スウェーデンのカロリンスカ研究所は３日、２０１６年のノーベル医学生理学賞を、細胞が自分で自分のタンパク質を分解してリサイクルする「オートファジー（自食作用）」の仕組みを解明した大隅良典（おおすみよしのり）東京工業大栄誉教授（７１）に贈ると発表した。日本人のノーベル賞受賞は２５人目。１４年の赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏、１５年の大村智（さとし）氏、梶田隆章氏に続いて３年連続。

　会見場に姿を見せた大隅氏は「この上なく名誉なこと。数ある賞の中でノーベル賞には格別の重さを感じている」と喜びを表した。

　オートファジーは「自らを食べる」という意味の造語。細胞は栄養が不足した時、内部のタンパク質などを分解して栄養素を自給自足する。人間でも空腹時には活発なオートファジーが起きている。また普段でも古いタンパク質を再生させて細胞の質を保つ「リサイクルシステム」として機能している。

　こうした細胞をメンテナンスする機能が働かなくなる異常が、がんや糖尿病などの進行に関わっているとみられている。

　大隅氏は東京大助教授になった直後の１９８８年、酵母の細胞を飢餓状態にして観察し、液胞と呼ばれる細胞内の器官にタンパク質などが取り込まれ、分解されているところを顕微鏡でとらえた。９３年にはオートファジーに必要な１４種類の遺伝子を発見した。９６年に基礎生物学研究所（愛知県岡崎市）に移った後も成果を上げ続け、遺伝子の働きを次々と解き明かした。

　最近は世界中の研究者が次々とこの分野に参入している。異常なタンパク質がたまるパーキンソン病などの画期的治療法の開発や、がんや糖尿病との関連が研究されている。これらを通じて老化の抑制に発展する可能性がある。

　日本人のノーベル医学生理学賞の受賞は４人目。ノーベル賞を単独で受賞するのは、自然科学部門では４９年の湯川秀樹、８７年の利根川進の両氏に続き２９年ぶり３人目。

　授賞式は、１２月１０日にストックホルムで開かれる。賞金は８００万スウェーデンクローナ（約９４００万円）。

（中日新聞）