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国連の新総長 経験、指導力に期待する

 国連安全保障理事会が今年末で任期を終える潘基文(バンキムン)国連事務総長の後任に国連難民高等弁務官を務めたグテレス元ポルトガル首相(67)を選んだ。国連総会で正式に選出され、来年1月から巨大組織を率いる。

     米露対立で出口が見えないシリア危機や欧州を揺るがす難民への対応など国連が果たすべき課題は山積している。9代目の「国連の顔」になるグテレス氏が経験を生かして指導力を発揮することに期待したい。

     今回の事務総長選びでは候補者との公開質疑を実施するなど透明度を高める改革が実施された。当初はこれまで事務総長を出していない東欧出身者や女性が有力とみられたが、原稿を見ずに国際社会に貢献する熱意を語り、答弁も的確だったグテレス氏を評価する声が高まった。

     6回の模擬投票ですべてトップの得票を獲得し、東欧出身者を望んでいるとみられたロシアも最終的にグテレス氏を受け入れた。従来は「密室協議」が常態化し、拒否権を持つ常任理事国間の裏取引などがささやかれてきたが、「人物本位」で選出された。改革の成果があったといえるだろう。大国に対するグテレス氏の発言力も高まるのではないか。

     グテレス氏は1995年から6年半、ポルトガルの社会党政権で首相を務め、欧州連合の通貨統合、東ティモール独立などに力を発揮した。2005年からは2期10年、難民高等弁務官として世界各地を飛び回った。人権団体の評価も高い。

     歴代事務総長は外交官や外相出身者が多く、首相経験者は初めて。外相出身で調整型の潘氏が十分な指導力を発揮できなかったこともあり、リーダーの資質が重視された。難民問題での実績への期待も大きい。

     国連事務総長は4万人を超える国連職員の長だ。国連憲章で世界の平和、安全に脅威を及ぼす問題について安保理の注意を促すことができると規定されているが、安保理を直接動かす権限を持つわけではない。

     むしろ、言葉や行動を通じて国際世論を喚起し、安保理が行動を起こさざるを得ないような状況を作り出す政治力が問われる。もちろん大国との意思疎通は欠かせないが、政治家として選挙で民意をつかむ経験を重ねてきたことが生かせるはずだ。

     グテレス氏は難民高等弁務官時代、本部組織をスリム化し、現場の活動を増やした。発足70年を過ぎ、肥大化や非効率化が指摘される国連の改革への手腕も期待される。

     安保理改革を含めた組織改革を進めるにも政治力は不可欠だ。グテレス氏は首相時代以来、たびたび日本を訪れてきた知日家だ。日本としてもグテレス氏を支援しながら、改革の動きを促していきたい。

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