日経ビジネス10月3日号「買いたい服がない アパレル“散弾銃商法”の終焉」では、日本のアパレル業界が抱える問題点を指摘した。その中でも特に深刻なのが、アパレル産業の川上を支えるモノ作りの衰退だ。工場の閉鎖や従業員の高齢化など、凋落の事例は数多くある。
だが、そんな日本にも世界のトップブランドを魅了する高品質のモノ作りが確かに生き残っている。その代表例が、福井県の第一織物だ。
福井駅からタクシーで20分ほど走った場所に同社はある。従業員は52人(4月時点)。資本金2000万円の中小企業に、海外の高級アパレル企業が足しげく通う。
仏ルイ・ヴィトンや伊モンクレールなどを顧客に抱える同社の吉岡隆治社長に、日本アパレルのモノ作りがどんな問題を抱えているのか聞いた。
「完成品にラベルを付けて売るだけのビジネスに変わってしまった」
日本のアパレル企業が不振から抜け出せません。モノ作りを担う企業として、この現状をどう見ていますか。
「うちの生地は70%以上が海外企業に買われていきますが、これは望んでこうなったわけではないんです。本当は日本で売りたいんですよ。国内のアパレル企業に生地を販売して、それが国内で製品になって世界に出ていく、という流れが理想なんですが…」
「日本はこれまで内需が期待できました。だから、海外ブランドのライセンス輸入が多かった。そして、いつの頃からか、生地を買ってアパレル企業が縫製する形ではなくなってきました。出来上がった製品を買ってきて、それにラベルを付けて売るビジネスに変わっていったように感じます」
「最も疑問に感じるのは、クールジャパンだ、日本はオシャレだ、と言われていても、その中に日本製品はあるのか、ということですよ。コーディネート力はあるんでしょうね。でも、生地も縫製も染色も、日本ではない。95%以上が海外縫製です。だから、うちの生地を使おうと思うと、一旦、海外に送って、縫製したものを逆輸入する格好になる。『第一織物の生地は輸出入の手間がかかるので3万円ですが、現地で似たような生地を調達すれば1万5000円で済みます』という話になってしまうんですね」