挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
戦乱の帝国と、我が謀略~史上最強の国が出来るまで~ 作者:温泉文庫
121/146

真田の情報入手

 暫くの日が経ち、草原族との調整も一段落した今日、改めて今後について話し合おうとしている。

 まずはグレースによる周辺情勢からだ。
 私にとっては特に珍しい話はない。
 西北端の領主スキト家は異民族と戦い、内乱を制圧しと忙しそうだ。
 国境線はそうなるよね。今この国の状態が悪いのは皆知ってるし。

 ビビアナはランドで帝王ケント相手に上手く行っておらず、一方イルヘルミは着実に領地を増やし、マリオも……テリカ・ニイテを使ったりして領地を増やしている。
 テリカは親が死んで二年経っていないのに、もう有能な将軍との評判を得ている。
 ニイテ家恐ろしや……。
 だがここまでは前座。
 問題は次だ。

「最後にラスティルが高く評価していた真田男爵についてよ。たかが男爵を調べるなんてと思ったけど、この男凄いわ。まずリバーシとかいう新しい遊戯を作って金と名を売っている。次に近隣で評判の悪かった男爵を二人攻め落としてるわね。庶人から男爵になってまだ一年未満。しかも二十代前半。ラスティル、貴方の目は確かだったわ」

「そうであろう? その程度は大した苦労も無かったであろうな。彼の下に居るセキメイ、フェニガという優秀な軍師に加え、ロクサーネにアシュレイ。この二人は拙者と互角の猛将だ。真田殿も将軍としてガーレ殿と互角と言ってよい」

「男爵が其処までの人材を持ってるの? 世の中どうなってるのかしら。えっと、で統治の仕方だけど善政を敷いてる。よく分からないけど、ユリアという人間と二人で君主みたいな状態とあるわ。二人とも民に優しく、人徳があり、見目麗しいので大した人気者みたい。ただこの真田は色々奇妙な男ね。街を綺麗にしようとするのはいいのだけど、糞尿を一か所に集めて土に埋めた結果ハエが多くなって問題になったり、特別な畑を作って一年で四つの作物を作ろうとした……? らしい。当然失敗してる。そんな風に色々奇妙な事を試してるわ。農民の為に道具まで作ったんですって。これよ」

「これは……なんだ? 尖った鉄の棒? が逆さに何本も立てられていて……どう使うのだグレース?」

「脱穀に使う道具なんだけど、凄い効率だと報告して来た者が絶賛してるの。我が領内でも試してみるつもり。何にしても真田が凄い奴なのは間違いないわね。ちょっと笑っちゃったのが、本人が違う世界から来た人間と言ってるそうなのよ。これは自分が特別な人間だと言って箔を付けようとしてるのだと思うけど……違う世界は無いわねぇ。魔術師と言った方がまだいいと思わない?」

「某もそう思う。だが……大した人物だ。ガーレと同程度の武がありながら、その若さで内政に明るく、人望を集め、新しい道具を作るとは……天下の鬼才と言えよう」

「以前ラスティル殿から聞いてはいたが、それ程に民の信望を集める人物でしたか。その真田を捨ててダンの配下になるとは、ラスティル殿も実に酔狂な方だ」

「な、なんですと? 本当っスか? 何処まで変な人っスか……。どう聞いてもこの男と真逆の人間っスよ。……真逆、というか油虫とアゲハ蝶? 蛇と龍……?」

「フィオの言葉が全く言い過ぎに思えないわね……。この報告書の何処を突っついても、全てにおいて真田って奴の方が主として上じゃないかしら。ラスティルだったら侯爵領の俸禄に釣られた訳でもあるまいし」

「はっはっはっ。皆の言はごもっとも至極。しかしご主君とは昔約束をしてしまってなぁ。それを守っていたらこうなってしまったのだ。正直なところ下級官吏相手であろうとも義理を守ってしまった我が身の義理堅さが憎くなる時もある。特に今のように過去、いや、恐らくは今でも拙者を待っている男がどれ程素晴らしいか教えられた時には。うむ……どうした物だろうかなダン。……ダン? どうした?」

「えっ……えーと……。はい。ラスティルさんは本当私には勿体ない方です。こうして共に居て下さるのは夢のような話でしょう。何もかもが足りてないのは承知していますが、出来ましたら見捨てないで頂ければ、と」

「う、うむ……すまんダン、ふざけ過ぎた。……しかし、どうかしたのか? 何か考え事をしていたように見えたが」

「いやぁ、先程見せられた道具がどれ程効果があるのだろうか、と考えていました。グレースさんが採用すると決めたのですから、相当なんでしょうね」

「正直な所分からないわ。でも試すのに大した費用は掛からないし、せっかく図まで送って来たのだから試さないと細作だってやる気が減っちゃうから。ま、当たれば儲けものね」

「あ、なるほど……流石グレースさんですね」

 あー、くそ。考えの邪魔をされた……。
 ラスティルさん、今は貴方に構ってる余裕は無いんだよ。
 しかも真田について考えてる時に、皆の注目を浴びるなんて最悪だ。
 ……元々皆が居る前で真田について考える方が悪いってこったのだろうけど……。

 しかし、千歯扱きに、たい肥作り、最後のは多分だがノーフォーク農業を試していると聞いては……。
 農作業の効率化、食料生産の増大に意欲を燃やしてるわけだ。
 今は失敗してるようだけど、何時かは成功するだろう。
 少なくともムラサキウマゴヤシはあったし根粒菌も見えた。
 私も試そうかと思った時はあったので、少し調べたのだ。

 動機は名誉欲か? それともあちこちに居る飢えた人々を見て何とかしたいとでも? 或いは単純に力を欲っして?
 どうでもいいか。この国の誰にも不可能な速度で力を手に入れるという結果は変わらない。

 そうだろうとは思っていたさ。
 リバーシを知っている年代であれば、この国の人間よりも優れた知識の切っ掛けを確実に持っている。
 優れたものを使わない人間なんて、滅多にいるまい。
 決まったな。

 真田総一郎。お前は私の最大の敵だ。
 誰よりも優先して、手段を選ばずに殺すべき最も危険な敵。
 お前の名前を聞いた時沸いた殺意はやはり当然の物だった。
 これまで私という異邦人を隠しつづけて来て本当によかった。
 隠れ続け、動きを調べ続け、出来る限りお前を油断させ、そして殺してやる。

 お前がやっている事の価値を知れば、今この国にいる人間は誰もがお前を史上最高の偉人と言うのかもしれない。
 私だけしかお前を嫌わない可能性も高い。
 少なくとも、お前の配下は皆心からお前に感謝し、敬い、愛するだろう。
 いや、そうならなければ理不尽極まる話だ。
 だからこそ私にとっては最も厄介な最大の敵になる。
 全ての人間が、真田の価値を知れば殺さず手元に置きたいと考えるだろうからな。

 出来ればどんな手を使ってでも今すぐに殺したい。
 だが、奴の居る所はヘイン。間にはビビアナ領がある。
 どうやっても手が届かない。

 クソがッ!
 こうなると知っていれば、ビビアナ・ウェリアの元に行ったのに!
 今は大した脅威ではない。
 子爵にもならない地力では、幾ら増やそうがたかが知れている。
 それに初年度が失敗した所を見るに、専門家では無いのだろう。
 ラスティルさんから聞いたのが事実であれば、こちらに来た時は十五歳程度。
 専門家じゃないのは当然だな。
 ……いや、違う可能性が高いな。
 私が中学生の時の知識よりも、明らかに真田の知識量は多い。
 行動指針には若さを感じるが……二十一世紀の知識量が中学生程度と考え無い方がよかろう。

 そして知識を使うこいつの元手が大きくなり、試行錯誤する時間を与えれば……。
 しかも真田が孔明とホウ統だと見込んだ軍師が居る。
 真田の知識があやふやでも、実現に持って行けそうな人間が!

 ヤバイ、いやそんな単純な表現が出来る奴じゃない。
 下手をすれば計画も、何もかもが覆される。
 これが怖かったから真田についてずっと知りたかったんだ。
 そして出て来た結果は、一番あり得ると予想してた通りであり最悪の物。
 身を焦がすような焦燥感を感じる……今すぐにでも軍を出すか、アイラさん辺りを使って何とか暗殺出来ないか?

 ……不可能だ。
 どう考えても可能性が低すぎる。
 何よりも私が真田に注意を向けていると知られるのは、絶対に駄目だ。
 だがビビアナの元に居れば……真田のもっと近くで今程度の力があれば!

 クソか私は……。何という馬鹿な考えだろうか。
 在り得ない。
 現状は予想の上限を超えた良い物。
 同じ状態をビビアナの下で作れた可能性は皆無なのに。
 この環境に文句を言うなんて、勘違いもはなはだしい。
 少しは足るのを知れよノータリンめ。

 落ち着け……冷静になれ。
 どんな状況でも客観的に物を見て冷静に判断出来なければ、私は勝負自体が出来ない程度の人間なんだ。

「あ、ある意味一番大事な物を忘れてたわ。皆……これよ」

 ああ? まだあんのかあのクソ野郎が。
 ……お? 待てよ……あのグレースが持っている布は……もしや。

「サナダが新しく売っている物で、女性の胸に付ける下着らしいわ……。一人一人職人が作らないといけないけど、サラシを巻くよりもずっと楽なんですって。武将の場合はこっちね。動き易いように作ってあるの」

「ああ、サナダ殿が昔こんな感じの物について恥ずかしがりながら言っていたが……そうか。売りに出すのか。ふむ……なるほど……これは、良いかもしれぬな……」

「確かに戦う時はサラシをきつく巻かねばならずワシも辛かった。試してみなければ分からぬとしても……これは胸の形に沿っていて幾らかは楽そうだな。職人の技術次第であろうが。うむ早速皆で試してみようぞ」

「使う布は絹に致しましょう。肌に直接付けるのです。肌触りがよい物がよいはず」

「そうっスね。皆様明日の昼に集合して欲しいっス。形を取らないといけないらしいので、明日の昼にレスター一の服職人に来て貰うっスから。これから小職がきちんと話を通しておくっス」

 ……何を作ったのかと思ったら。

 ブラジャーかーい。 かーい。 ヵーィ……。

 …………。
 よくやった真田。
 初めてお前が居て良かったと思ったぞ。
 正直私も迷ってたのだ。
 ラスティルさんやアイラさんがサラシをギュウギュウに巻いてるのを見て、ブラジャーという発想を与えるかどうかを。
 やはり日本人男性同士、気になる点は似通うんだな……いきなり親近感が沸いてしまった。

 しかも通常型に加えて、スポーツブラ型までとは……お前出来る奴だぜ……。
 女性相手にこれを考えて渡し、付けさせたのか? イケメンだから許されたのか?
 お前スゲーよ。この点に関してはマジ尊敬の感情しか産まれてこない。
 まぁ、それでも殺すけどね。

「この下着、えーと、ぶらじゃーとサナダが名付けた物だけでなく、服も変わった物があるとは明日が楽しみであるな。さて、では今後の話に移ろう。皆、我々はこれからどうするべきだと思う?」

「周りが動いて無い以上、内政に専念すべき時かと愚考致します。これから草原族が内部に入って来て、不安定な時期になるというのも御座います。(わたくし)個人としても、ここで一年近くを過ごし内政に関して幾つか考えが産まれておりまして、それを試したい」

「間違いないわね。リディアの考えとやらを試してみたり、領内を良くするのを優先させましょう。……で、ダンは何かあるのかしら?」

 お、おお、私かい。
 ブラジャーショックでボケっとしてたわ。
 しかし自分から確認を取ってくれるとは流石グレース。
 感心するくらい真面目だね。
 訳分からん余所者は放置が基本だろうにさ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ