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戦乱の帝国と、我が謀略~史上最強の国が出来るまで~ 作者:温泉文庫
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真田陣営の方針1

挿絵(By みてみん)
 参陣が許され食料の不安もなくなり、意気揚々とあてがわれた場所に行くと陣営作成中の兵から、セキメイが待っていると教えられた。
 兵から教えられた場所に行くと、ユリアとセキメイが会話していた。

「セキメイどうしたんだい? 歩兵を連れて明日到着するはずだったよね?」

「主様が心配だったので、フェニガに任せて一人で来てしまいました。上手くいったと聞いて安堵したです」

「うん。ちょっと危なかったけどね。どうも俺は偉い貴族への態度が分かってないみたいだ。今度セキメイに教えて貰わないとな」

「主様の魅力は誰とも分け隔てなく接する所ですが、名家の者にとっては不快でしょう。ただ主様の場合……名家の者を特別な人間とは全く思ってないのではありませんですか?」

「あー、うん。多分……。同じ人間だし……」

「となれば、言葉遣いだけを改めても効果は薄いかと。まずは接触を持たない事。とはいえ最低限の儀礼はこの戦いの間に覚えて頂きますです。目的の為には帝王とお会いしなければなりませんですし」

「その話、正直自信が無いのだけど。あたしがケイ室に連なる者だと、帝王ご自身に認めて頂くなんて……。お会いするだけでも難しいのではないかしら?」

「確かに難しい。だけど在り得なくはない。そうだろセキメイ?」

「はい。現在ケント様は孤立無援。その時功を成したケイの姓を持つ者が近くに居れば、頼もしく感じるでしょう。我々は男爵とはとても思えないほどの将軍を持ち、兵も多い。きっとケント様に届くほどの功を立てられますですよ」

 それは自信がある。
 ロクサーネ、アシュレイより強い人間は見たことが無い。
 ラスティルが互角だったくらいか。
 俺だって中々だ。
 鞍と鐙を先日作ったので、騎乗していれば皆に勝てると思う。
 何とかして皆にも使って欲しいのだけど……嫌だって言われてしまった。
 文化の壁は厚いなぁ。

「うん。セキメイがあの日話してくれたとっかかりを実現させる為に、頑張らないとな。今のビビアナとイルヘルミに挟まれた領地では、磨り潰されるだけだ。領民の皆もビビアナに降伏していいと言った時にはホッとしてた」

「今やビビアナの兵は三十万。決して争えませんです。そしてビビアナにつこうとも、イルヘルミにつこうとも先鋒として使い潰される恐れは余りに高い」

「だから大事を成すならばまずあたし達は争いが起こりにくい、せめて攻められにくい土地に移らなければならない。まずはカメノ州、オラリオは病がちにて嫡子は病弱。新しい妻が産んだ息子との間で後継者争いの火種が燻っている」

「其処で俺たちが嫡子ベルト・ケイの味方となり、後継ぎ争いを防げば領地の民は戦火を免れ、俺たちは安住の地を得られて一挙両得。それだけじゃない。カメノ州に隣接するムティナ州は小領主達が争い民は苦しんでいる。カメノ州で力を蓄えた俺たちがムティナ州に入って統一し、善政を敷けば歓呼の声を上げてくれるだろう」

「後は力を蓄え、中央の情勢を見て打って出るもよし、大軍が入りにくい地形を活かして守るもよし。ただしカメノ州とは常に友好的であるように。さもなければ中央へ出るのに多大の労力がかかるです」

 そうセキメイが言い終えると、三人で思わず笑い声をあげてしまった。
 何度聞いても鮮烈な策だと思う。
 昔義勇軍の指揮で精一杯だった俺は、広い視点で物を見れる軍師が必要だと感じていた。
 そして劉備(りゅうび)のようなユリアが居たのだから、孔明(こうめい)だって居るかもしれないと思いカメノ州まで探しに行き、セキメイに出会えた。
 俺はまだ十五歳だった彼女の聡明さに惹かれ、『仲間になってくれ、必ず人々が最も喜んでくれる領主となる』と言ったんだったな。
 証として俺が持つ未来知識の道具とその効果を話しもしたっけ。
 その時ムティナ州を手に入れ善政を敷けば、公爵と同等以上の力が手に入ると教えてくれたんだ。
 この策を聞いた時、劉備(りゅうび)孔明(こうめい)より教えられた天下三分の計を思い出した。
 色んな意味で俺たちにとても相応しい方針だろう。

「お二人とも覚えて下さっていたのですね」

「勿論だよ。これを聞いた時には興奮して寝られなかったもん。これで天下を安んじられる道筋が出来たと思った。どんなに悪くても、戦火に困った民たちが逃げ込める場所を作れるって」

「普通の者であれば、とても献じられた策ではありませんです。あの当時義勇軍の長でしかなかった者が、オラリオが受け入れようと思うほど名を広めるのは至難のわざ。しかし主様は成し遂げ、男爵としては在り得ない程の名声をお二人で得られました。これ程民から慕われている貴族はまず居ません。今回の戦で功を成し帝王のお耳まで届けば、少しの天命があるだけでケイ室の一人と認めて頂けるです」

「例え駄目でも俺たちの強さと民を大切にしているのが伝われば、オラリオだって無下にはしない。そうだよな?」

「はい。彼は老齢ゆえ野心に欠けます。その分ケイ室の一門として清廉さに気を使っていますです。その上今は病の身。後継者問題を抱え、仁に厚く武功を持つ味方を欲しているはず。天がお二人を支持しているとしか申せませんです」

「セキメイ、貴方に悪意が無いのは知ってる。だけど人の病を喜ぶような発言は止めて欲しいの。これからお世話になろうとしてる人の苦しみをそんな風に言うのは義に背くと聞いた人が思うかもしれないから。それにあたしが持つケイの姓が本物ならば、オラリオ殿は親戚なのよ?」

「はっ。お許しくださいユリア様。配慮に欠けましたです」

 とてもユリアらしい言葉だ。
 だけどこういった面を偶に潔白すぎると感じている。
 セキメイも言っていた。ユリアの気高い義と仁の心が苦難と失敗を招く日が来るかもしれないって。
 加えてユリアは本気でケイ帝国の再興を目指してるようだ。
 でもそれは不可能だろう。
 セキメイ、フェニガ共に無理だと言っている。
 俺も出来るとは思えない。
 何時か話さないといけないんだろうな……。

「まずは付いて来てくれた兵達を飢えさせずに済んで良かったよ。それもこれもセキメイとフェニガのお陰だ。マリオに兵糧を出させるなんて思いつきもしなかった」

「それほど大した策ではございませんです。元よりケイ帝国中の諸侯を集めては兵糧に問題がある者も居て当然。加えてマリオはこの連合軍により、自分が諸侯を纏めるのに相応しく、ビビアナの上に立つ人物であると見せたいのです。主様の今まで積み重ねて来た名声があれば、サポナ殿からの助けだけで十分だったかもしれません」

「確かにマリオは凄く偉そうだったね。それでもあたしとサナダ様だけだったら、ジョイ先輩に文を書くのだって思いついたかどうか。二人は天下一の軍師だよ」

 俺もそう思う……けど、セキメイの表情はすぐれない。
 ……天下一という言葉かな。

「お言葉ですが……わたし達が天下一とは、世の誰一人考えておりませんです。あ、いえ、主様とユリア様がそう思ってくださってるとは思いますですけど……」
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