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戦乱の帝国と、我が謀略~史上最強の国が出来るまで~ 作者:温泉文庫
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真田とユリアが合わさって最強に見える

「断る。七千の兵といっても、それは集めたばかりで訓練もしていない完全な民兵であろうが。数を水増ししてまで功に走る男爵如きを余は必要としていない。早々に去れ」

 いやっっったあっ!
 いいぞマリオ様! イケメン! マジイケメン! 貴方なら掘っても……いや、それは流石に……。

「お待ちくださいマリオ殿! 七千の兵は道々訓練をしてきました。功に焦ったりもせず、大将の下知に必ずしたがうと約束します。それに俺の配下であるロクサーネとアシュレイは、誰が相手でも遅れをとらない達人。セキメイにフェニガという優秀な軍師も居ますし、足手まといには決してなりません」

「おお、大した自信だ。それでシウン、今聞いた名を知っているか?」

「いいえ~聞いた覚えがありませんね。サナダ殿がコルノの乱で義勇兵としては破格の活躍をしたとは聞いておりますー。だからと言って兵糧を与えるだけの価値があるのかは難しいところでしょうけど~」

「で、あろうな。聞いたかサナダ。お前が自慢する配下はこの程度よ。分かったら疾く去るがよい。恨みに思いビビアナと組んでもいいぞ。追撃はしないでおいてやる」

 いよおおし! 青くなってる真田の顔頂きました!
 ビビアナとこいつが組んで、連合軍が負けちゃうと少々不味いがその確率は低い。
 大体先に連合軍の所へ来たこいつをビビアナが受け入れるとは思えん。
 しゃあああああオラアアア!
 こいつを思ったより早く殺せそ
「待ってくれないかマリオ殿」
 ジョイ……サポナ?

「なんだサポナ。異論でもあるのか」

「異論という程ではない。ただこのサナダは一時期アタイの所に居たんだ。今サナダが言った奴らもよく知っている。本当に有能な奴らだよ。出来れば軍に加えたいとアタイは思う」

 は? は? はぁあ!? て、てめぇ、自分自身も兵糧たかってる癖に更に寄越せと言うのか!
 あつっかましいやつうう! 

「つまり、サポナは余の意見に反対すると? こいつらは最初から余に兵糧を出させる気でここに来たのだぞ。何故その思惑通りに動いてやらねばならん」

「いいや。アタイが知ってる情報と希望を話しただけさ。マリオ殿が拒否するならそれでいいと思う。盟主の意見に逆らう気はないよ」

「盟主に従うのは当然ですサポナ殿」

 はぁー。やっとかよイルヘルミ。
 ま、これで副盟主も拒否しくれれば終わりだ。
 やれやれドキっとしたぜ。

「マリオ殿、わたくしとしても計算できない軍を中に入れるのは抵抗があります。されど……サポナ殿、この戦で勝つのに彼らを入れるのがよいと、貴女が仰るのか?」

 ま、待て何故そう繋げる? お前まさか……。

「アタイの状態は皆知ってるだろ? この場で最も勝ちたいと思ってるのがアタイなのには自信があるね。勝ちに繋がらない意見は言わないよ」

「ふむ……。マリオ殿、サポナ殿は兵数が少なく何処からか兵を持ってくる必要がございました。ここは彼らを受け入れ、サポナ殿の下に付かせては如何かと愚考いたします」

 はっ? はぁぁあああ!?

「……。シウン?」

「ごもっともだとは思います~。ただし、彼らがサポナ殿の下知に従い懸命に戦うのであれば、ですが」

「あ、ああ。戦うよ。いや、戦います。その為に俺たちは此処へ来たんだから」

「お前の口約束にどれだけの価値がある? 其処のユリアとやら共々誓紙に書いて出せ」

「……分かりました。そうします」

「サナダ殿、先ほどから気になっていたのだが貴方は誰を前にしていると思っている? 公爵を超える力をお持ちであるマリオ・ウェリア殿であるぞ。だというのに、貴方の心底にはマリオ殿さえ同格だと考えているのが透けて見える。兵糧も用意出来ない男爵風情が『マリオ殿』? 『マリオ様』と呼べ。侯爵であるわたくしも本来であればそう呼ばねばならぬが、副盟主であるが故に許して頂いているのだ」

「……それは、失礼をしました。マリオ様、以後気を付けます」

「ふん……。兵糧は出してやろう。しかし、イルヘルミ。その見え透いた芝居、余を舐めているのか?」

「……お気に触ったのでしたらご容赦を。しかし本当のことを言ったつもりであります。今回の戦、わたくしにとっても命運を掛けた物。全ては勝つためにで御座います」

「でなければ許しはせぬ」

「はっ。ご寛恕に感謝いたします盟主殿」

 し……しん……信じられ、ねぇ……。
 馬鹿な! ばかなヴァカァナァ!!!
 なんっでだイルヘルミ! そいつは絶対にお前の強敵になるんだぞ!
 そりゃ、ビビアナをどうにかしないとお前は死ぬしかないだろうけど……だからって。
 そいつらに時を与えたら、絶対に勝てんのだ! イルヘルミ! マリオぉ!
 真田の力が知れ渡れば、お前らだって共存は不可能なのにぃ!

 直ぐ隣の領地の奴らが異次元の知識によって、自分より二倍良い物を食べてると知ったお前らの領民はどう出ると思う? 確実にお前らの所から出ようとする。
 となれば、お前たちは全部の領民が相手の所へ行く前に、戦わざるを得なくなるだろう。
 現状でもその片鱗が出てるだろおおおがああああ!
 イルヘルミぃ! てめぇイケメン相手だからってポイント稼ごうとしてんじゃねぇよ!
 つーかマリオ! お前ホモか! 掘りたいのか! なぜ受け入れたぁ!

 なんで、どうしてこうなった?
 ああ……天を仰ぎ、頭を掻きむしりたい。
 理不尽極まる現実に、目の前の机を、大地を殴り付けたくてたまらない。

 完全に兵糧を他人だよりで兵を集め、その為に遅刻した。
 だってのに軍に留まり兵糧を与えられるのが確定しただと?
 幸運なのか? それとも他に要素が? 理解できねぇええ。

 大体真田の奴はどんな思考でこんなギャンブルに出た?
 奴が孔明、ホウ統だと信じる軍師の考えた策なのか?
 こいつらはサポナを知っている。
 サポナがフォローしてくれるのが計算の内だったとでも? イルヘルミまで?
 私の考えがそんなに足りてないとでもいうのかよぉ……。

 駄目だったらどーする気だったんだクソったれ……。
 くっそ、ユリアも真田も心底安心したという表情をしてやがる。
 ラスティルさんと同格であるユリアの義姉弟とやらが居る以上、これで真田とユリアの名が武功とともに国中へ知れ渡るのは確定したような物か?
 やがてその噂を伝って真田の異常な能力と、ユリアが持つケイの姓まで伝わりそう。

 これから民衆は更に苦しい思いをする。
 彼らは過去のケイ帝国を羨むだろう。
 そこへ元々貴族でもなんでもない二人が、男爵となり大戦(おおいくさ)に名を連ねた話が舞い込むわけだ。

 古いケイ帝国が滅び、新しいケイ帝国が産まれるのだと思うのではないか?
 この二人の手によって! 新世界へ導いてくれる王として!
 冗談じゃねぇ。だが民衆はそう思うように思えてならん。
 分かりやすく、美しい信じたくなる夢。
 何処もかしこも単純である方が受け良いんだよなクソが……。

 イルヘルミ……お前あれだろ?
 この二人の配下がどれ程か分からないし、例えどんな幸運が起ころうともビビアナさえ何とかすれば地力に勝る自分が勝つと思ってんだろ?
 本当だったらその通りさ。
 現時点で甘くて見て子爵程度じゃ誰かの配下になるしか勝ち目がない。リディアだってそう言ってた。
 だがなぁ、その横には真田が居るんだぜ……。
 こいつにどっかの領地で十年程こもらせてみろ。
 何が飛び出して来るか分からんぞ。
 製鉄技術を伸ばすには、特殊な専門的知識が必要だから最悪の所までは無理なのが救いか。
 この国の鉄は文化に対してやたら丈夫な感じがするけど、細かい細工が発達してないからな。
 日本の刀鍛冶師みたいな偏執狂は居ないのだ。
 真田がどれだけ尻を叩こうが、早々ヤバイ物は産まれん。

 だがイルヘルミを負かすのには十分だろう。
 お前、このままなら生涯にわたって今の行動を後悔すると思うよ?
 その生涯も老衰じゃなくて敗死で終わるのさ。

 お前に真田が持つ真の危険性は把握できないと分かってはいる。
 それでも……何とかしろや! しかも! どうして! 助けるんだぁあああ!

 い、いかん。隣にはリディアが居るってのに真田の事で興奮したら不味い。
 落ち着かないと……ど、どんなに難しかろうが落ち着け。
 すぅうううううう……はぁああああぁ。

「サポナ、これで満足か?」

「ああ、感謝するよマリオ殿。この借りは戦場で返す」

「そうしてもらおう。……テリカよ許せ。大将であるお前の意見も聞かずに決めてしまった。参加とサポナの下に付けるのは変えられんが、何かあるか?」

「御意に逆らう気は毛頭御座いませんが……アタシの軍師に発言をお許しください。リンハク、考えをマリオ様にお聞き頂け」

「ははっ」

 出て来たのはテリカと違って肌の真っ白な……二十未満っぽい中性的なイケメンだった。
 この肌の白さ、内勤しかしてないのかな?
 水色のポニテが涼やかだね。
 ……男だよね? 胸ぺったんこだし。
 い、いやそんなのどうでもいい。
 女声で『だが男だ』と言われそうな男性と思われる君よ。
 なんかこう、真田が駄目になるような策を。お願いします。

「おそれながら申し上げます。先ほどサナダ殿はどのような仕事でもと申されましたが、それは誠でありましょうや。不測の事態を『作る』というのも在り得ます。何らかの保証を頂戴できましたら、とお願いいたします」

「うむ。最もだな。リンハク安心せよ。この者たちが何かした場合、テリカの独断で処罰するのを認めよう。この旨も誓紙に書かせる。何といってもサポナが面倒を見るのだ。安心して使えばよい。戦には自信があるようだしな」

「有難うございますマリオ様。御意に沿うべく忠勤に励みます。……ついでと申しては何ですが、イルヘルミ様の戦略に一つ愚策を述べさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「ほぅ……許す」

「有難うございます。イルヘルミ様の戦略ではどちらかが必ずやビビアナの軍を抜き、ランドに攻め込むという物でありました。されどビビアナの軍は強く士気も旺盛。正面から当たるよりもビビアナの弱点を突かれては如何でしょうか」

「弱点……そのような物があの妾腹にな。詳しく申せ」

「ビビアナは最後の十官であるアルタを殺しました。これをランドに居る者たち全員は自分達を押さえつける物だと感じたはず。只でさえ誇り高いランドの名ある者たち。多くの者が面従腹背と推測致します。なれば我々はあえて戦う必要は御座いません。ビビアナの軍を引き付けているだけで、やがて手薄となったランドでビビアナを狙う者が出ましょう。それまで待てば我々は戦わずして勝つことも可能」

「成る程……リンハク殿、このイルヘルミ感服致しました。しかし……」
「待てイルヘルミ。余に言わせよ」

 う、うわー。
 さっきまでしかめっ面だったのに、今日一番の笑顔だ。
 そんなにこいつが言いたい内容とか面倒くさそう。

「リンハク、意見見事である。しかしお前の考えは少々狭い。確かにビビアナをランドから追い出すだけでも、余は一息をつける。しかしあやつが力を保ったままでは、その後このイルヘルミとサポナが直ぐに滅ぼされてしまいかねん。その後勢いに乗ったビビアナは余も、ここに居るどの諸侯も苦難を覚える事になろう。だからこそ、余は私財を投じてこの戦いをせねばならんのだ。分かったか」

 ……これが言いたかったんですか……ウザ。
 ……いや、ウザイとか言うのは勘違いだな。
 実際マリオが力を入れてくれないと、イルヘルミ、サポナ、本当だったらカルマも凄く困ったのだ。
 頭を地面に擦りつけて感謝して当然。
 ま、私にとっては大して関係無いので、私の毛根がウザサによるストレスでマッハなんだが。
 自慢じゃなくて真田を弾く話をしろやボキャー。

「ははぁ! この身の考えが浅く御座いました。お許しくださいませマリオ様、イルヘルミ様」

「いや、考えは見事でしたぞリンハク殿。ただマリオ殿の天下を思う考えがそれ以上だっただけ。マリオ殿、その御志に感謝致します」

「うむ」

 ションボリ……真田を弾く話が全くでない。
 今の三文芝居で終わり? 完全に纏まっっちゃったの……?
 何なんだ……世界は真田を中心に回ってるのか?
 最後に来て、幾らかは問題があったとしてもこいつの思惑通りになるなんて。
 その証拠にあいつら意気揚々と幕舎から出ていくじゃないか。
 私なんて気落ちしてるのがバレないよう、必死になって背筋を伸ばしてるってのに。

 こいつらかるーくウン億を越えそうな借金をしやがった。
 何なの? 借金をしまると、成功して返して貰えないと貸した人が潰れちゃうので更に金を突っ込んで貰えるというカエサル理論なの? アウグストゥスなの? 何が尊厳ある者だぜってーブチ滅ぼす。
 いや、借金じゃなくて貰ったのか?
 少なくともこいつらに返すつもりは無さそうだ。

 ぐぅっ……落ち着け、逆に、いや元通りに考えるんだ。
 最初からこいつらが戦う様子を見るつもりだっただろう?
 孫子曰く。敵の情報を手に入れるのが戦いの基本。とかなんとか。
 どんなゲームも現実もそうだったのを思い出せ。
 相手の場所、装備そういった情報を手に入れないと勝てないんだ。
 真田が行う事の真の価値を理解出来るのは私だけ。
 人の目では何が抜けてるか分かったもんじゃない。
 だから、こいつらが……参加して良かったんだ……。
 これの所為でこいつらが、出世したり諸侯と仲良くなったりして今後私の計画に問題を起こし始めるかもしれないけど……。
 ……よかったと思え。ショック受けっぱなしでどーする。
 ……しかしラスティルさんの、焼け木杭に火が付いたら全部吹っ飛ぶ可能性が……。

 今目の前で行われてるビビアナの鎧検証会は、中々の物で驚きの声がそこかしこから上がってるのだけど、感動できひん。
 あー、強いんですねー、槍も弓も刺さり難いんですねー。そんな感じ。
 まー大した差でないと言えばないんですがー、全兵士にこれだけの差があったら大きくなれば違うでしょうねー。
 神ゲーでも、一段階鉄鋼の研究がされてたら大違いだったからなー。
 はー、ゲームしてー。私これでも中々だったんだよなー。
 ゲームなら私真田に勝てると思うんだ。ネット対戦だったら見た目関係ないし。

 はぁ……検証会も終わった。陣地に帰ろ。

「待ってくださいレイブンさん!」

 ! このいけ好かないイケメン声。
 てんめぇ何の用だよ真田。
 爽やかに走って来てんじゃねーぞ。
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