難しいことはありません。
経営理念と基本方針を決定し、行動理念を示す
まずは会社が目指す最終目的地である経営理念を定めなければなりません。これはどんなに時間がかかっても構いませんから、経営者自身が必ず考えましょう。そして、経営理念を実現するための会社の基本的な姿勢と考え方を提示する基本方針を決定します。
さらに、経営理念と基本方針をもとに、社員たちにどのような考え方や行動を求めていくのかを明確にした行動理念を示します。社員たちの仕事に対する考え方、関わり方を行動理念によって揃え、ベクトルを1つにしていくのです。
2つのビジョンを示す
ビジョンは、会社の将来像を示します。業績数値で示す「定量ビジョン」と、数年後の会社の状態を表現する「定性ビジョン」の2つを作りましょう。とくに定性ビジョンは、社員がそれを一目見てワクワクするようなものに仕上げるのが大事です。テンションが上がる、夢が膨らむ表現を心がけてください。
事業計画を作り、経営戦略を明確にする
経営を山登りにたとえると、ここまでは「経営理念」によって登頂する山を決めた段階です。次に、5年の事業計画と経営戦略をたてることで、登山ルートを明確にします。
現状の人材レベルを分析し、理想の人材像と課題を示し、人事理念を表現する
一般的な経営計画書であれば、ここまでが盛り込まれていれば十分でしょう。しかし、人材育成が会社を成長させるためのキーポイントと考えた場合、人材育成についての理念まで掲げる必要があります。全社員に向けて人事理念を打ち出すことで、人材に対する考え方を明確にできるのです。
そのためにはまず、現状の人材レベルを分析します。そのうえで、理想の人材像を示し、ギャップを埋めるための課題を洗い出しましょう。
プロジェクトコンセプトを明確化する
いよいよ最後の項目です。会社として、どこをゴールにするかを定めましょう。社員がそのゴールを一緒に目指したい、実現したいと本気で取り組んでもらえるような表現を考えます。
社員自身の充実感や目標の実現を明らかにする言葉を選び、ワクワク感を持ってもらえるようなものにしなければなりません。「笑顔をお届けし、地域社会と一体化したコミュニケーションが取れている組織」など、具体的にイメージできるような表現に努めましょう。
まとめ
すべてが完成したら、全体に目を通します。社長の思いが伝わり、社員が期待を持って取り組んでくれるものになっているでしょうか。会社の方向性を社員全員に浸透させ、一丸となって成長できる会社を目指しましょう!
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