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戦乱の帝国と、我が謀略~史上最強の国が出来るまで~ 作者:温泉文庫
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集合地点到着

 美肌道伝授の次の日から連合軍参陣への準備が始まった。
 まずはマリオとイルヘルミへ早馬で文を飛ばす。
 内容としては、
『参陣します。でも、先日の戦における傷がまだ癒えておらず、領内へ入ってきた草原族に対処するため兵は動かせません。それで文官を連れて行くので後方の兵糧管理と輸送をさせてください』
 という感じ。
 少し前から草原族の人々が領内の草原に移動してきてるので、諸侯が確認しても信憑性が増すだけだろう。
 やがてレスターでは獣人が闊歩するようになるだろうけど、それを協力体制と見るか獣人が幅を効かせてると見るかは難しいところだと思う。
 少なくともビビアナと戦ってる間はバレまい。
 こんな辺境を調べる余裕なんて無いはずだ。

 次に出発準備である。
 私個人の分は直ぐに終わる。
 人に見られて不味い物は羊毛布団のみ。
 それを箱に入れてアイラさんへ管理を頼んで、後は部屋の整理くらいのものだ。

 一方軍の方は大変なはずだった。
 今回のように突然かつ特殊な編成ともなれば、人員を選び補給を確保するだけで一週間以上過ぎていてもおかしくはない。

 加えて私たちの居るレスターと集合地点であるヨウキは、ランドを挟んで反対側。
 しかも近い方の右回りはビビアナの領地を掠めるので不可能。
 左回りをして、カメノ州を通りランドを中心にして四分の三周するしかない。
 参陣したら既に戦いが終わっていた。なんてギリギリ二代目将軍になれた人みたいな大恥は御免被りたい。
 よって急がなければならず、馬に乗れる人間のみを選ぶ必要がある。

 他にも距離が離れていると多くの問題が産まれる。
 特に食い物だ。
 それに気づいた私は大量の兵糧を延々と四分の三周運ぶとかどーすんだ。と頭を抱えた。

 だが、ここで頭のおかしいリディアが登場する。
 人選、何処に置いてある兵糧を使うか。他にも色々とある面倒な前準備の計画がなぜか終わっており、後はそのまま動くだけ。という状況だったのだ。

 有能なんて簡単な言葉で片付くものじゃない。もっと恐ろしい歴史に遺る者の片鱗を見たのだと思う。
 これを知った時、私を含め全員の顔が引き攣った。
『なぜ事が起こるはるか前から準備してあるんだ。こいつ頭の中身どうなってんだ?』
 と皆が考えていたのを私は確信している。
 アイラさんも驚いた顔をして、『あ、そんなに早く出発するんだ……』と言ってた。

 私もアルタが死んだ影響をリディアから聞いてたが、リディアに準備をお願いしようとは考えなかった。
 どの程度の事が何時起こるのか分からないのに、七面倒な準備を毎回してたら過労死してしまう。
 しかしリディアにとってはほぼ確定した未来だったのだろう。

 食料についても左周りで移動する途中にある、カメノ州のオラリオ・ケイに金銭だけを渡して兵糧を運んでくれるように話を通してあると来たもんだ。
 お陰で移動中の兵糧は馬に載せられる分だけで済んでおり、私たちの移動速度は更に加速した。
 恐ろしいまでの手回し。見事な仕事だと感心したが何もかもがおかしい。

 此処までの説明をリディアから聞き終わった時、こいつに逆らうのは絶対やめようと改めて思った。
 こんな綿密に手回しするような人間の意見に逆らったら、どんな問題が発生するかわからないからな。
 ま、元から逆らう気なんてサラサラないんですけどね。
 年下の美女に正しい地点まで運んで貰える日々、最高です。

 そして檄文を受け取ってから十日後、私たちは今オラリオ・ケイの居城に居る。
 ここで挨拶をして金銭を渡し、兵糧について改めてお願いするのだ。
 この挨拶もスムーズに終わった。
 オラリオもケイの姓を持つケイ室の血を継ぐ者。
 ケント帝王が苦しんでいるという話を聞き、非常に心を痛めていたのだとか。
 しかし病身故兵を出す余裕が無く、嫡子も病弱。
 せめてケント帝王を助けようとする連合軍の手助けがしたいのだ。と、オラリオ自身の口から話され、とても親切だったとリディアが言っていた。
 ついでに言えば世の風説がこうなってる以上、オラリオは世評を気にする常識人なのでそのように動くしかないのですと。

 何にしても旅は順調そのものである。
 裸馬に直接乗っているため長時間乗ってると上下運動によって膝関節が痛くなるから、歩きを挟まなければいけないのだけど、行軍速度としてはこれ以上は望めまい。
 尚、偉そうに解説している私はお荷物の方だったり。

 流石辺境、遊牧民の近くに住むだけはある。
 文官だろうが私より乗馬が上手い。
 ……暇な時間があれば常に練習してるのだけどなあ……。
 一応身体能力的には、殆どの文官に負けないはずなのだけど……。

 参陣までの移動中に一番苦労したのは、予想される諸侯からの質問への対応をレイブンへ教え込む事だ。
 ラスティルさんと違って私とかかわってないし、当然ではある。
 レイブンとしては私の為になんで其処までしないといけないのか、という思いもあっただろうけど、私に従うと約束したのと、私の分の酒を渡したのもあって頑張ってくれた。
 ほんまこの国酒好きしかいねー……。
 レイブンの酒好きを再確認した私は、酒が入ってる状態のレイブンとラスティルさんに質疑応答練習と、私を『ダイ』、リディアを『リーア』と呼ぶ習慣をつけさせながら移動し続けた。
 そして檄文を受け取ってから三週間後、私たちは反ビビアナ連合軍の集合地点であるヨウキに到着した。


---


 うーん、スッゴイ数の兵が居るねー。
 そしてなんか怪我人も大量に見えるんだけど、もう始まってしまったのか?
 檄文参陣最速理論を作る勢いできたのに、遅刻しちゃった?

「リーアさん怪我人がかなり居ます。何が起こったのでしょうか」

 カルマ領のヘダリア州を出た後は、今までより更に分からない事が多くなってしまった。
 なのでリディアが暇してそうな時は迷わず聞くようにしてる。
 一応聞く前に自分で考えてはいるんだけど、分からない事が多すぎるんねん……。

「まずここのけが人はイルヘルミの兵。そしてあちらをご覧なさい、マリオの兵も怪我をしている。二人の軍だけで一当たりしてきたのでしょう」

「そして此処にいる、のであれば負けてしまったのでしょうね。怪我をしてるイルヘルミ兵は……五百人以上いますか」

「マリオは更に多いようで。何らかの意図があってだと思いますが、説明まで待ってもよろしいでしょう」

 そうすっか。
 此処へは観光に来たのだしそれでいいか。
 情報をいち早く取り入れて陰謀たくましくする気は……暫く無い。

「怪我人を見て焦りましたが、どうやらリーアさんのお陰で遅刻しないですんだみたいですね。旗から見て、マリオ、イルヘルミそれにニイテの旗が有名所かな。スキト家がありませんね。遠すぎて来ないとか? 何にしろ本格的に始まる前に到着出来たようで。有難うございますリーアさん」

「いえ。誰もがする務めを果たしたのみです」

 欠片も自慢げな顔を見せないリディアを、私とラスティルさんが「えっ、マジで言ってんのこいつ?」という顔で見た。
 リディアはこっちを見て「?」という感じですが……。
 私の素人感覚でも、檄文が届いてから此処に到着するまでが三週間というのは異常だ。
 多分正確な知識のある人間だったら発狂するぞ。
 前準備終わってると知った時のグレースの表情には、恐怖に近い何かがあったもん。

 ……ま、リディアについて詳しく考えたらいかんな。
 さーて、マイエネミー真田君は何処かなー……。
 ……あれ? 居なくね? 先日の調査結果で知った旗印、六文銭モドキが見えなくね?
 あの旗印めっちゃ目立つと思うんですが……。
 と、私が目を皿にして探してる間にレイブンは、マリオからの使者に対応してくれていた。
 なんでも軍議はスキト家とサポナ家が到着してから始めるので、それまでは決められた場所に陣営を作って旅の疲れを癒して欲しい。ですと。

 確かに皆疲れてる。そして一番疲れてるのは私だろう。
 裸馬に乗り続けて三週間は、拷問に近かった。
 尻の皮がむけてない自分を褒めてやりたい。
 他の人とは乗馬経験が違いすぎるわ……。

 私たちが到着してから一週間後、ジョイ・サポナが到着した。
 そしてさらに一週間後、マテアス・スキトではなく、息子のメリオ・スキトが到着。
 即日全員が揃ったので、遠方より来たメリオの為に二日休養日を置いてから軍議が開かれるとの通達が来た。
 この間にラスティルさんはジョイの所へ挨拶に行っている。
 あるいは真田とユリアが一緒に来てるかと思ったらしいのだけど、来ていなかったと残念がっていた。

 あっれー?
 真田来ないの?
 絶対来ると思って調べる気満々だったのに。
 あるいはビビアナに付くとか? あー……あり得る? ……あれ? その場合ビビアナが勝っちゃうと凄く困らね?
 ……考えても仕方ないな。情報が確定するまで待とう。

 等とグダグダ考えてるうちに二日が経ち、軍議の合図である太鼓の音が鳴り響いた。
 軍議に参加するのはレイブンと、例の服装で顔を隠した私とリディアである。
 喋るのはレイブンのみ。私とリディアは記録官風味で参加する。

 ちなみにリディアは既に逃走準備済みだ。
 もしもイルヘルミに自分の存在がバレたら、護衛として信頼できる兵十名と一緒に帰るそうだ。
 私も賛成した。イルヘルミにリディアが連れて行かれるのは勘弁願いたい。
 流石に他の陣営の臣下相手にそんな無茶はしない……いや、在り得る。と、思えてしまうのがイルヘルミの怖いところだ。
 会ったのは五年は前になるが、あの肉食系っぷりは忘れようがない。

 さて軍議の行われる大幕舎に行くと銀髪長髪耽美イケメン、多分マリオが一番の上座に、その横にイルヘルミが座っていた。
 そしてマリオの後ろには眉毛が髪で隠れた女性、イルヘルミの後ろにはイルヘルミを長身にして胸が普通になった感じのショートカットな女性が座っている。
 諸侯達もそれぞれ席に着いていく。殆どが女性だ。
 ここに居る男性はマリオを含めても五人と居なかった。

 全部で数十名が集まった会議となったけど、覚えないといけない人数はそんなに多くない。
 リディア曰く、現段階で伯爵くらいの領地を持っていないと話にならないんだってさ。
 マリオとビビアナが周辺を潰しまわってるから、潰されるか配下になるのを待つのみだと。
 よって注目すべき諸侯は、ビビアナ、マリオ、イルヘルミ、スキト、サポナ、トーク、かなり無理やり入れてここに居ないオラリオ・ケイくらい。
 私は真田とニイテにも注目しているがね。

 さて、あの戦場なのにやたら豪華な恰好をしてる奴がマリオ・ウェリアか。
 うーん……イケメンだからってだけじゃなく、純粋に面倒くさい奴オーラがムンムンしてる。
 服装もウルトラ金の掛かる紫色をベースにしてあり、加えてレースと金糸銀糸がいっぱい付いててお金持ちアッピルが激しいっす。
 うぜぇ。

 あ、でも隣のイルヘルミはある意味もっとすごいわ。
 こいつ真田デザインをパクってやがる。
 黒いズボンに、黒い胸元がぱっくり空いてるアカデミー賞ドレス風味の服を着てなさる。
 金糸銀糸がマリオに比べれば控えめに付いててカッコイイっすね。
 ちょっと横向いてくれないかなー。明らかに巨大質量の物体が横から見えるんですけどー。
 相変わらず美人で、派手で、チビで、肉食系だとすぐわかるお人だ。

 他の人達は皆ズボンと鎧姿なだけに、この二人の目立ち方が半端無いっす。
 と、始まるな。
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