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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

中国当局が国慶節に不動産購入制限を打ち出した理由

加藤嘉一
【第87回】 2016年10月11日
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国慶節を跨いで中国世論を騒がせた
不動産物件購入制限のニュース

 中国社会が国慶節休暇(10月1~7日)に面するなかで本稿を書いている。中国国家観光局データセンターは、休暇期間中に観光に出かける本国国民の数は延べ5.89億人(前年同期比+12%)で、それがもたらす観光収入は4781.8億元(前年同期比+13.5%)に上ると見積もっている。

 減速、低迷、停滞、衰退、崩壊――。

 近年あらゆる言葉で修飾される“中国経済”であるが、人民たちの表情や行動を眺める限り、彼ら・彼女らの消費、生活、余暇に対する欲望は時を追うごとに膨張しつつあると実感する今日この頃である。

 そんな私にとって、中国人の生き様を再考する一つの機会である国慶節を跨いで、中国世論を騒がせた一つの、あるいは一連のニュースがある。

 9月30日~10月4日の5日間で、北京、天津、蘇州、成都、合肥、済南、鄭州、無錫、武漢、深セン、広州など10以上の地方自治体が新たな不動産市場への政策を打ち出し、その多くが市民らの不動産物件購入を制限するというものであった。

 中国社会において、国慶節期間中に家族で新しい住宅を購入するために不動産物件を下見する、それをホリデーレジャーとする市民は少なくない。私の周りだけを見渡しても少なからずいる。そんな市民たちは、今回の不動産購入制限政策を複雑な心境で、しかも当事者意識を持って眺めたであろう。

 例として、国営新華社通信は、10月4日に配信した記事『勝負に出るか、あるいはとりあえず様子を見るか:ゴールデンウィーク不動産市場を巡る市民たちの心境をスキャンする』において、同通信社の記者が河南省鄭州高新区恒大城で遭遇・取材した同省許昌出身の寧氏の状況を紹介している。

 大学卒業後鄭州で就職した同氏は、これから2年以内に結婚すべく準備を進めており、両親もそのために早急にマイホームを購入するように催促しているという。

 近年、鄭州の不動産価格の常識はずれな高騰ぶりに愛想を尽かしていた寧氏は制限策のニュースを聴いて喜んだが(筆者注:2016年8月、鄭州市の不動産価格は前月比で5.6%上昇し、単月で見れば全国主要都市のなかで最大の上昇率を記録している。なお、前年同月比で見ると、最も高い上昇率を記録したのは福建省のアモイ市で+44.3%となっている)、状況を打診するに連れて、喜びは薄れていったという。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

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