【長文】俺がこんなレビューをもう読みたくない理由と、メタルを語る言葉の未来

公開日: 2016/08/18 その他/コラム


音楽レビューに物申す

 皆さんは、音楽のレビューを読んでますか?ミュージシャンや作品名を検索すれば、よほどマイナーでない限りはレビューが書かれていますよね。レビューサイトやブログの文章じゃなくても、Amazonとかのレビューも含めれば、全く読まないという方はまず居ないでしょう。

 ですが、私はそうしたレビューを読んでいて気になることがいくつもあります。私がもう読みたくない音楽レビューの特徴を以下に並べました。

 基本的にヘヴィメタルのレビューを対象に語っていますが、メタルに詳しくない音楽好きの方、あるいは他の芸術が好きな方ならそこそこ共感できる内容のはずです。「今のヘビメタのレビューにはこういうのが多くて、それでこの人はこんなに熱くなっているんだな。」と思って、あるいはメタラー(ヘヴィメタル好き)になったつもりで読んで下さい。

 また、以前、私はこの記事と(前半部分は)ほぼ同じ論旨の記事を数日間だけ公開してすぐ引っ込めるという無責任な行動をしてしまいました。引っ込めた一番の理由は、批判でも何でもない幼稚な悪口だったからです。"誤解を招く表現だった"なんてことはありません。猛省しています。その為、今回のバージョンでは、単なる悪口ではないメッセージを盛り込んでいるつもりです。

 それでは、「【長文】俺がこんなレビューをもう読みたくない理由と、メタルを語る言葉の未来」、どうぞお付き合い下さい。文字数は約1万4000字ですまずは、私が好きではないレビューの特徴を挙げていきます。


文章が短すぎる

 文章は長い方が読み応えがあるのは当たり前です。とはいえ、一概に悪いとは言いきれません。短く簡潔な文章でも、その作品を的確に表現している方はいくらでも居ます。「紹介」が目的なら短くても大丈夫です。それに、短い感想文であっても、その人の思いは伝わってきます。 

「ヤベェェェ!このアルバムマジでかっこいいから!こんな文章読んでる暇あったらとっとと聴け!!!!!!!」 

みたいな文章は、個人的には嫌いになれません(笑)。

 が、ニュースを読めば分かる程度の情報や表面的な印象のみを記述しており、かつ文章が短すぎるのは読み応えが無さすぎるのではないでしょうか。分かりやすく具体例を挙げておきます。

「アメリカの人気メタルバンド〇〇の新作。ドラムが××に交代し、さらにレコード会社移籍後のアルバムということもあり、バンドの新たな門出とも言える作品です。セルフタイトルということで気合も十分!今回はややミドルテンポ主体ですが、疾走曲も収録されており、音楽的にはいつも通りの〇〇節と言えば伝わるでしょう。相変わらず、ブルータルかつ重厚なサウンドですね。貫禄を感じます。文句無しの名曲である(曲名)、アグレッシブかつスピード感のある(曲名)の他には、ゲスト参加した女性ボーカルが個性的な(曲名)がおすすめ。早く来日してほしいです。」

こういうのってどうなんですか?レコード会社の紹介文ですか?

表面的な特徴をもっともらしく羅列しただけ

「欧州のバンドらしい叙情性に満ち、かつどことなくダークな質感が素晴らしい。モダンなリフが多いとはいえ、メロディアスなギターが随所に盛り込まれるなど、若手らしい感性も。アトモスフェリックかつ、時には様式美的かつシンフォニックキーボードと相まって、非常に芸術的〇曲目のドラマティック尺曲構築美が素晴らしくバンドのプログレッシヴかつポストな感覚も伺える。ギターはテクニカルかつクラシカルなソロも。最終曲はノイズを垂れ流すなど、エクスペリメンタルかつカオティックな感覚がオサレ。なかなかの良作だ。」 

これは、私が架空のメタルバンドのアルバムを想定して書いたレビューです。メタルのレビュー頻出単語を詰め込みました。さすがにここまでの文章は滅多にありません。が、これと同系統のレビューを書き続けている方は何人か居ます。

 もちろん、無理して個性的な表現を使うよりも、類型的な表現を使った方が伝わりやすいということは絶対にあります。こういう表現を多用していて良いレビューを書いている方も、当然居ます。今はYoutubeで"聴いて判断"出来る時代なのですから。それに、〇〇フォロワーみたいな個性に欠けるバンドは、これくらいの説明で十分かもしれません。でも、多種多様の作品をほとんど上記の様な表現しか用いずにレビューし続けている方々を見ると、どうなんだろうと思ってしまいます。

 こういう頻出単語は、せめて1レビューに3つくらいに出来ませんか!?「ダーク」とか「シンフォニック」とか「アトモスフェリック」とかは良いですよ!私も使いますよ!でも「プログレッシヴ」は、もうちょっと別の表現が見つかりませんか!?「70年代のプログレ風の曲」なら分かりますけど、「プログレッシヴな曲」って言われてピンとくる人間が居るんですか!?

 「芸術的(アーティスティック)」とかもどうなんですか!?音楽なんてみんな芸術じゃないんですか!?・・・VENOMは芸術的じゃなくてTOOLは芸術的みたいな、なんとなくの雰囲気は分かりますけど。

過剰に修辞的か、精神論が大半を占めている

 「唯一無二の音楽を創造するという長きに渡る彼らの過酷な旅は、遂にハードコアの極北へと到達した。芸術的かつ重厚な楽曲群は筆舌に尽くしがたい。ヴォーカルの〇〇××という理由で不当に差別されてきた過去をはね飛ばすかの如く、怒りとも悲しみともつかぬ壮絶なスクリームを聴かせてくれる。軟弱なメタルコアとは一線を画した魂の咆哮だ。ギタリストの□□はレコーディングの直前に自身の弟を亡くしており、その悲しみがギターの音色から伝わってくるかのよう。今作が、彼らが音楽史に打ち立てた崇高な金字塔であることは間違いないであろう。

この文章を読んだが思うことは、

「ハードコアって括り雑すぎない?」
「ヴォーカルの人、差別に負けないで頑張ってください。」
スクリームがメインなのかな?」
「ギターの人の弟のご冥福をお祈りします。」

くらいしかありません。もちろん、こういう文章でアルバムの世界観を伝えるというレビューは個性的で素敵ではあります。このスタイルで読み応えのある美しい文章を書いている方も居ます。 

 ですが、本当にそのアルバムが好きで書いたのか、もっともらしくカッコつけているだけなのかは、読んでる方からすれば結構分かるものです。(そもそも、悲しい出来事を経験すれば楽器の音色に深みが出るなら、音楽家は苦労しません。)とはいえ、こういうレビューはメタルには少なく、ロックに多いタイプですよね。

目立って特徴的な部分にのみ言及している

(この項は8/28に追記しました)
 メタルのアルバムには、アクセント的に女性ヴォーカリストが一曲のみにゲスト参加していたり、あるいは普段4~5分の曲を作っているバンドが15分を超える大曲に挑戦したりもします。また、いかにも「〇〇風」な曲や、カバー曲もあったりします。

 そういう目立って特徴的な曲にのみ言及しているレビューがあまりにも多すぎます。
全曲レビューをしているのならともかく、アルバムレビューなんだから、アルバムの全体像について、あるいはアルバムを象徴するような曲について言及しなきゃ駄目じゃないですか?「20分を超える大曲が収録されている。」なんて、Wikipediaでも見りゃ言われなくても分かりますよ!ラーメンのレビューで例えるなら、麺とスープについて語らずにメンマにだけ言及しているようなものです。いや、メンマも大事ですけども。

 こういうレビューを見ると、「ああ、この人はこういう誰でも気付くくらいの表面的な部分しか書くことが無かったんだなぁ。これで文字数を増やそうとしたんだなぁ。」と感じます。・・・この項、自分の首を絞める可能性が大なので載せようか迷ったんですけど、今更日和ってもしょうがないので掲載しました。

取り上げられている作品と関係の無い文章が大半を占めている 

 何を書くのかは本人の勝手です。でも、アルバムのレビューかと思って読んでみたら、筆者の近況や漫画とかのパロディで埋め尽くされている文章を読むとゲンナリしてしまいます。「アルバムレビュー」としての純度は間違いなく下がっています。

 もちろん、自分がそのアルバムと出会った印象的なエピソードだとか、曲にまつわる思い出とかは、普通に読んでて面白いですよ。音楽的な分析どうこうじゃなくて、人間味溢れるエッセイとして私は大好きです。

 以下の点は、レビューに対してというよりも、多くのレビュアー、及びレビューサイト全般に対する苦言です。

その作品を何回も聴いていない

 出来ることなら、取り扱う作品を何十回と聴いてからレビューを書いて欲しいです。その方が、その作品をより理解できるはずですから。言うまでも無いことです。

 とはいえ、次から次へと出てくる新譜を前にして、一枚の作品をそう何度も聴いていられないのも事実。作品を聴く「回数」と「枚数」のバランスは人それぞれでしょう。それに、もちろん、作品を聴いた枚数の多さをレビューの質に反映させていると感じられる方も居ます。とあるレビュアーの方で、「(電車内での視聴や流し聴きを含めて)3~5回」(本人談)くらい聴いて次々と新譜レビューを書くスタイルの方が居ます。一つの作品を何十回も聴く私とは真逆のリスニング・スタイルです。とはいえ、その方のレビューは、なかなか作品の特徴をよく捉えられていると思います。こういう方も中にはいらっしゃいます。

 でも、「簡潔な言葉で作品を紹介する」目的のレビューだとしても、最低でも5回は聴いてからレビューした方が良いと思います。というか、せっかくお金を出して買ったんだからそのくらい聴きましょうよ!私が貧乏性なだけですか!?

 また、言うまでも無いことですが、マイナーな作品を探し回っている方による簡潔なレビューは、それだけで情報的価値が高いものです。どんどんレビューを書きつづけて下さい。

好みのジャンルに属するミュージシャンを全て称賛している

 「(ジャンル名)だったらなんでも好き!」という方が居ます。点数でいうなら、どんなミュージシャンにも80点、90点以上をつける方です。率直な疑問なのですが、世の中ってそんなに素晴らしいミュージシャンだらけですか? ピンからキリまで居るでしょう。メロスピは演奏技術の低いバンドが多いですし、テクデスには単なるテクニック自慢も多いです。自分が最も好きなバンドの作品を100点だとして、そのフォロワーのフォロワーみたいなバンドの作品に90点とか本当に付けられますか?

 他人の趣味にとやかく言うのが野暮なのはわかってます。大好きなミュージシャンが多いのは、皮肉じゃなくて、本当に羨やましいです。良い作品を聴いている最中は、テンションが上がってついつい90点とか付けちゃう気持ちもわかります。もちろん、その辺りは個人の自由です。

 でも、レビューを書くからには、自分のセンスを表明したいとか、この凄いミュージシャンを紹介したいとかという気持ちが多かれ少なかれあるです。 「このアルバムはクサメロと疾走感とキラキラしたキーボードが最高!89点!」 みたいな言葉のみであれもこれも手当たり次第に称賛されると、その方の本当に好きなミュージシャンが伝わってこないのです書き手の価値観や判断基準が分からないのです。「この人って(ジャンル名)だったら何でも適当に大絶賛するからあまり参考にならないんだよなー。」ってレビュアー、あなたの頭に思い浮かびませんか?

知ったかぶっている

 「メタルを中心にレビューしますが、(ピッチフォークで高評価の)インディーロックもブラックミュージックも最新鋭のクラブミュージックも幅広く感想を書いていきます。アニソンとか民族音楽もたまに手を出します。我ながら雑食すぎてキモイですねw」

こんなブログをたまに見かけます。挙げているジャンル名は適当ですが。こういう説明を見ると、「この人、メタルについてはともかく、他のジャンルについて良く分かっているのかな?」と思いませんか?ここまで広範なジャンルを並べられると、表面的な部分しか聴けてないのかな?と穿った見方をしてしまいます。

 もちろん、どんな作品を聴いてどんなレビューしようが、本人の勝手なのは分かってますよ。それは個人の自由ですよ。私が嫌なのは、"自分が全く知りもしないジャンルについて既存の用語を並び立てて知ったかぶって語っている"のみです(これはメタルに限った話じゃないですよ)。詳しくないのなら、「このジャンルに全然詳しく無い人の意見です。」と明記するべきです。 むしろ、そういう文章はかなり面白いと思います。普段クラシックしか聴かない方がデスメタルをどう評価するのかなんて、超面白そうじゃないですか。 

 言うまでもないことですが、広範なジャンルについて読み応えのあるレビューをしている方々は居ます。そういう方のレビューは本当に参考になります。

文字が見ずらすぎる

 これはレビューサイトというか、ウェブサイト全般への苦言です。余談として聞いていて下さい。

 各々の美術的なこだわりは尊重したいです。でも、文字色と背景が同系色とか、赤字で背景が黒とか、フォントが小さすぎるとか、そんなサイトはどうなんですか。「文字が見づらい」という理由だけで読む気が失せた訪問者も絶対居るはずですから!そんな些末な部分で自分の文章が読まれなくなるなんて、もったいなさすぎますよ!メタルのイメージカラーは基本的に赤と黒なんですけど、だからってこんな配色にしなくたって良いじゃないですか!閲覧者の眼を疲れさせてどうするんですか!白で良いでしょ白で!




なぜこんな記事を公開したのか

 言うまでも無く、レビューというのは絶対に有意義な情報源です。短く簡潔な言葉で作品の特徴を記述してくれる方は、本当に助かります。読者に余計な先入観を与えない為にあえて簡潔なレビューを書いている方も居るでしょう。Youtubeでいくらでも聴ける時代なので、短い説明文でもものすごく助かります。

 また、レビューしている作品の数が多いサイトというのは、よっぽど的外れじゃなければ、「(バンド名) にキーボードをプラスしたようなバンド」みたいな簡潔なレビューであっても、読者の新たな発見に繋がります。そうしたサイトのアーカイヴ的価値を否定する気持ちは毛頭ございません。その筆者と趣味が合う読者にとっては宝物のような存在でしょう。

 そもそも、私がメタルにハマったのも、新しいバンドを知ることが出来たのも、全てレビュアーの皆様の積み重ねがあるからです。本当に感謝しています。あれほど批判した上でのこの発言、どうしたって嘘や皮肉に聞こえてしまうと思いますが、私の本心です。 


 で、そんな私がなんでこんな記事を書いたのか。「人それぞれ」で済むかもしれない話なのに、なぜこんなに糾弾しているのか。








 私は、こういうレビューを"書く方が居る"ことを問題視しているのではありません。"書く方が多すぎる"ことを問題視しているのです。


 だって、シンプルで短い紹介目的のレビューばっかりだったら、メタルがその程度の言葉で語れる音楽だって勘違いされるじゃないですか!?

 考えてもみてください。一組の素晴らしいバンドが居たとします。にもかかわらず、そのバンドの音楽性や真の魅力が伝わらないレビューばかりを読んだ方が、「へぇーこのバンドはリフがザクザクして時々カオティックで良い感じだなー。」くらいの理解で留まって次のバンドを聴いてしまうとしたら、それはそのバンドにとっても読者にとっても不幸なことだと思いませんか?メタルとはそんなに浅い音楽ですか?

 私の批判に当てはまるレビューを書く方が増えた理由として考えられるのは、「新譜を簡潔に紹介する定型的なレビューばかりが増え、そういうレビューばかりを読んだ方が、その真似をして同じようなレビューを書くというサイクル」が出来上がっている可能性です 私の考えすぎでしょうか?でも、ここ数年の状況を見る限り、こうとしか考えられないのです。 新譜を次々とレビューしている方々は全く悪くありません。この状況を生み出した責任はありません。ただ、原因はあると思います(責任と原因は似て非なる概念です)。

 先日、とあるそこそこ有名なメタルバンドの新譜の名前を、発売から数か月後に検索しました。Amazonレビューを含めてだいたい10前後のレビューがありました。でも、そのほとんどが同じような「メロディックかつ勇壮」「今まで通りの〇〇節」といった内容かつ、(バンドの来歴や50字以内の各曲解説を除いて)500字以内でした。音楽性にあまり変化が無いバンドですし、書くのが難しいのはわかります。でも、そんな「紹介」目的のレビューはそんなに多くは要らないはずです。そして、その作品には何十回と聴かなければ分からないエネルギーが絶対にあるはずなんです。そういう文章が私は読みたいのです。

 (細かくは語りませんが、私がさらに心配しているのは、こういう「紹介」タイプのレビュアーばかりが目立って、「色んなミュージシャンを次々に"漁る"のが"音楽通"のあり方なんだ」という風潮が広まってしまうことです。音楽とは何十回も聴いて味わう芸術だと考えている私としては、そういう風潮が広まっている気がするのは悲しいのです。)



レビューのすすめ

 この記事は、他人を馬鹿にして注目を浴びたいとか、これからレビューを書く方々を委縮させたいとか、そんな目的では書いていません。私は、もっとレビューを書く方が増えてほしいのです。さんざん批判しておいて何を言っているんだと思わないで下さい。

 今のメタルのレビューって「そのアルバムを聴いたことのない人に向けて手短な言葉で紹介する」タイプのレビューが多すぎます。重ね重ね言いますが、そんなレビューでも本当にありがたいんです。ただでさえ、メタルについて書かれた日本語の文章なんて少ないんですから。でも、多くのアルバムについてそういうタイプのレビューしか見当たらない現状ってどうなんですか?

 「その作品を何十回も聴いた方にしか書けないレビュー」が少なすぎる気がします。書ける方がどうしても少なくなってしまうのは分かります。私の高望みかもしれません。でも、音楽的な知識や文章力が無くても、何十回と繰り返し聴いた方しか書けない文章が絶対にあるはずなんです。そういう文章がもっと世に溢れて欲しいんです。もっと皆さんにそんなレビューを書いて欲しいんです。

 私が批判点を挙げ連ねたから、レビューを書くのは難しそうと思う方も居るかもしれません。でも、私が挙げた批判点は、決してレベルの高い話じゃないはずです。むしろ、今更言うまでもない当たり前のことです。それらに気を付けて、30回、いや10回以上聴いてからレビューを書けば、それなりの文章は書けるはずです。

 偉そうにこんな記事を公開した私も、楽器すら弾けないド素人です。「俺はメタルを理解している!」 だなんて口が裂けても言えません。でも、音楽のことをロクに分かってない私の様なド素人でも、気合を入れて何度も聴いて、インタビューを読んで、 なんとか言葉をひねり出せば、そこそこのレビューは書けるんです。私ごときが出来るんだから、私以上の良いレビューを書ける方は日本中に居るはずです。自分でレビューをいくつか書いてみて、私はそう確信しました。謙遜でも皮肉でもなんでもなく、マジでそう思ってます。

 人の心に残るレビューは、長文じゃなくても、音楽的な知識が無くても書けるはずです。

「100回聴いても飽きなかった作品です。」
「この曲を初めて聴いたとき、僕は涙が止まらなかった。」
「俺はこのアルバムを、宇宙一愛している自信がある!

こんな一言の方が、表面的な用語を並べ立てたそれっぽい文章よりも、遥かに雄弁にその作品のエネルギーを物語っているはずです。 その作品にまつわる思い出を語っても良いじゃないですか!いっそのことポエムを書いてみても良いじゃないですか!他のジャンルと比べて、メタルのレビューでこういうエモーショナルな文章は少ない傾向にあると思いますが、そういう文章だって他人の心を動かすものです。誰かが100回聴いても飽きなかった作品なんて、聴きたくなるに決まってるじゃないですか!

 1枚の作品について熱く語る自信がないなら、逆転の発想で(?)全アルバムレビューを書いてみるも良いと思います。誰しも、自分が心底好きなミュージシャンくらい居るんじゃないですか?作風にあまり変化が無いミュージシャンだって、何十回、何百回と聴いた方にしか分からない細かな違いがあるんじゃないですか?それをちょっと書いてみるだけでも、ものすごく価値のある行為じゃありませんか?

 そりゃあ、新譜を地道にレビューしまくればアクセス数が増えるかもしれませんよ。私だってある程度は注目されたいから、新譜レビューもしますよ。でも、

「私はこのバンドに全く興味が無かったんですが、あなたの熱い文章を読んで思わず買っちゃいました!」
「私は100回以上このアルバムを聴いていますが、あなたの指摘したそういう魅力には気づきませんでした!感服です!」

こんなコメントが1つでも貰えたら、飛び上がるほど嬉しくないですか?レビュアー冥利に尽きませんか?私は言われた事が無いから分かりませんけども!

 レビューを書くという事は、自分にとっても絶対プラスになるはずです。私はレビューを書き始めてから、「このアルバムの特筆すべき所はないか」「今までと何が違うんだろう」「なんで自分はこの曲に心惹かれたんだろう」と以前よりも真剣に聴くようになりました。レビューなんて書いたこと無いという方も、まずは、"レビューを書くつもりで"作品を聴いてみるのはどうでしょう? 新鮮な発見があるかもしれませんよ!

 てゆーか、自分でレビューを書かなくても良いですよ!英語、あるいは他の言語が達者な方は、その語圏のインタビューや良いレビューを見つけて翻訳するだけでも大いに価値があります。また、海外のレビューを和訳するのはBABYMETAL界隈以外ではあまり見かけません。が、(雑誌とかに所属していない)個人のレビューでも、優れた内容のものがあったら訳してみるのも面白いはずです。翻訳された側は飛び上がる程嬉しいはずですし。

 単なる思い付きですけど、海外のメタル・フォーラムの投稿とかを翻訳するのもユニークじゃないですか?「海外の反応」系のサイトって人気じゃないですか?海外に憧れ過ぎて国産バンドに厳しい風潮すらあるメタル・シーンにこそ需要があると思いますよ!

 メタルの本場はアメリカとヨーロッパなので、どうしても英語圏に情報が集まってきてしまいます。そして、その語圏の情報を少しでも提供してくれるだけで有難いことです。私の見た限りでは、ほんの少しでも英文を読んだ上でレビューを書いている方は1%にも満たないはずです。だからこそ、私はそうしている方々の文章をとても好意的に読んでいるのです(私はそこまで英語が得意じゃないので)。言うまでもないことですがミュージシャン本人の発言という事実に基づいたレビューと、そうでないレビューというのは、説得力が雲泥の差です。

 英語がそこまで達者じゃないという方も、思い切って英語のインタビューを読んでみませんか?「(バンド名) Interview」で検索すればいくらでも見つかります。変わり者のミュージシャンじゃなければそこまで難しい単語や文法は使っていません。「このバンドのヴォーカルは、(バンド名)と(バンド名)に大きな影響を受けていると語っていた」くらいの情報でも、非常に有難い話です。

 Twitterでバンド名や作品名を適当に検索してみても、個性的な感性の方が居たりするものです。楽器を弾ける方なんて、私の何百倍も音楽を知っているはずです。私はそういう方に、是非レビューを書いてみて欲しいのです。

 気軽にAmazonに投稿すれば良いと思います。基本的にAmazonのレビューは質が低いですが、ごく稀に深い洞察力と音楽的知識を背景とした長文レビューを書いている方を見かけます。そして、そういうレビューは(比較的マイナーなバンドなのにも関わらず)「参考になった」ボタンが30以上は押されていたりします。心のこもったレビューが、人の心に届いている何よりの証拠じゃないですか? 

  ブログもどんどん始めてみてほしいのです。いっぱいレビューを書くのがレビューブログだという完全な誤解をなさっている方が居るかもしれません。でも、私は、レビューがひとつでもあればそれはレビューブログだと思います。Twitterで「なぜみんな(バンド名)の魅力に気づかないんだ!なんで日本じゃマイナーなんだ!」と熱く語っている方にこそ、私は気軽にブログを始めて欲しいのです。Twitterの手軽さの前に隠れがちかもしれませんが、ブログを始めるのはめちゃくちゃ簡単です。サイト名を決めて、基本的なレイアウトを選んだりして、10分は掛かりません。(ブログを始めるなら私が利用しているBloggerがオススメです。オシャレなテンプレートが数百種類はあるので、まるで海外のニュースサイトの様なカッコ良いブログが簡単に作れますよ!)

 自信が無くても大丈夫です。少しマイナーなメタルの作品名で検索すれば、200字以下の感想文を書いたブログが検索上位に来ることすらあるのですから。それを超える文章を書くことなんて誰にだって出来ます。それに、Twitterでブログの記事の宣伝をしまくれば、結構な人数の方に読んでもらえます。感想をもらえたりもするはずです。自分の熱い思いは「つぶやき」じゃなくて「文章」として"残す"方が何百倍も有意義じゃないですか?てゆーか、メタルへの愛ってつぶやくだけで済むんですか?

 え?「俺が世界一好きなアルバムを語る気は湧いてきたけど、20年前のマイナーなアルバムだから今さらAmazonとかに投稿しても注目されないし、ブログを始めても誰も来てくれないと思う」

 じゃあ俺のこのブログで良ければ掲載してやるよ!お前の愛情が感じられる文章だったらいくらでも掲載してやるよ!英語インタビューの和訳も大歓迎だよ!こんなブログでもそこそこの人数(曖昧な表現)は見てくれてるんだよ!Twitterでつぶやくよりマシだろ!?・・・この記事数の少ないブログが少しでもにぎやかになってくれれば本当に助かります!人助けだと思ってよろしくお願いします!・・・間違いなく、全員は自らブログを始める道を選ぶとは思いますけど。

 (8/21追記)・・・とか威勢の良いことを書いていましたが、ひとまず私のブログは私自身の文章だけを載せることにします。上記の発言は、長文レビューや英文の和訳などの文章を発表する「場」の少なさ(あるいは、アクセス数などが目に見えて分かるシステムの欠如)を考慮した上での発言でした。が、そういう意味では、ご自身でブログを始めた方が絶対に良いですよね。私のこんなブログに構ってる場合じゃないですよ!重ね重ね言いますが、ブログは本当に簡単です。レイアウトを考えるのも超楽しいです。開設したら教えて下さい。それにしても、こういう軽率な発言は控えるべきですね。・・・猛省です。



メタルを語る言葉の未来

 私は本当に、心の底からメタルを語る言葉の未来を憂いているんです。・・・読者の方の大半はヒいてますか?私が一人で熱くなっているだけですか?

 でも、ここ数年の内に書かれた新譜レビューの中で、私の批判にほとんど当てはまらないレビュー、ミュージシャン本人が語っていたような客観的事実を少しでも参照したレビュー、長文レビュー、それらは相当少ないはずです私が無知なだけですか?でも、仮にそうだとしても、もっとそういう方が目立ってても良いんじゃないですか?

 新譜を次々とレビューする方々以外にもお手本にすべき方は居ます。メタル以外のレビュアーにも居ます。そして、その方々が雄弁に"背中で語って"くれているはずです(私の勝手な思い込みなんですけど)。でも、そういう方々のレビューを見習っていると思われる方を、ほとんど見かけない。

 笑われるのを承知で言い訳しますけど、本当はここまで強い言葉を使いたくありませんでした。趣味で気ままに感想文やレビューを書いている方も居るでしょうし、各々のスタイルや信念があるのは分かっています。「人それぞれ」。その通りです。

 でも、個性的な意見を述べる方が居るのに、独創的な表現を用いる方が居るのに、英語圏の情報を参照する方が居るのに、そんな方々が現れて何年か経つのに、ほとんど誰もそのエッセンスを盗もうとすらしない。

 だから、これくらいあけすけに他人を批判して、私が思う現状の問題点を指摘して、直接的に色々なレビューの提案をしないと、もうダメなんじゃないかと思ったのです。"背中で語る"とか"苦言を呈す"とかじゃなくて、もっと騒がないとダメなんじゃないかと思ったのです。


 この記事は"悪口"ではなく"批判"なんですよ。もっと色んなレビューが増えてほしいから提言しているんですよ。私の批判に当てはまらないようなレビューなんていくらでも書けるのに、そうしない方が多すぎると思うんですよ。



 私の批判に当てはまるレビューを"書く方がいっぱい居る"ことを問題視しているんじゃないんですよ!書いてくれるのは本当に本当に有難い話です! 私は"そういうレビューを書く方ばかりが今後も増え続けていくとしか思えない"から不安なんですよ!このままじゃ、メタルを語る言葉が先細りしていく気がしてならないんですよ!ひいては、メタルへの浅い理解が蔓延する気がして夜も眠れないんですよ!





 ・・・それとも、私たちが愛するヘヴィメタルという音楽は、たった数回聴いたくらいで、ありふれた言葉だけで語り尽くせるくらいの浅い音楽なのでしょうか?メタルとはその程度の音楽なのでしょうか?



















んなわけねーだろ馬鹿!














 お前がメタラーなら、ヘビメタなんか単なる雑音じゃないかって笑われたことくらいあるだろ!?周りの連中とは趣味が合わなかっただろ!?日本じゃロン毛もタトゥーも難しいだろ!?気取った音楽雑誌に馬鹿にされてるのは知ってるだろ!?クラシックに比べりゃ歴史も権威も無いのは知ってるだろ!?メタルは本当はくだらない音楽なんじゃないかって思いが、一度は頭をよぎったことくらいあるんじゃないのか!?






 それでも、お前がメタルを心の底から愛しているから、お前はメタルを聴いているんだろ!?お前はメタラーなんだろ!?
メタルの魅力をたったの数百字で語り尽くせるわけないだろうが!メタルってのはそんな浅い音楽なわけないだろうが!メタルを愛するお前がメタルを熱く語らなくて誰が語るんだよ!?






 メタルってのは何よりも熱い音楽じゃねーのかよ!?そうだろ!?俺がメタラーのお前たちの気合の入った文章をもっと読みたいっていうのは、単なる俺のワガママじゃないよな!?みんなもそう思うだろ!?なぁ!?








最後に

 ・・・熱くなりすぎました(苦笑)。

 で、ここまで大口叩いた奴がどんなレビューを書いているのか、誰もが気になっているはずです。もちろん、人様のお手本になるレベルでは全然無いのですが、自分なりに色々なスタイルのレビューを試してきたつもりです。全て他の方々の手法のパクリなんですが、(最後の記事以外は)何かしら参考になる部分があったら幸いです 

・とりあえず記事タイトルで煽りまくる
・とにかく大絶賛する
・他人の批評に苦言を呈す

・海外の評価を持ち出す
・全アルバムレビューを書く
・ジャンル全体を総括する

・インタビューを和訳する
・初心者の目線からレビューする
・思わせぶりな記事タイトルにする

・レビューというかコラムを書く
・新譜レビューの中身の無さを他の話題で誤魔化す
・手抜きだけどとりあえず公開する


なるべく他者と被らない意見を書くとか、なるべく英字インタビューを読むとか、そんなことを目標にやっています。バンドの来歴や各曲ごとの印象とかは他の方々が書いてくれていますので、あまり書かないスタイルでやっています。あと、私にとって生涯No.1アルバムかどうかは分かりませんが、世界で最も長々と語れる自信のあるアルバムはあります。今年中には発表しようと思っています。

 また、私個人の価値観では、優れたレビューというのはそのミュージシャンや作品を知らない方が読んでも参考になるものだと考えています。取り扱っている作品が自分の好みに合うかどうかは関係ありません。

「こんな視点から音楽を語れるのか!」
「音楽とはこういう言葉で表現出来るのか!」
「このアルバムをきっかけに、こんな文章が書けるのか!」 

という新しい発見に繋がるような文章のことです。私がそう感じられる文章を書く方は(メタル以外のレビュアーも含めて)何人か居ます。私もそういうレビューを書いてみたいものです。私がレビューを書く際に参考にしている方々や、単純に好きなサイトは以下の記事で紹介しています。

【全メタラー必読】 知らないでは済まされない!メタル関連の素晴らしきサイト紹介

 ただ、最後にお願いしておきたいのですが、私のレビューの巧拙と、私が主張したことは別個に考えてほしいのです。出来ることなら、読んだ方々に

「これだけ大口叩いたヤツのレビューがこの程度じゃ、何も心に響かねーよ。こんなバカの言葉は無視しておこう。」

ではなく、

「他人のことを散々批判しやがって生意気な野郎だな。こいつのレビューなんてゴミ同然じゃねーか。このうるさいハエを黙らせるレビューでも書いてビビらせてやるか。」 

とさえ思ってくれれば良いのです。虫の良い話なのは自覚しています。でも、その結果として優れたレビューの数が増えるのなら、いったい誰が損をしますか?











 我ながら、独善的な記事だとは思います。とはいえ、レビュアーなんて、多少なりとも独善的じゃないと務まらないというのは、今更言うまでも無いことですよね。
そんな人間じゃないと、人様が丹精込めて作った作品を上から目線で"評価"、ましてや酷評なんてとても出来ません

 私が散々語ってきたことは「メタルを語る言葉」という、狭い世界の話です。こんなに熱くなる必要の無いことかもしれません。でも、狭い世界の話だからといって、軽いものではないはずです。むしろ、語る方の数が少ないからこそ、一人一人の影響力が大きくなるはずです。私はもっともっとメタルについての文章が増えて欲しいのです。

 そして、せっかく自分の思いを熱く語るなら、ツイッターよりもホームページやブログの方が絶対に良いはずです。"残せる"から。音楽の話なんて、政治や宗教について語るよりもずっと気軽なはずです。一度だけでも良いから、やってみる価値はあると思いませんか?

 この世界に、読んだ人の心を突き動かす文章の数が一つでも増えるなら、それはどんなに素晴らしいことでしょうか。この記事をきっかけに筆を執る方が現れたら、私がこの記事を書いた甲斐がありました。涙が出るほど嬉しいことです。それでは。

  (8/29追記) 追記ばっかりですみません。私は、「BABYMETALも好き」くらいのメタラーでありながら、Twitterでは多くのBABYMETALファンの皆さんと交流しているという、メタルのブログ運営者としては相当珍しい立場の人間です。そして、私がBABYMETALについての記事を宣伝したりすると、「面白かった」とか「参考になった」とか、そういった反響を結構頂けます。RTしてもらえると、百人単位の人に一斉に見てもらえます。こうなると、どうしてもBABYMETALについての記事を書きたくなるというのが人情というものです。俄然やる気が湧いてくるものです。(BABYMETAL人気の一番の要因は、こういうファン同士の相互作用なのかもしれません。)

 何が言いたいかというと、メタラーの皆さん、何か面白い記事を見つけたら、 Twitterとかで拡散してみるのはどうですか? アクセス数がちょっと増えるだけでも、書き手にとってはメチャクチャやる気が出るものです。あるいは、その記事のコメント欄に「とても参考になりました。」とか、一言だけでも書いてみるべきじゃないですか?それだけでも、書き手にとっては本当に励みになるし、文章を書く原動力が湧いてくるというものです。ちょっとキーボードを叩く手間さえあれば出来るんだから、やってみるべきです。あなたがその筆者のファンなら、なおさらです。


 また、私はBABYMETALについて書かれた多くの文章を読んで痛感しました。それらの多様性、質の高さや熱量と比べて、(BABYMETAL関連以外の)メタルのレビュー界は"荒れ果てている"と言っても過言ではありません。 特に近年の作品の大半は、2~3回聴いた後に10分で書いたような適当なレビューしか見当たらない。日本は決してメタルの人気が低い国じゃないのに、読み応えのあるレビューを現在進行形で書いている方が、どんなに多く見積もっても10人に達しないのは、ハッキリ言って"異常事態"だと思います。(BABYMETAL以外の)メタルしか聴かないメタラーは、この"惨状"に気付いていないんでしょうか?尊大な言い方になりますが、私のこの記事が世に広まって、少しでもこの現状が改善出来ることを願っています。・・・それでは。

















 もしかしたら、メタラー以外の方もこの文章を読んで下さっているかもしれません。その方は以下の記事をチェックしてみてくださいね。

【決定版】ヘヴィメタル初心者の入門にオススメのバンド&名盤紹介

「最後の最後に他の記事の宣伝かよ!」だなんて思わないで下さいよ。私がこのブログを始めた動機のひとつに「メタルに興味が無い奴をメタルの世界に引きずりこんでやる」というのがあるので。強引にでもメタルを"布教"していきますよ。メタルにハマるきっかけになりそうなバンドを並べた動画中心の簡潔な記事なので、お暇な時にでも聴いてみて下さいよ。 

 ・・・いや、お暇な時じゃなくて今すぐ聴け!俺みたいなクレイジーなメタラーを生み出しちまった、ヤバすぎる音楽ヘヴィメタルを聴いてみろ!拳を天に掲げろ!首を振れ!絶叫しろ!そして涙しろ!!!
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