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暮らしのブログ

毎日の暮らしにチョコっと幸せをプラスしたい人に、いちばんうれしいブログになりたい

1億2000万人の日本人がお客様を辞めた日、ブラック企業は消滅すると思う。

働くこと 働くこと-ブラック企業

電通の社員が自殺したニュースを見て、心から残念に思う。そして、親御さんの気持ちはいかばかりか。

この数日、いくつかのブログやブクマに目を通した。上司が悪い、会社が悪い、社会が悪い、業界が悪い、クライアントが悪い、などがほとんどだ。

まぁ、みんな悪い。

とにかく、こんなに働くなんておかしい、狂っている。広告業界以外の方は、そう思っているのではないだろうか。ブラックもブラック、ドスブラック。

さて、筆者であるわたしは、(ブラック)広告業界から一歩身を引いて、現在モラトリアム中の身だ。

今でも広告業界に未練たらたら。まぁ、このままでは、もう広告業界にはもう戻れないだろうが、性なのか、最近このブログを書き始めた。

わたしは、もう人格そのものがラブ・ブラックである。

念のため、わたしが言うブラックは、あくまでも「労働」に関してである。

もちろん、広告業界にだって、お金や名誉に腹黒いという意味での黒い人間は一定数いるが、どちらかというと、広告業界の人間の多くは、身震いするほど自分の仕事を純粋に愛していて、この世界以外に自分を活かせる場所はないと思っていて、それに「命」をかける人たちの集団だと思っている。

一方、亡くなった電通社員の方には、本当に気の毒に思う。彼女は、徹夜やパワハラに耐えられなかった。広告業界の常識に潰されたのだ。とんでもないところに就職してしまった。

だから、学生諸君、転職検討者には、大きな声で言いたい。プライベートや睡眠時間が惜しいのなら、広告業界に決して行ってはいけない。

広告のためなら、24時間いつでも罵倒に耐え、「喜んで!」と言える人でないと、広告業界に決して行ってはいけない。広告に命を奪われてもいいという人以外、決して行ってはいけない。家族が大事な人、恋人が大事な人は決して行ってはいけない(結局わたしも耐えられなかったのだが)。

広告業界は決して自らの力では変われない。もし、変われるとしたら、日本のすべての業界がホワイトになった後なら、変われるかもしれない。

広告業界なんて、そもそも世界的に労働感覚が狂っている業界なのだが、特に日本の広告業界は狂っていて、日本の電通はその頂点にある。

わたしも、知り合いの紹介で、その電通とコピーライターとして仕事をご一緒させていただいたことが何度かある。

もう昔々、あるカメラメーカーの記事広告を出すからよろしくと、はじめての仕事はスタートした。地味な仕事だが、天下の電通様と仕事が広がるぜと、即了承した。

タレントがカメラの使い心地を語る記事広告、たかだか数ページの雑誌広告だ。朝8時集合で、ロケ地に行って撮影中に取材。このとき電通の何担当かよくわからない社員が入れ替わり立ち替わり15名くらい来た。たかだか1雑誌で数ページの案件なのに焦った(メーカーの年間予算は莫大なんだろう)。あとは出版社の社員が数名、タレントは1人、マネージャー1人、クライアント(メーカーの宣伝部)1人。で、最後に現場に来た制作のスタッフはわたし含む5名と小ぶり。

19時にタレントの取材撮影が終わってクリエイティブ・ディレクター(CD)が言う。

「じゃあ明日の朝イチ(8時のこと)で、3案くらいよろしく」。記事広告だからキャッチ1本、サブキャッチ5本、ボディーコピーは5,000文字くらいだろうか。さすがに朝イチは無理だ。「ちょっと、朝イチは…」。「あっそ、しょうがないな、デザイナーさんも待たせてるんだからさ、午後イチで」。「OKす。午後イチなら、なんとか…」そんな感じである。

で、徹夜で作業して、なんとか朝イチに5案をメール(サービス精神)。やっと寝れると思ったら、11時には電話で起こされる。「コピーいいんだけど、何かこう刺さらないよ(全然良くないらしい)。なる早でちょっと修正しておいて。とりあえず、朝イチに貰ったのは、時間ないから先方に出す」。「わかりました」。そして、別件も進めながら、ようやく修正案を19時に出すが、遅いと叱られる。

で、修正案は無視されて、その電話で最初のA案とC案とD案をうまく混ぜた感じで、もう2案作れと言われる。翌朝までに出す。

こんな感じのやり取りを数日間繰り返す(朦朧として覚えていない)。そして入稿(締切)日がやって来て、CDが言う。「紆余曲折あったけど、先方さんさぁ、A案をすごく気に入ってたよ。結局、A案で決まった。修正無し、お疲れー」。「(なんだったんだよ、今までの修正は)」

制作料は40万円くらいだったろうか。結構修正したし、こんなもんだ。だけど、魂は削る。その後、電通さんからデカイ仕事が来ることはなかったが…

この時の反省点はたくさんあった(もう忘れた)。とにかく学んだのは、電通と仕事をする脳力は自分にはない。わたしには、すべてにおいて無理だ。それにクライアントの迷走ぶりも半端ない。

さて、これよりもっと若いころ、電通の有名なCDに飲み要員で気に入ってもらっていた時代があった。酔いに任せて「仕事くださいよぉ」と言うと、「いいよ。いいけどさ、成功しても全部オレが持っていくよ、いい? オレ、仕事は鬼だよ。やめておいたほうがいいよ、死ぬから。友だちがいいよ」。一緒に仕事をしたかったが、CDは仕事をくれなかった。本当に気遣ってくれていたんだと思う。その後、この僅かな雑誌広告案件ひとつで、電通の底抜けなヤバさを知った。

でも、言っておくが、電通以外の広告代理店だって、似たようなものだ。徹夜の回数が1回、2回減るくらいである。その1、2回が、大きな違いなのではあるが。

そして、もう一つ言っておくなら、わたしはこの仕事が楽しかった。滅茶苦茶辛かったけど、楽しかった。入稿って言われて、ドバーッとアドレナリンが出た感じがした。幸せだった。

プロダクション勤務時代から徹夜とか、朝帰りは当たり前だった。タクシーは自由に使えたから、だいたい朝5時にタクシーを拾って、家に帰って風呂入って、ソファーで寝て、妻が会社に出社する8時半に起きて、9時に会社に向かう日々だった。

フリーランスになってからだが、ある時なんて、年末に10本くらいの案件が同時並行でさすがにやばかった。辛いからと顔なじみの医者に日局の酸素ボンベを処方してもらい(もちろん保険外)、酸素ボンベを仕入れ、カニューラで吸引。イスは、ストッケのグラビティで固定状態。

だんだん仕事の能率が落ち、最後は3徹。こういう時は1本3、4千円するユンケルスターが効く。スターになりたい。3日続けて飲んだ。さぁ4徹か… と夜になり、胸が魔物に潰されるかのように、ぎぃゅーっと締め付けられた。発作だ。死ぬ… なんとか、深夜タクシーで救急外来へ。心電図がやばい。心筋トロポニンの値が高い。入院。昼に心臓カテーテルやりましょう…と。

代理店とか、プロダクションに締切が間に合わない旨を電話する。同情される。「大丈夫っすか、まじで。とりあえず、生きててよかったすね。なんとか、スケジュールを後ろに倒しますんで、よろしくお願いします」。「明日は、打合せを代わりに行ってテープ取っておくんで、それ聞いてくださいね」。わたしは「もちろん!(笑顔)」と返事する。

みんな優しいなぁ。

さすがに、その日はよく寝た。何日ぶりだろう、ベッドで寝たの。

不思議なもので、カテーテル入れたが何も悪いところが見つからなかった。原因不明だった。医者は言った。「これで死んじゃうと心不全とか、過労死ってなるんですよねぇ。気をつけてください」。「はい、すみません」。そして、翌朝、退院。 命があるって素晴らしい。←アホか。人間限界突破すると、内臓が死ぬことで休もうとするんだな。そんな気がした。

そう。別に自分だけじゃない。肺に穴空いて救急車呼ばれたり、精神科のお世話になったり、毎日点滴打ちに行く奴。そこまでやっても、辞めたいとは思わないのだ。そこまでしてでも、この仕事を続けさせてほしい。こいつらは、みんな好きでやっている。

正直なところ、このブラックぶりでも、広告の仕事を好きでやっている奴にしか合ったことがない。プロダクション勤務時代も、上司やクライアントや代理店の文句を言うやつはいるが、勤務時間の文句を言う人間に合ったことがない。

ごめん、本当に合ったことがないんだ(もちろん徹夜をしない奴もいた。別に、上司を納得させられるものを作れるなら、自由だ。こっちは好きで徹夜しているだけ)。

だから、今回、天下の電通社員がTwitterに労働環境の辛さを書いていたことに驚いた。ネタではなく、本気で苦しんでいたとは… でも、なんで、電通に入社したんだ。なんで、この業界に入ったんだ。なんで、辞められなかったんだ。なんで… 

わたしは底辺の3流クリエーターだけど、フリーで30代半ばのころの収入は2、3,000万円くらいだった。電通の30代半ばのCDだったら年収1,500万円くらい。関係ないけどキー局の友人の30代半ばの時もそんな感じだったか。

オフィス、知名度、仕事内容、スタッフ、コネ、イニシアチブ、福利厚生なんか入れたら、フリーランス換算で年収5、6,000万円+α(アルファが半端ない)だろう。

まぁ、この収入や立場の保持に走ると、いい作品が作れなくなってくる。どちらにしても、この苦労はお金で多少報われる。電通なら新入社員だって残業代すごいから4、500万円はもらえるでしょう。23歳で500万円あれば、結構いい。新聞の拡張員と同じくらいもらえる。

でも、死んだらおしまいだ。命より大事なものはない。だから、若い広告マンたち。やれると思って入った広告代理店だけど、辛くて「死にたい」とまで思うなら、休職するなり、退職するなりしてほしい。殉職したいならいいが。

広告業界に就職したいのなら、電通の鬼十則くらい知っているだろう。鬼十則とはすなわち、電通の行動規範のようなものだ。電通以外の広告代理店も、これと似たようなものだ。

電通の鬼十則(抜粋)

  • 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
  • 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
  • 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらない。
  • 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
  • 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。 引用:吉田秀雄 - Wikipedia

電通に行くような人は、これを知っていて入社しているはずだ。そう、ここは鬼ヶ島だよ。ここで、さらに戦いがあって、そこを勝ち抜いた人だけが、すごい広告を作る(すごい広告を作るから勝ち抜けるとも言う)。ピタゴラスイッチやだんご3兄弟で有名な元電通の佐藤雅彦さんなんか、常人じゃない体力と知力で伝説だった。

いわゆる一流広告クリエイティブ・ディレクターは、ほとんどが電通と博報堂出身である。(出身と書いたが、役員コースでもなければ、30~50歳の間で独立するなり、転職するなりだ。普通の会社でも一緒でしょ、そこは)。

広告クリエイターなら、尊敬していない人はいないんじゃないかって人に、元電通のクリエイティブ・ディレクター佐々木宏さんがいる。

佐々木宏さんを知らなくても、リオ五輪の閉会式のマリオ、ソフトバンクの白戸家、BOSS、トヨタの実写版ドラえもん、大人グリコとかは知っているだろう。日本の広告の現代史にこの人ありだ。

佐々木さんは、寝ない人で広告業界では有名だ。超人だ。

私なんてテレビ局に入りたかったほどなのだから、いま、こうしてCMでやりたい仕事に関わらせてもらっているのがありがたいですし。やりたい仕事をやらせてもらえるということは、いくら大変であってもやれないよりはずっといいわけですから、「三日連続の徹夜で大変だ」なんて言っている場合じゃないんです。スタッフからそう愚痴を言われたときの私は、「世の中、一週間も寝ないでトンネルで工事している人もいるんだぞ!」と、そんな人たちのことをまるで知らないのに怒りだすというヘンな親父になっていますね。 佐々木宏の名言|やりたい仕事なら頑張れる

本当にこう言ったかは知らないが、睡眠するくらいなら、仕事をしたい。そういう人が、広告クリエーティブの頂点にいる。そして、広告クリエーターとして成功したいから、皆がこのレベルを目指すわけだ。

ブラック、そう、コーヒーもブラック。ブラックは旨い。広告クリエーターはブラックが好きだ。つらくても好きと言う、罵倒されても立ち上がる、広告大好き。この状態を維持できないと、広告マンではいられないのだ。

だから、ほとんどの広告マンは好きでこのブラックと呼ばれる労働をやっているはず。むしろ自分たちにすれば、ホワイト。そりゃ、徹夜せずに、罵倒されずに、納得できる広告が完成すればいいよ、本当に。

無理ってわかってる。でもね、広告を作れるなら、いいんです。我慢できるんです。って人しか、残れない。それが、広告業界です!

無理! と思ったら逃げた方がいい。炭鉱みたいなところです。命の危険と隣合わせ。っていうか、広告業界にいる人は、魂削るって言葉が好きだと思う。だぶん。魂を絞りきって出した表現や企画に自己陶酔できる。

なんてこと言うんだ、バカ野郎。そう思った方に、この先を読んでいただきたい。わたしが言いたいことは、タイトルにある通りである。

「1億2000万人の日本人がお客様を辞めた日、ブラック企業は消滅すると思う」である。

広告はね、社会で真っ先に不要になるものなんだ。東日本で震災があったよね。最初になにが止まったか覚えている? 電気でも、水道でもない。広告。すぐ止まった。広告は、いざって時に全然役に立たない。世の中に本当に必要なものじゃないから、どの業界よりもお客様の言いなりにならないと、仕事がもらえない。そういう宿命なのだ(わたしが広告クリエーターとしての人生に疑問を感じたのは震災がきっかけだった・どうでもいいが)。

「お客様は神様」

その言葉の真意は置いておいて、お客様第一主義みたいな言葉があるように、お客様は強い。お客様のためならなんでもする。それが、広告業界では、どこよりもお客様第一なことになっている。

本当になんだってする。だって、捨てられたくないでしょ。いつでも捨てられる存在だから、必死でお客様のために働く。それが、広告マン。先ほど紹介した、日本一の広告マン、佐々木宏だってお客様にはかなわない。

そこで手元にあった空撮映像に「明日の新聞をご覧ください」というタイトルが入るCMを徹夜でつくりました。新聞広告を見てもらうためのCMです。これが意外にも話題になりました。1週間でもできた。孫さんにはやられたな、と思いました。

以後、異例の早さでのCM制作が当たり前になりました。

出典:白戸家のお父さん犬は厳しい「予算」と「納期」から生まれた? - ライブドアニュース

日本一のクリエーターだって、お客様にはかなわない。

ソフトバンクがどうっていう話じゃない。すべてのクライアントにおいて言えることだ。あなたが働いている企業の宣伝部の人が広告マンに無茶を言う。お客様だから、広告マンは断らない、断れない。

何がいいたいのかと言うと、

広告業界ほど、お客様第一主義じゃないけれど、結局この日本社会はお客様に支配されている。神様に。1億2000万の神様がいる。あなたも、巡り巡って、亡くなった電通社員の加害者かもしれない。みんなで、日本のお客様第一主義をどうにかしなきゃって思わないと、過労死は減らない。ブラック企業はなくならない。

自分が今日から神様、お客様を辞めないと。

1億2000万人の日本人がお客様を辞めた日、ブラック企業は消滅すると思う。

お客様、御客様。

すごい言葉ですよね。

「客」に「御」を付けて「様」まで付ける。ただの客なのに。

日本企業のブラック状態をコトバで解決する一つの道は、「お客様」という言葉を禁止することしかないと思う。もう思い切って、法律でね。使ったら罰則規定ありとかね。

「客」で十分でしょ。客の意味は諸説あるけど、「一時的な家来として仕えている人」だ(Wikipediaより)。神様から客になって、それくらい立場落とさないと。ただ、語源としては「招き呼んだ人」。なるほど、客のままでも結構立場が高い。

ならいっそ「客」はやめて「カスタマ」でいいんじゃないだろうか。

Customer≒顧客 語源的には対等か、ちょっと厄介な人というイメージ。Custom≒関税、注文して作ってもらうバイクやクルマ Customerで画像検索すればCustomerのイメージが分かります。でLoyal Customerなんて言葉が生まれる。厄介ではなく忠節な顧客。なんでも言うことをきく便利な客。

そう、本来、客って面倒な存在のはず。もう自分にうそ付くのやめよう。正直言って客が立場下の方が幸せ。これ、世界的にはどうなんだろう。

Guest≒招かれた客 でも、語源的には「見知らぬ人」。実は、招かれざる客。Guestで画像検索すれば、Guestのイメージが分かります。

Client≒助言を求める依頼人 本来、広告のクライアントなんて、お願いしてくる身分のはず。でも、広告好きな人は広告作らせてもらえるなら、なんでも相手の言うことを聞いちゃうタイプが多い。Clientで画像検索すれば、Clientのイメージがわかります。要はアドバイスが欲しい人。

と、このように、少なくとも英語圏では「客」というのは、どこから見ても立場は対等か不審な人である。神どころか、不審な人。

だから、サービスしてあげる人の方が立場が高い。物を売ってあげる、作ってあげる人にイニシアチブがあるというスタンス。

たとえば、ヨーロッパのどこでもいいんですが、ちょっと住んでみるとわかる。フランスとかオススメ。客より店員の方が完全に偉い。店員が威張ってます。買わないと捨て台詞すら聞こえてくる店もある。

東南アジアに住んでも同じ。たとえば、タイ語で「ポーカーพ่อค้า」とか「メーカーแม่ค้า」というのが「商人」、「店主」のこと。文字通りには「商売の親」という意味だ。一方、「客」のことを「ルーカーลูกค้า」と言う。文字通りには「商売の子」。つまり、売る人が「親」で、買う人が「子」というヒエラルキー。通りで店員が横暴なわけだ。

このように、日本と世界では、「客」の概念が乖離している。日本の場合、客の立場が高いから、どんどん無茶な要求をする。本当は「客」の反対語は「主」なんですがね。

この無茶な要求が、あらゆる業界のヒエラルキーの底辺にいる広告業界にその無茶が雪だるまのようになってやって来る。無茶のなすりあい、責任のなすりあいの最終消化地点が電通。

あ、もう広告の話じゃないや。つまり、この無茶のなすり合いは、日本全国で起きている。日本のブラック企業、ブラックな労働環境問題というのは、社内のヒエラルキーというよりは、買う人が偉い社会、つまり「お客様」という人が存在する社会に問題があるのではないかということ。

買う方が偉いから、いつまでたっても、物やサービスを提供する方に負荷がかかる。それは、連鎖して連鎖して、日本全体がブラック化しているのである。

たかが言葉、されど言葉。言葉の持つ意味は大きい。

最後に、ご存知かと思うが、「様」を付けただけで環境が変わったという話をご紹介したい。

聖路加病院で、患者の名字に様を付け、患者を患者様と呼ぶことにした。そうしたら、モンスターペイシェンツが生まれた。一回採血を失敗しただけで、業務上過失障害だと大騒ぎする、というもの。日経メディカル

お客様も同じこと。だから、逆に「お」と「様」を取って、「客」にしよう。

そりゃ自分がお客様の立場のときは気持ちがいいだろう。でも、それが巡り巡って、自分にかえってくる。自分がお客様として受けたサービスが、何倍もの痛みに変わって、かえってくるのだ。

お客様のためなら何でもやる。お客様の要望にできないと言ってはいけない。おもてなしの国。

もう、やめよう。そんな、共食いのような社会構造の日本に未来はない。お客様、どうか、ただの客になってください。

そして、命が惜しい人は、お客様の社会が単なる客の社会に変わるまでは、広告業界にだけは進まない方がいいだろう。

おっと、記事を書いていたら朝になってしまった…