受け取る年金で老後破産と老老介護は防止出来るか
どうも千日です。老後破産(ろうごはさん)とは高齢者が貧困により破産状態の生活を送らざるを得ないような状態になっている社会問題です。
少子高齢化が進み、年金の給付水準を引き下げざるを得ない一方、医療や介護の負担は重くなっています。介護保険を必要とする人に十分に介護の手が行き届かない現状があります。
例えば、認知症になっても、以下の状態であれば『要介護2』です。
- 立ち上がりや歩行などが自力では困難。排泄、入浴、衣類の着脱などで介助が必要。
- 日課や直前に何をしていたのかが部分的にわからないため、生活に支障をきたす。他人とのスムーズな対応が困難。
要介護2は公的介護保険の施設サービスを利用して、介護施設に入所することができますが、特別養護老人ホームへの入所が出来るのは原則として要介護3からです。
要介護2では、週に2~3回の訪問介護や通所介護が基本となり、介護の負担は家族に重くのしかかります。
平成26年度で老齢年金の受給権を持つ人の平均年金月額は約20万円ほどです。
- 国民年金 54,414円
- 厚生年金 144,886円
これに対して、民間の介護付き有料老人ホームの平均的な費用(30日換算、要介護3の場合)は29万円かかります。内訳は以下のとおりです。
- 居住費 120,000円
- 食費 73,500円
- その他費用 69,000円
- 介護付有料老人ホームサービス費 22,701円
- サービス加算 1,567円
とてもじゃありませんが、年金で賄えるものではありません。
2015年までの5年間で背景に介護の問題があったとされる殺人や心中事件は未遂も含め137件(NHK調べ)だそうです。
2週間に1回この日本で、父を、母を、伴侶を、その手にかけてしまう人がいる。
これが現実であり、これからの少子高齢化社会でさらに加速していくものと思います。
千日はこれを他人事とは思えません。
むろん、そこには超えてはならない一線があります。しかし『それを超えてしまった彼らと自分を分ける明確な線引きなど無い』と思うからです。
今日は、他人事ではないそんな不運から親、妻、夫、子供そして自分を守る老後の年金の知恵について書こうと思います。
主にお金の話です。
目次
想定外に備えて退職後の年金を増やすコツ
大企業の重役まで出世した人でも、老後破産や老老介護と無縁というわけにはいきません。住宅ローンを退職金で払い終えたら、残りの金額は…という人は案外多いです。
千日の上司(1千万超プレーヤー)も、年金定期便で送られてくる予定の金額を見て『…まじか、少なすぎる』と思ったそうです(彼女の要求水準もそれなりに高そうですが)。
千日のようにもともとの給料がそれなりだと、現役時代の給料に比例する年金支給額もそれなりです。年金収入だけに頼る状態では薄氷の上を歩いているようなものです。
親の介護や子供の就職失敗など、想定外の出来事で簡単に破たんしてしまうのです。ある程度の想定をもって退職後の収入を増やす方策を考えたいところです。
老後に貧困化するとリカバリーできない
ある元銀行員の話です。
定年後に事業を始めるための元手として年金担保融資で5百万円の融資を受けていましたが、事業を始める準備をした形跡がなく、借りたお金がどこに消えたのかを調べると書斎の引き出しから食品やお酒のレシートがどっさり出て来ました。
結局、彼は破産してしまいました。
家族が病院に連れていき診察してもらうと、若年性の認知症であることが発覚しました。本人も周囲も気づかないうちに認知症が進んでお金の管理が出来ずに貧困化してしまったというわけです。
銀行員で定年後に事業を始めようという位ですから、十分な高給取りですし、現役時代からバリバリ仕事をやっていた有能な人物です。それでも、認知症という想定外の出来事で破産、貧困化しリカバリーできないのが老後破産の怖さです。
年金を月額4割増やす裏技
このような「想定外」に備えて貯蓄を…といっても難しいですよね。だって、そんなこと起こらないかもしれません。
そこで千日がおすすめするのは、想定外に対して、貯蓄=ストックで備えるのではなく、リスクの高い人生の後半に収入をシフトさせる方法です。
今後60代になり、リタイア世代になっても心身ともに健康でまだ働けるならば、是非検討したいのが年金の繰り下げ受給です。
「繰り下げ受給」とは、年金の支給開始年齢である65歳以降70歳までの5年間は、受け取り開始を1ヵ月遅らせるごとに、年金額が0.7%増える制度です。
この制度は国民年金(老齢基礎年金)、厚生年金(老齢厚生年金)のどちらにもあります。
70歳まで年金を受け取らず、働いて生活することができれば、支払日ごとに受け取る年金額は最大約42%増となります。
もしも途中で『体力的にもうしんどい』となれば、申請して年金受給を開始することもできます。無理せず、年金のリスクだけで健康に不安のある後半に収入をシフトできるのです。
繰り下げ受給は国民年金だけ、厚生年金だけと、それぞれ別々に利用することもできます。
- 70歳までは国民年金+給与
- 70歳からはさらに厚生年金を約4割増しにして楽に生活する
といった選択も可能です。
累計の金額では、受け取り開始を遅くした分、65歳からもらった人より損をしてしまうんじゃないの?
確かにそうです。厚生労働省が2016年7月27日に発表した2015年分の簡易生命表の概況によると2015年における日本の平均寿命は、男性が80.79歳、女性が87.05歳となりました。
累計で繰り下げ受給が追いつくのは81歳です。男性なら81歳以上長生きしないと損ですね。
しかし、支給日ごとに受け取る金額が4割増しになれば、冒頭でお話しした民間の介護付き有料老人ホームの平均的な費用29万円を年金で支払える可能性が出てきます。
平均的な年金20万円×1.42=28万4千円ですから。
もちろん、これだけでは自分の生活費が出ませんが、毎月フローとして出ていく費用とほぼ同額の収入が確保されるだけで全然違ってくるはずです。
想定外に備えて退職後の年金で損をしないコツ
もう一つ、貰える年金をみすみす逃さないコツをご紹介します。
夫婦どちらかが20年以上厚生年金を掛けていて、かつ共働き期間が長い夫婦の場合は、年金で損をしないためのポイントがあります。
加給年金を満額受給する
加給年金は、下記の人を対象として、年金の支給開始年齢に達した時点で、その人に生計を維持されている65歳未満の配偶者や18歳未満の子がいる場合に支給されます。
- 厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人
- 中高齢の資格期間の特例を受ける人
配偶者の生年月日が昭和18年4月2日以降であれば、加給年金額は39万100円になります。
月額32,508円ですね、これは大きいです。
分かりやすく言うと家族手当みたいなものです。この加給年金加算のためには届け出が必要です。
大事なことですので、もう一度言います。
届け出なければ受けることが出来ません。
加えて、微妙な条件によって受けられなくなるケースがありますので、幾つか注意点を説明します。
夫が年上で妻が65歳になる前に夫が厚生年金の受給を始めるケース
妻が65歳になるまでは年間39万100円の加給年金が夫の厚生年金に加算されますが、妻が厚生年金の掛け金を20年以上支払ってしまうと加給年金は支給されません。
例として夫が64歳で妻が62歳になったばかりの夫婦を例に説明します。
妻がこれまで厚生年金を掛けながら19年11ヵ月働いてきたとします。その状況で、あと1ヵ月分の掛け金を払ってしまうと、夫が65歳になって以降2年間に渡って受け取れたはずの加算分が手に入らなくなってしまうのです。
妻が20年以上厚生年金を掛けても加給年金が受け取れるケース
夫が年金の受給を初めたあとに妻が20年目の掛け金を払った場合は、加給年金が受け取れます。
加給年金がもらえるかの判定は、夫が年金の受給を始めた時点で行われ、一度支給が開始されると、今度は妻が65歳になるか、自分の厚生年金の受給を始めるまで続きます。
年金受給の繰り下げをしても加給年金の金額は増えない
繰り下げ受給と関連して注意したいポイントです。
加給年金がもらえる夫婦で、夫が年金受給開始を繰り下げると、受給開始後にその分の加給年金が受け取れます。
ただし加給年金部分は、繰り下げても金額が増えることはありません。
老老介護の厳しい現実
さっきからカネの話ばっかり…
とにかくカネを払って老人ホームに放り込めってか?
こんな風に思われてもしょうがないでしょうね。しかし、実際に自分が直面した時、そんなきれいごとでは済まないのが介護です。
ある九州の男性の話です。
妻とはお見合いで、彼女の笑顔に一目ぼれして結婚しました。2人の男の子をもうけ、子供たちが独立してからは持ち家に夫婦二人水入らずで暮らし、年に1回阿蘇山へのドライブをルーティーンとしてたそうです。
2年して妻が腰を骨折しました。骨粗鬆症と診断されました。
病院を退院し、リハビリをすれば元の生活が戻ってくると、その時は信じていたそうです。
「そばについていてやりたい」
妻は腰に力が入らず、しばしば寝床で大便を漏らしました。これが介護か、とその時に実感したそうです。
「ごめんなさい」
「もう気にせんでええ」
数カ月間、彼の懸命の介護で妻は自力で歩けるようになるまでに回復しましたが、その後すぐにまた腰を骨折し、完全にベッドから起き上がれなくなってしまいました。
みじめな姿を見られたくないと、部屋のカーテンを閉め切り、外に出なくなる妻。
やがて、彼にある懇願をするようになったそうです。
つい数か月前までは、毎年旅行にでかけて行く幸せな夫婦だったんです。
それからというもの、変わり果てた妻から涙ながらの懇願を彼は毎日受けるようになります。そして、最後のドライブ。行き先は毎年訪れていた阿蘇山でした。
裁判記録に車の中での会話が残されています。
本当にいいんだね
後悔しないね
後戻りはできないよ
これに対して妻は、
うん
確実に、殺してね
これが、長年連れ添った妻の最期の言葉になりました。
まとめ
もし自分だったら、と考えないわけにはいきません。もちろん逆の立場もあり得ます。妻の手にかかるのであれば本望ですが、これによって一生妻に十字架を背負わせるなんて御免です。
冒頭でも言いましたが、
むろん、そこには超えてはならない一線があります。しかし『それを超えてしまった彼らと自分を分ける明確な線引きなど無い』と思うのです。
高齢者や認知症に限らず、介護福祉制度には確かに改善しなければならない点がありますし、それはこれから何とかしていかなければならない課題です。
また一方で、個人として一人ひとり、自分が不幸に見まわれないようにするための方策も必要です。今のところ、ブログを通して千日が出来ることは、こういう、お金の話なんです。
以上、千日のブログでした。
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