【ワシントン=川合智之】米共和党の大統領候補、不動産王ドナルド・トランプ氏(70)が連邦所得税を最大18年間支払っていなかった可能性があるとの報道を巡り、民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官(68)が批判を強めている。クリントン氏は3日のオハイオ州での演説で「トランプ氏が改革すると主張してきた不正な(税制の)システムを、トランプ氏自身が象徴している」と非難した。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、トランプ氏は1995年に約9億1600万ドル(約930億円)の巨額損失を申告し、毎年5千万ドル以上の控除を受けていたとみられる。トランプ氏は3日のコロラド州での演説で「私は税制を合法的に利用してきた」と主張。こうした「不公正な」税制の改革ができるのは自分だと主張した。
トランプ氏を支持するジュリアーニ元ニューヨーク市長は、複雑な税制を活用するトランプ氏を「天才だ」と評して擁護した。一方、クリントン氏は「どんな天才が年10億ドル損するのか」と指摘。大統領候補が通例公開する確定申告書の提出をトランプ氏が拒んできた姿勢を問題視した。
クリントン陣営はトランプ氏を批判する新たなテレビ広告を作成した。「みなさんはよく働き、税を納めている。ではなぜトランプ氏は払わなかったのか」と視聴者に呼びかける内容で、近く主要局で放映する。
アーネスト米大統領報道官は3日の記者会見で「富裕層だけが得をする税の抜け穴をふさぐことが経済のためになる」と述べ、税制改革の必要性を訴えた。