「変わらなきゃいい」なんて――
こんばんは、氷太よ。
今日はたし先生の
『アイスクリームライン「上」』
を頂いていくわね。
「上」巻と「下」巻に分かれて構成されているわ。
一応あらすじは読んだのよ。
そんでね、サーフィンに関するお話だと思ってたわけ。
サーフィンって単語あるしね。
辞めたって書いてあるけど、どうせまた始めるんだろハイハイワロスワロスっていう安易な流れだと思ってたのね。
だから正直言って
弾ける水飛沫・・・躍動する肉体・・・!!
ひゃだっ!!見てるだけで想像妊娠しちゃうわッ!!
とかいう我ながらおぞましい妄想してたワケよ。
きっと物凄いスポーティーな肉体美が見れるんじゃねーかってさ。
と思ってたらこの主人公、ぐーたらぐーたらしやがって
ちっともサーフィンする気配すらない。
ここ、オコ。
氷太的にはちょっとオコよ、ココ。
そう、そういう要素は一切出て来ないわ。
チャラ男風のサーファーに誘われるだけ。
これが下巻でどう繋がってくるのか、そもそも何故頑なにまたやろうとしないのかまだ分からないんだけど、まあ少なくとも言えるのは
実にエクストリーム・・・!
君のビッグウェーブがボクの中に入ってくるぅッ!!
とかいうふざけた話ではないって事。
非常に繊細に思春期という難しい年頃の心情に沿ったお話になってるわ。
子供でもなく大人でもない。
大人になる過程で全ての少年が辿るであろう抵抗と葛藤の物語になっているのよ。
少しだけだけども、たなと先生の『あちらこちらぼくら』に近い世界観になっているわね。
だけども大きく違うのは、この物語では「挫折」と「再起」が描かれているという所ね。
あらすじ
夏海光太は、打ちこんでいたサーフィンを辞めてから、楽しいけど変わり映えのしない毎日を送っていた。
そんなある日、クラスメイトの優等生・尾栗満から誕生日プレゼントをもらう。
満のことを意識するようになる光太。
満の気持ちはわからないまま……。
夏がくるたびに二人の距離は縮まり、いつしかお互いが特別な存在にかわっていく──。
こんな感じね。
テメー、なに青春してんだバカヤロウ。
ってツッコミたくなるくらい爽やかなあらすじよね。
この上巻では結構伏線のように隠されたまま下巻に進む部分があるわ。
例えばこのサーフィン。
何故辞めてしまったのかは明かされないの。
まあ何となくは分かるんだけどね。
でもこれはアタシが男だから分かる事なのかもしれないわ。
男ってさ・・・弱音とか吐かねーもんなのよ。
物事の優劣に凄く拘る生き物なの。
女性に分かるかしらこういう気持ち・・・。
分からないわよねえ・・・ふぅ(←吐息
分からないっていうのも無理ないわ・・・。
アタシもよく分かってないもん。
世の中にはま~ぺちゃくちゃと不平不満漏らす男も実際居るしね。
そう考えるとこの解釈が果たして合ってるのか分からない。
まあ負けたくないっていう気持ちがあるっていうのだけは分かる。
・・・ごめんなさい、独特の視点ってのが全然役に立ってないわね。
登場人物
夏海(表紙)×不明
ゆる~くダラダラと生きる所謂「省エネ少年」
サーフィンに打ち込んだ過去があるようだが、現在は全くしていない。
夏休みに突入する初日が誕生日のため、祝われた事がない。
とある事情があり、校内の女子にクソ嫌われている。
満×不明
夏海の同級生で、お育ちの良いお坊ちゃま。
塾に習い事と何かと慌しい日々を送っている。
誕生日祝われた事がない夏海に初めてプレゼントを贈った人。
感想
とても良かったわ。
名作よコレは。
物語の大まかなテーマは、挫折した人間と挫折しかかっている人間による人間模様ね。
そしてそれを描いていく上で欠かせないキーアイテムとなっているのが「誕生日プレゼント」になっているわ。
この「誕生日プレゼント」を贈る部分がこれまた良いのよ・・・。
特に夏海から満へのね。
満も誰かに祝われた事、きっとないんじゃないかしら。
嬉しいっていう感情と、どこか物悲しさを感じさせる描写なのよねえ・・・。
こういう言葉にする事が難しい混在した感情こそが「思春期を描く」って事だとアタシは思うのよね。
ただちょっとだけ弊害もあるわ。
年を跨いで徐々に距離を縮めていくアイテムとして、2人の誕生日関連のやりとりが描かれるわけだけども・・・。
それぞれの誕生日が
・夏海が7月
・満が11月
なのよね。
ここの2つの月が主に描いていく部分になるので、他の月がばっさりと切られるの。
つまり時の移り変わりがめっちゃ早い。
油断していると、いつの間にか進級しててそれを前提とした話になっていくので
ってなるわよ。
ちゃんとナレーション、見ようねせやね。
ここの時の移り変わりに関する描写の乏しさが唯一残念な部分かなあ・・・。
もうちょっと風景盛り込んでいくとか、学校行事のコマを重ねて移り変わりを印象付けて欲しかった。
一応この上巻では中学3年生から高2の冬まで描かれるわけだけど、そんな急激な流れに作家さん自体も付いていけなかったのかちょっとミスまでしちゃってる。
中3の時に、満は「誰にも祝って貰ったことがない」という夏海の誕生日に関する言葉を聞いて初めのプレゼントを渡すのよ。
そして高1の7月に満は夏海に誕生日プレゼントをまた贈るのよね。
そして夏休み明けに夏海は満にお礼を言うんだけど・・・。
以下がその時の満の台詞です。
「1年の時にさ、夏休み入るから誰にも祝ってもらえないみたいなこと言ってたろ?」
作家さんですらこうなのだから、とにかく時系列に関しては一気に飛ぶ時は飛ぶから気をつけて読んだ方がいいわね・・・(ゴクリ
とはいえやはり他の部分は素晴らしいわ。
色々と工夫が見られるのよ。
序盤~中盤は完全に夏海はノンケ、満はホモ以上ホモ未満なホモの素質を兼ね備えているような存在なんだけど、後半に進んで行くうちにいつの間にか立場がすり替わっていくわ。
この移ろい方、お上手。
変化の在り様が物凄く自然なんだもの。
個人的な見所は満が屋上で涙を見せるシーンね・・・。
ここでの夏海は、2次元特有のイケメンと賞賛される応対をするわけじゃないわ。
ただ、現実的に考えれば限りなく優しくそして男前な言葉をかけてあげてる。
同じような苦しみの中にいる相手だからこそ、かける言葉が見つからない。
そんな中振り絞ったこの言葉はきっと、満を救い出したに違いない。
暖かさが残り続けているような、とても優しさで満ちた描写だったわよ。
この漫画の本当に良い部分って
「何が2人の距離を縮めているのか」が明確な所よ。
いつの間にか・・・って展開にした方が描く方も見る方も楽だと思うの。
物語としての奥行きが浅いからさ、描きやすいし分かりやすいじゃない。
でもね、人を好きになるってさ、やっぱり理由ってあるのよ。
恋の始まりには理由はないとかいう言葉あるけども、アタシはそんな事ないと思う。
1つだけじゃなくって、沢山あるから選べないだけじゃないのかなって思うのよ。
でも好きな相手を思い浮かべて、脳裏に写ったその光景こそがその人の事を好きな1番の理由だと思うのよね。
あと凄いな~って思ったのが、
「女にモテなさすぎてついにこっちの道きちゃったか・・・」
って言う夏海のセリフ。
この子、現実に置かれている状況をそのまま受け入れているのよね。
これって凄いな~って思ったわ。
よくBLでも少女漫画でも恋愛物ってさ
「そんなはずない!」
ってムキになったりするシーンあるじゃない?
まるで相手を好きになった事がおかしいかのように描かれる部分。
あれっていつもどうなのかなって思うのよね。
BLでもさ「男同士で・・・」って悩む事あるのそりゃ分かるわよ。
現実のホモだって、ホモ同士で居たってそれで悩む事はあるんだから。
でも「相手に想いを伝えるのか否か」を悩むべきであって、自分のその想い自体を否定する必要なんかないのよ。
これって自分にも、相手にも失礼な行為よ。
恋愛って自己否定に使う道具じゃないのよ。
だからこの子の「まず自分を受け止める」っていう在り方は、とても素晴らしいと思ったわ。
こういう風に描いてくれて、氷太嬉しかった。
まとめ
非常に続きが気になる状態で終わる上巻。
ゆるーくだるーく生きている序盤の主人公を殴りたくなるかもしれないけど段々と覚醒を迎えていくから安心して!
「思春期」と「暖かさ」と「優しさ」が詰まった漫画!
絶対にオススメよ!
今回の漫画