サウスピークのセブ島語学留学日誌

フィリピンではなぜ「過労死事件」が起こりにくいのか。

  • 2016/10/10
  • カテゴリー:雑記

電通の入社1年目の女性社員が自殺した事件で、月100時間以上を超える残業があったことが認められ「労災」と認定されました。非常に痛ましい事件で、心よりご冥福をお祈りいたします。

過労死問題といえば、居酒屋チェーン大手「ワタミフードサービス」の新入社員が2008年に過労自殺した事件も記憶に新しく、日本では「過労死事件」が頻繁に報道されています。

サウスピークはフィリピンのセブ島で運営しており、フィリピン人を雇用しています。フィリピンでは過労死が問題とされることはほとんどなく、過労死が認定されるような事件もあまり聞きません。

以下、フィリピン人を雇用してきた観点から、なぜフィリピンでは過労死が起こりにくいのかを考えてみました。

仕事の区分が明確化されている

講師は授業をすることが仕事というようにはっきり仕事内容が決まっています。

講師は授業をすることが仕事というようにはっきり仕事内容が決まっています。

フィリピン人を採用する際には、いったい何があなたの仕事なのかを明確にする必要があります。仕事の内容は「Job Description(職務明細書)」で明確に定められ、そこに書かれた内容をこなすことが従業員には求められます。逆に言うとそれ以外の部分はあまり求められません。

一方、日本企業の場合は明確な「Job Descritption」がない場合が多く、職務内容や勤務地も明確化されていないことも少なくありません。このため、従業員に対して制限なく仕事が課され、本来は自分の仕事ではないものまで取り組むという事態が発生します。

サウスピークの場合、「講師」、「清掃スタッフ」、「キッチンスタッフ」、「マネージメントスタッフ」、「法務」、「経理」、「人事」等に担当が分かれており、すべてJob Descriptionで業務が規定されています。また、「講師」の中でも「ヘッドティーチャー」という一つ上のポジションに移行する場合は契約の改定が行われ、業務内容や待遇が変わるという仕組みです。

このため、例えば講師であれば、勤務時間は「朝8時〜17時まで1時間の休憩を含めた8時間」、業務内容は「レッスンの提供」と定められています。それ以外の仕事をお願いすることは基本的にはありませんので、17時になれば、勤務が終了して帰宅となります。

ただし、フィリピンでもトップマネージメント層などのいわゆるエリートは実際によく働きます。彼らの「Job Description」の内容はより広範なものとなっています。例えば、「組織をより強化し、サービスのクオリティを向上させる」といったような明確に定義しづらいものとなっている場合が多く、より大きなコミットメントを求められます。

このあたりのエリートと非エリートの区別をつけるという話は下記のブログが詳しいです。
過労死対策としては、エリートとノン・エリートを明確にわけ、労働市場を流動化すべし

仕事よりも家族重視という価値観

サウスピークのスタッフのFacebookは友人や家族の写真で溢れています

サウスピークのスタッフのFacebookは友人や家族の写真で溢れています

定量化することが難しいですが、フィリピン人では「仕事よりも家族の方が大切」という考え方が、日本人よりも強く共有されていると感じます。

これは、フィリピンでは当たり前の感覚なので、あまり議論にすらなりません。近年、アメリカのコールセンターの進出等により、フィリピン人の働き方が変わりつつありますが、週末は必ず家族で集まる、夕食は一緒に食べるというライフスタイルは根強くあります。

実際にサウスピークでも、昇進を打診したスタッフから「忙しくなって家族との時間が取れなくなるのは困る」という理由で昇進を断られたこともありました。

このような、フィリピン人に共有されている「家族が仕事よりも重要」という考え方が、過労死が起こりにくい原因の一つといえるでしょう。

企業に忠誠を尽くすという考え方はあまりない

サウスピークのことを好きだと言ってくれる従業員はいますが、忠誠を尽くすという感じではないです。

サウスピークのことを好きだと言ってくれる従業員はいますが、忠誠を尽くすという感じではないです。

実際に、日本の過労死問題等についてフィリピン人に話したことはありますが、いずれもどうしてそうなるのかがわからないという反応でした。そもそも、フィリピンでは日本のように自分を犠牲にしてまで会社に尽くすという考え方が理解されません。

仕事は「Job Description」で規定されたものをこなしていれば、文句を言われる筋合いはないというのが基本的な考え方です。そのため、それを超えるようなコミットメントを通常の従業員にするとそもそもうまく機能しません。

この点は、日本で働いていた人がフィリピンで働くとイライラすることが多くなる原因ですが、自分を犠牲にして企業に忠誠を尽くすということが少なくともフィリピンでは普通の考え方ではないと理解すればイライラすることもないでしょう。

お客様は神様ではない

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日本では「お客様は神様」だという意見が多いと思いますが、フィリピンではそのような考え方はあまりありません。

支払った対価としてサービスを提供するという考えですので、高級リゾートホテルにいけば、もちろん良いサービスは期待できますが、普通の安いレストランでは値段に見合った接客となります。(どちらかというとにこやかな店員が多い気はしますが)

日本では、「お客様は神様」という考えのもと、日コストに見合わない過剰なサービスを要求され、従業員が疲弊するということもありますが、フィリピンでそのような状況を強要すると、従業員が辞めてしまい、サービスが継続出来なくなってしまうでしょう。

サウスピークでも安定的なサービスを提供するために「従業員第一主義」を掲げています。顧客軽視と勘違いされてしまうこともありますが、日本人は放っておくと根を詰めて働きすぎる傾向にあるため明確に「従業員第一主義」としています。このような取り組みが、従業員が安定的なサービスを提供し、ひいては提供するサービスの向上につながると考えています。

*「従業員第一主義」はサウスピークで働く日本人スタッフに言っています。

そもそも自殺がすくないフィリピン

上記のような四つの理由、「仕事の区分が明確化されている」、「仕事よりも家族重視という価値観」、「企業に忠誠を尽くすという考え方はあまりない」、「お客様は神様ではないという考え」がフィリピンで過労死が少ない理由だと思います。また、上記以外にもそもそもフィリピンは日本よりも自殺が圧倒的に少ないというデータもあります。

国別の自殺率では、日本は世界17位、フィリピンは150位となっています。

今回は自分の経験からフィリピンでの働き方と日本の働き方の違いについて焦点を当てましたが、フィリピンが独特というよりも日本の働き方自体が他国と比較して異質という意見もあります。

他国の働き方も参考にして、日本人が働きやすい環境を実現することが労働人口が減っていく日本で必要とされることではないでしょうか。

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執筆者
丸山 要平
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丸山 要平

筑波大学国際総合学類を卒業後、すぐにフィリピンでオンライン英会話を起業。2013年からサウスピークの現地責任者として勤務。セブでは5年以上生活をしているため、現地の情報に明るい。

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