市場にとっての実質的な10月第2週、すなわち今週は、米国の地区連銀総裁たち、並びにFRB議長の講演が最終営業日14日(金)に開催される。そういう中で、週半ばの12日(水)にFOMC議事録が公表される事になっており、主要マクロ統計としては議長講演と同日14日(金)に9月リテール、9月生産者物価。意識調査(景況感)としてはミシガン大の消費者サーベイが発表される。
以上が今週の簡素な流れ。 換言すれば①連銀総裁たちの連日のスピーチの中に、②議事録公表があり、③主要マクロが最終日のみ、といった構成の1週間になる。基調的流れを考慮すれば、実質的にはほとんど意味のない一週間になるだろう。つまり相場は帰着点を度外視した一喜一憂の値動きに終始する相変わらずの一週間になる。
地区連銀総裁たちの早期利上げ発言が様々なメディア媒体で今週も「殴り書き」のように流される事になるが、今年を振り返って分かるように、①5月、②8月から9月初旬に掛けてと確約なき方便が市場を混乱に陥れた。 率直にいって、今週もまた地区連銀総裁のどこまで本気なのか定かでない放言が、為替サイトなどの媒体で市場にバラ撒かれる事になるだろうが5月8月を教訓とし、現況を考慮すれば、今週も彼らの発言には、ほとんど実質的意味は無い。
過大な誇張でそれら発言を(しかも部分的に切り取って)報道する媒体にウンザリしている市場関係者、輸出入企業などは多勢を占めているだろう。利上げできないのに耳にタコができるほど同じ事ばかり連呼している。市場関係者もそろそろ飽き飽きしている事だろう。先週末の9月雇用情勢にしてもベタな結果であり、議論に値しないものだったにも関わらず必要以上に大騒ぎしている。
特に今週末、14日の議長講演は以前のように傾聴するに値しないものになる。
端的に言ってしまえば「利上げできるほど米経済は好調だが、その時期を明言する事は出来ない」といったスピーチに終始する事になる。 今年、彼女のスピーチで実質的に価値があったのは3月29日と5月27日、そして6月6日であり、8月のジャクソンホール講演は既に色褪せていた。ERCReportにおいても3月のNY講演を起発点として4月下旬より5月スピーチ(ディスカッション)に注目していた。がしかし、先日下院での議長証言は、立ち直りが効かないほどの失望落胆な内容に終始、彼女の混乱したスピーチは事前に予見できるものだった。
FRBの調査統計局や金融政策局が回覧する資料では利上げに対しネガティブな見通し・政策変更コストのインパクトが掲載されているにも関わらず、頑なに早期利上げを繰り返す地区連銀総裁がいるが、会合結果を見れば利上げ発言を強調していたメンバーは政策据え置きに対して実際は反対票を投じていない、といった人間もいる。つまり道化師が何人もいるという事になる。彼らはリセッションに陥った場合に備えての金利正常化を唱えているが、それは建前に過ぎず、正常化の過程でリセッションに陥るリスクの方が差し迫っているのが実情だ。
特に今年に入ってからは、地区連銀総裁たちは管轄地区の民間銀行の意向を踏まえている事が顕著となっており、理事たちと政治の癒着の加速化に、反発する姿勢を強めている。政治と民間銀行の対立が連邦準備制度の中での代理戦争に繋がっているといった構造で、そういう意味ではイールドカーブがフラット化した日本も同じような構図となっている点は興味深い。
理解に努める事を怠り、耳勉強や暗記だらけの金融メディアは「連銀総裁がどう言った、こう言った」と無意味に乱発するばかりだが、その背景も考慮するような踏み込んだ解説ができるよう努めるべきだろう。情報媒体とはいってもそうすべき。
日本では為替口先介入、米国では利上げ口先介入、中東からは原油減産口先介入が報道されている。すべて疑った目で見る事が必要であり、今年を振り返ればそうであるべき根拠に溢れている。そういう意味では最近報道されている北方領土の返還問題もこれらと同じ類に入るかもしれない。日本特有の感覚で、交渉次第で本当に返還される(かも)、と本当に思っている政治家たちがいて(為替と北方領土問題)、メディアは無責任に、そして楽観的に報道すべきではない。
基本的には「シラケ目線」で見る事が重要で、視聴率や検索数を目的としているマーケット関連のメディア媒体には注意が必要になる。
ただ、自分がこのように言わなくても既にそう感じている人がほとんどなのかも知れない。行き詰った中央銀行政策、およびシェア死守のため減産を誇大に吹聴するOPECの報道は脚色に満ち溢れ、実際にはどうなるか分からない。口先だけで相場浮揚を目論んでいる一週間が今週も引き継がれる。確約無き方便に一喜一憂して先週末と同様の空騒ぎのような展開になるだろう。
日銀は結局、マネタリーベース目標を撤回してイールドカーブ目標に切り替えた、という事になった模様。
日銀は中立的な均衡イールドカーブというものを算出し、それ(均衡イールドカーブ)と相関させるような緩和的イールドカーブの形状を築く事に努める?という。カーブの形状をコントロール、 、困難なこの政策は量というよりアナウンス効果が問われる事になるだろう。
前々回の記事(9月FOMC・日銀会合前夜)では、イールドカーブ調整というところで、買い入れ額について下限を設ければ、テーパリングと見做されるため、それはないだろう、とお伝えしたが、結局のところ買入額は増減するという事なのでテーパリングと見る向きがいてもおかしくない。
想定通りマイナス金利幅の拡大はなかったが、民間銀行との関係修復も含めたこの措置、パフォーマンスは今現在のドル円レートを見て分かるように、為替市場にとっては「減額もアリ」という事で量という点で円高に振れている。もっといえば、マイナス金利は限界、という見る向きが増加したのも確かだろう。(総裁は否定しているが) そして何より金利を引き下げるのではなく引き上げるのだから円高要因となるのは確実だ。日銀は、軸足を為替政策(実質上行ってきた円安政策)から一歩退いた事になる。
しかしいずれにせよ(為替市場・ドル相場については)米国の政策次第なので、今回の銀行収益を上昇させようとする政策は悪い事ではない。ただ、曖昧不透明な点が残り実際にどのような影響を与えるのか定かでない。カーブ形状をコントロール目標という事なので、ぜひこの離れ業に挑んで欲しい。またリポートします。
日銀会合については政策総括という事で、さまざまな憶測が流れているように見せ掛けて、(実質上)さまざまな選択肢がない事から誰もが同じ予想を立てている。
まぁ日銀政策は、為替市場に基調的影響を及ぼす事がないことから、あまり書く事もなかったわけです。今日は気まぐれかな。FOMCと重なり話題になっているので。
日銀政策会合について
イールドカーブのスティープニングを目指した技術調整、というところは鉄板だが、その選択肢はいくつかあって、(以下、①‐③)
① その1つでもある政策金利残高へのマイナス金利適用幅拡大、という事はないだろう。
② 調整というところでの2つ目の手段、巷で噂されている長国債買入目標を、「固定的な金額ではなく、金利をトップターゲットにした柔軟な(買入量)レンジターゲットにする」、という事が云われているが、現在の目標額を下回る金額を下限にすれば、テーパリングと受け止められる恐れがある事から(黒田思考)、これもない、という事が考えられる。なぜなら彼(黒田総裁)は、「縮小という議論ではない」と言い続けてきたからだ。
③ 結果として、全体の買い入れ量に変化を生じさせず、デュレーションの変更を実施してくれば今までの発言と整合性がとれる事になる。簡素にいえば、バランスシートを拡大させない事を前提としたポートフォリオリバランス、日銀による国債アロケーションの比率変更、といったところになる。
結局のところ「自己肯定」が前提である日銀の総括が為替市場に与える影響は限定的かつ(仮に効果があったとしても)ごく一時的なもので、影響を与えそうな政策はすべて米国に足枷されているような状況。為替介入なり外債購入なり、すべて米国、ならびにG20からはご法度にされている。市場からは「ゼロ回答」、と受け止められても仕方のない結果となる可能性は残される。 それに加え、以下は中長期的に見た、日本政府による外交、政治上の為替政策の失敗になる。(④といえる)
「過ちの対ロ外交政策」を経て為替政策はタイト化
これはもう、安倍政権になってからずっとそうだが、
④ G20直前の9月2日に安倍首相がロシアに訪問しシンゾーウラジーミルといった緊密ぶりをアピールした事から、「為替介入という禁じ手」は一層顕著になった。
何かと口先介入を行ってくる前内閣官房参与の(為替の事がわかっていない)本田なんとか氏、同様に内閣官房参与の浜田氏がほのめかす外債購入にしても首相自身が日銀法に抵触する、といっている。
首相が明確に外債購入を否定したのは9月5日だがその直前(同日9月5日)に北朝鮮からノドン3発が奥尻島西方、排他的経済水域に発射・落下している。 シンゾーウラジーミルウラジオ会談は9月2日。北朝鮮のミサイル攻撃(といっていいだろう)を受け、日米安保の重要性を再確認したのが9月5日。 さらにいえば、ウラジーミル(プーチン)ロシアと中国の海軍が南シナ海で軍事演習を実施したのは、18日、という事になる。(ロシアに、日本に対する遠慮というものは全く存在しない.。だから言っていた)
当ブログでは日本とロシアの露骨な接近は為替政策において得策ではない、と警告していたが、上記諸々の出来事がすべてを物語っている。
サハリン2から政府が何を学んでいるのか分からないが、金融政策的にもっといってしまえば、日銀の外債購入は世間一般でいわれるような円安政策としての効果はごく一時的なものでしかない。現在においても外為特会のバランスシートでは米国債が多勢を占めているのが現状であり(TB・TN)、その償還された米ドルで再度米国債を買っているのが現状だ。
すなわち、今現在でも「外債購入」は行っており、それが新規の外債購入とはいえども、円安に関しどの程度の効果を及ぼすかといえば、ごく一時的なアナウンス効果のみにしかならない。 1日あたりの取引額が5兆ドルを超える外国為替市場において、しかも圧倒的な取引額を占める米ドル相場において、日銀が新規にドル資産を購入したとして何になるのか。(既知である一時的な為替介入と同じ、しかもそれもできなくなった安易な対ロシア外交戦略)
内政的にも限界を迎えている為替政策において(日銀)、外交上においても大きな失敗をしており(安倍政権)、これに気付いたのが9月5日のミサイル発射直後、という事になるだろう。
「山口訪問」を過大に評価する国内メディアを尻目に、ロシアは中国と南シナ海において平然と、軍事演習のみならず上陸演習を公開している。 上記リンクでも触れたが、日銀・日本政府、そして国内メディアはあまりにも安易するぎるのではないか。懸念していた通り、あまりにも浅はか過ぎる。
9月FOMC、ドットチャート下方修正について
FRBについては政策金利の据え置きのみならず、ドットチャートの一段下方シフトが想定される。市場は落胆する事だろう。(以下、ERCReportから部分抜粋)
ただ、「9月利上げ無し」は、ここにきてマーケットに織り込まれているのか否か、イマイチわからない状況。当ブログは世間の考えに疎い。 問題は、据え置き&「ドットチャート下方シフト」によって、米国の長期金利がどうなるのかが注視される。
据え置きを織り込んでいて、長期金利が下落、腰折れしないのであれば、今後の会合における利上げ議論は質を伴ったものとして継続される期待感が保てる。 織り込まれておらず、長期金利が折れてしまえば今後のFOMCは一層厄介なものになるだろう。 目の前の日米会合は帰するべきところに帰着する。「問題はこれ以降」になるのは明白だ。