前回の物語はこちら
『オイルSOS』の放映日時とあらすじ
★ 昭和41(1966)年10月9日
こちらのサイトで本編(25分程度)をご覧になれます。
【イランをはじめ中近東の国々に原因不明の油断火事が起こり、
航行中のタンカーが炎上。
あるいは爆発するという事件が相次いで起こった。
科学特捜隊中近東支部は原因の調査に乗り出したが、
正体を掴むことはできなかった】
夜の港をふらふらと歩く酔っ払いの男がいた。
彼は上機嫌で鼻歌を歌っていたが、
海面が妙に青白く光っているのを目撃する。
やがて波が白く泡立った。
酔っ払いの男は、
「光る波だね。錯覚じゃない。確かに見た」とつぶやく。
その直後、走ってきたタンクローリーと接触しそうになり、
運転手にひどく怒鳴られた。
「変な光を見なかったか?」と尋ねるものの、
「酔っ払いに関わっている暇はない」と一蹴される。
そして再び青い閃光が走ると、
海面から離れた場所にいるはずのタンクローリーが炎上した。
「やったのはおれだ」というかのように、
甲高い鳴き声の怪獣が海から顔を出した。
酔っ払いの男は怖くなって逃げた。
一夜明け、事件の通報を受けた科特隊と警察は、
港付近で現場検証を行っていた。
アラシとイデはビートルに乗って空からの調査を行い、
ムラマツとハヤタは目撃者の男と会っていた。
だが警察は男がタバコの火を投げたことで、
タンクローリーが炎上したのではないかという。
ハヤタは男を落ち着かせて、
昨夜のことを思い出させたほうがいいと言った。
ムラマツは中近東の油田爆発の原因となった犯人が、
日本に来ていると推測するが、
空中で偵察を続けていたアラシとイデが、
海面が青く光っているのを確認した。
さっそくムラマツに報告するのだが、
光は大型タンカーを飲み込み爆発させてしまった。
目撃者の男は「あれだよ!俺の見たのは!」と叫ぶ。
疑っていた警察は何も言うことができなかった。
ムラマツは岩本博士から、
怪獣がオイルを食べて生きていると聞き、
かれが何処かに撤退したのを見計らって、
科特隊本部で作戦会議を開いた。
アキコが怪獣の想像図が描かれた絵を見せると、
イデは腹にオイルが詰まっていると予想する。
アラシはスパイダーを撃てば簡単にやっつけられると言うが、
ハヤタは危険すぎると反対した。
岩本博士はイデの意見を取り入れ、
東京湾近郊の海に怪獣をおびき寄せ、
そこで撃退する作戦を考えた。
空挺隊の2機のヘリが石油の入ったドラム缶を海に投下すると、
怪獣はそれにつられてのこのこと現れた。
だが、港湾内に怪獣が侵入したのを見たイデが、
反射的にミサイルを撃ってしまい、
興奮した怪獣は火を噴いて製油所を攻撃する。
大惨事になったイデは責任を感じて、
単独行動に走ってしまうのだった-。
視聴率および出演者など
視聴率 : 38.3%
ハヤタ : 黒部進
ムラマツ : 小林昭二
アキコ : 桜井浩子
イデ : 二瓶正也
アラシ : 石井伊吉
酔っ払いの男 : 梅津栄
タンクローリーの運転手 : 野本礼三
神奈川県警刑事 : 生井健夫、宮川洋一
製油所所長 : 近衛敏明
ウルトラマン : 古谷敏
ペスター : 荒垣輝雄、清野幸弘
ナレーション : 石坂浩二
制作順 : 13
監督 :円谷一
脚本 : 金城哲夫
(敬称略)
妙香の感想
前回はかなりモヤッとした話でしたが、
今回は災害救助や科特隊のチームワークを描いていたので、
安心して観ることができました。
金城先生のシナリオでは人間の機微が、
いつも丁寧に描かれるんですよ。
目撃者の男が酔っ払いと聞いただけで、
頭ごなしに警察は疑ってかかるんですが、
人というのは見た目ではわからないところがありますよね。
「錯覚じゃない。確かに見た」と言っているんですから、
ちゃんと信用してあげなきゃ気の毒ですよ。
また前回の岩本博士は騒動の原因となってしまいましたが、
今回は怪獣の生態について言い当てるなど、
学者としてシャープな一面を見せてくれました。
岩本博士「タンクローリーやタンカー。
それに中近東の油田、これらを襲っていることから考えると、
怪物は間違いなくオイルを食って生きているね」
ムラマツ「オイルを食う?」
岩本博士「驚くことはないさ。メタニカやモーナス菌のように、
油を食って生きている微生物だって無数にいるくらいだ。
石油時代といわれる現代文明の裏側で、
オイルを食う怪物が現れても不思議はないだろう」
この物語が放送されたのは昭和41年ですが、
数年後に有名な「オイルショック」が起こっています。
もし金城先生がそうしたことを予想して、
このシナリオを書いたとしたら、本当にすごいですね。
騒動の犯人はぺスターですが、
オイルを本当に食べているのは、文明を大幅に進化させた人間なんですよ。
こういった社会風刺のエッセンスがあるのも、
ウルトラシリーズの大きな特徴なんです。
何十年かのちには枯渇してしまいます。
人間の生活にとって必要なエネルギーを、
もっと大事にしようというメッセージが、
込められているのではないでしょうか。
さて、この話で避けて通れないのは、
重大な場面でミスをしてしまったイデのことです。
彼が反射的にミサイルを撃たなかったら、
ぺスターが製油所で暴れるということはなかったかも知れません。
イデは新兵器を開発したりして頭は抜群にいいんですが、
あまり実戦向きではない隊員なんですよ。
ウルトラマンはビジネスドラマではないので、
適材適所というわけには行かないんでしょうが、
彼の普段の役割を考えると、
あの場面での重圧は相当なものだったと思います。
そういったプレッシャーがミスにつながったんです。
でも、責任感の強いイデは、
なんとかして事態を収拾しようとしました。
これ、すごくわかります。
実はイデの「頭でっかちでおっちょこちょい」というキャラクターは、
私とかなり共通する性格なんですよ。
私もかつて仕事をしていたときに、ミスをしでかしてしまうと、
ひとりで解決しようと必死になったことがありました。
ムラマツキャップが器の大きい上司だから、よかったものの、
これがブラック企業の重役みたいだったら、
彼は科特隊をリストラされて路頭に迷ったかも知れません。
また、普段から科特隊の5人は仲がいいんでしょう。
敵と戦う時や何かを成し遂げる時は、
チームワークの良さが鍵となりますね。
「人の和」というのはお金では絶対に買えないものです。
それをしみじみと感じたエピソードでありました。
次回は『真珠貝防衛指令』です。