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【きょうからノーベル賞】
「村上春樹はノーベル賞をとれるのか?」 歴史ひもとき傾向と対策探る
人気作家、村上春樹さんの日本人3人目となるノーベル文学賞受賞を待ち望む声は絶えない。「でも賞自体についてはあまり知られていない。歴史を知ればもう少し冷静に見守れるはずです」。文芸評論家、川村湊さん(65)の新刊『村上春樹はノーベル賞をとれるのか?』(光文社新書)はノーベル文学賞の歴史をひもとき、受賞への「傾向と対策」を探る刺激的な一冊だ。
〈理想主義的傾向をもつもっとも注目すべき文学作品を発表した者〉に贈るという理念を掲げる同賞。川村さんは過去115年で110人を超える受賞者を徹底分析し、いくつかの傾向を指摘する。まず選考するのが18人の会員からなるスウェーデン・アカデミーということもあって欧州勢の受賞が圧倒的に多い。言語や国、民族の「持ち回り制」が存在し、同じ言語や国の作家は連続で受賞しない。極端な政治思想も嫌われる傾向にあるという。近年は女性や社会的弱者に授与する流れもある。
そんな“基準”が悲喜劇を生んできた。世界的評価が揺るがないアルゼンチンのホルヘ・ルイス・ボルヘスは受賞できずに世を去った。