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戦乱の帝国と、我が謀略~史上最強の国が出来るまで~ 作者:温泉文庫
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宴会での話を聞いて2

 そして落ち着いて考えてみれば、大した問題じゃないのでは?
 アイラさんはリディアに止められて言うのを止めた。
 今後とも一緒に住んでいるのだから、彼女の様子がおかしくなれば分かる。
 ……もしも、リディアが二心を持っていたとしてもアイラさんさえ敵に回さなければ大体は大丈夫。
 後はカルマ達の様子をきちんと見ていればよい。
 そして、このアイラさん頼りの危ない状態も、あと少しで大いに改善されるはず。

 私の考えでは、そうなるしかない。
 カルマ達が私の想像を超えた愚か者か、私が巨大な何かを見落としていない限り……。
 いや、これは今考えても意味の無い内容だ。

 そして、普通に考えれば、ごく当然の成り行きとしては。
 つまり、リディアが二心を持っておらず、酒故の失言だったのであれば……。

「バルカさん、お幾つになられましたっけ?」

「……もう少しで十八となります」

 ……はあああぁぁぁ……。
 パーティーに行った十八歳の女の子が、楽しく酒を飲んで、少し私の想定外の事を言っただけで、私はブチ切れたとなってしまうのか。
 少し浮かれて愚かな行動を取ってしまうくらい、ごく当然。私なんて思い出すだけで身を捩るような記憶がある。

 酷すぎる。

 リディアが飲み過ぎたのが本当かどうか疑問ではあるが、それも大した問題ではない。
 少なくとも、外から見たらそうなのだ。
 怒り? 自分の愚かさを自覚してとうに失せたわい。
 それ所か泣きたくなってきた……。
 この始末、どうしたものか。
 まずは……謝ろう。

「冷静に考えると、怒る理由がありませんでした……。バルカさん、アイラさん、この程度の事で怒りをぶつけてしまい、心から申し訳なく思います。どうか、お許し頂けないでしょうか」

 私は椅子から立ち上がり、片膝を付いて謝罪の姿勢を取った。
 もう少しで土下座になる所だった……。

 最大の問題は小型犬の分際で虎へ吠え掛かってしまった事だ。
 人生最大の愚行かもしれない。
 どれだけ気を緩ませていたんだよ。
 彼女達が、私を主君だなんて言っただけで油断したのか?
 言語に絶するアホなのか私は。

「いや、拙者が言ったのは落ち着けであって、そのように小さくなれではないのだが……。頭を上げろダン。リディアも困っているぞ……多分だが。おいリディア、アイラ、何か言え」

「ええ。我が君、(わたくし)は貴方がどれだけ自分について知られたくないのか存じておりました。だというのに酒が過ぎてしまい、御意に反してしまったのです。此処には許しを願う為に参りましたのに、その様にされては困ります。どうかお立ちください」

「僕も、もう少しで……うう……ダンその格好はやめてよ……怖いよ……」

 ゆっくり顔を上げると、アイラさんは泣きそうに見えた。
 ……なんでだ。
 一応リディアの方も顔を見れば……不変である。
 当然だ。
 あー、いや、困ってるように見える……かもしれない?
 少なくとも今の私より困っているようには見えないが。
 今リディアが言った言葉の半分でも本音なら重畳至極なんだがねぇ……。
 ……ラスティルさんははっきりと困ってるな。
 貴方にはしょっちゅう気苦労を掛けてしまってすまん。

「いいえ。どう考えても私が愚かでした。しかも、アイラさんがカルマさん達に何か言うのを止めて下さったのですよね? それに対する感謝もせず……有難うございますバルカさん」

「それは……あちらと親しく、人柄が知られているアイラ殿が何かを言えば受け取りかたが違うと考えましたので」

 全くだ。
 アイラさんが私を怖いなんて言っていたら、あちら側全員の警戒心が増していたのは間違い無い。
 そうなればどんな面倒が起こった事やら。

「しかし……先程も仰ってましたが、アイラさんまで私を怖いなんて思っていたのですか? そのような勘違いをしているのはバルカさんだけだと思っていました」

「……ダンは、怖い。僕が出会った人の中で一番怖いよ」

 はぁ? なぜそう思う。
 近頃は大人になったのか、内心が尻尾に現れたりはしなくなってたのに今は巻いている。
 ……もしかして本当に私を怖がっているのか?
 リディアもそうだが、アイラさんが恐れる理由なんて……いや……待てよ。
 オウランさんの所へ行ってもらったし、一緒に住んでいる。
 気付かない内に何か漏らしたか?
 ……この場でアイラさんに聞くのは不味そうだ。

「ラスティルさん、落ち着かせて下さって助かりました。しかし、どうして特に何も仰ってないのにつれて来たのですかバルカさん」

「罪をおかした我等以外の言葉をお聞きになりたいだろうと思いましたので」

「そう、ですか。それはご迷惑をお掛けしましたラスティルさん。申し訳ありません」

「いや、来て良かったと思っている。まさかお主が逆上するとは……。まぁ、拙者が何か言わずとも冷静になりはしただろうが」

「情けないところを見せてしまいましたね。せめて冷静さだけは失わない様にしようと思って来ましたのに」

「ま、考えようによっては面白い所が見れたと言える。そういう意味でも声を掛けてくれたリディアに感謝したいくらいだ」

「……少々意地が悪すぎませんか?」

「そうであっても感謝してくれるのだろう? それに見直しもしたぞ。あそこまで逆上しておいて、すぐさま冷静になって謝罪出来るとは大したものだ。それにこの二人が此処まで心服しているとは。昨夜リディアがダンを恐ろしいと言った時には理解しかねたが、拙者が分かってないだけなのかもしれぬ」

 これは、よろしくない。
 真田と繋がりのある人物が私を高く評価するなんて。
 配下になってもらった以上、色々知られるのは仕方ないとしても……。
 なんとかしてもっと軽く見てくれなければ困る。

「この二人に怒りをぶつけるのがどれ程身の程知らずか、ラスティルさんのお陰で思い出せただけです。見限られて当然の愚行をしてしまいました」

「何故ここで卑屈になるのか……。拙者は見直したと言っておるのに。どうも最初に会った時の印象が強いようだ。これから少しずつでも改めよう」

 ……ヌボァ。これは圧倒的不利。撤退に入らなければ。

「ラスティルさん、見直しておられる内容は誤解に満ち満ちてますよ。この二人も何か誤解なさっておられますし。しかしこの話、聞いたのが昨日でなくて良かった。皆さまの宴の余韻を台無しにするところでした。御三方、昨日は楽しかったですか?」

「……はい。その為に酒が過ぎました」

「うん。久しぶりに皆といっぱい話せたし楽しかった」

「酒も料理も逸品揃いでな。皆中々に面白い者達であったし非常に楽しいひと時であった。望むのならばどんな会話がされたか話してもよいぞ?」

 お断りざんす。
 私の話題が出たって事は、細かく聞いたら絶対悲しくなる内容っしょ。
 それに悪口を自由に言っていいですよと言ったのに、後で内容を聞いてどーすんねんと。

「結構です。これ以上情けない真似をさせようとしないでくださいラスティルさん。楽しい宴だったのなら良かった。またあるといいですね」

「呼ばれれば又行けと仰る?」

「はい。是非参加してきてください。バルカさん、アイラさん、身の程知らずな振る舞いをしてしまい、申し訳ありません。不快だったとは思いますが、反省し、今後先程のような真似をしないように努力するつもりである事を知って頂ければ嬉しく思います」

「謝罪に来たのは我々で御座います。……我等は臣下。そのようにご自分を下に置く必要はありませぬ」

「そう言われましても、私は御三方と比べて全てに置いて劣っています。それに臣下であって貰うなら、何かを与えなければならないでしょう。私でないと渡せない物を差し上げるつもりではありますが、皆さんが価値のある物だと感じるかは自信がありません。他所に行けば今より多くの富や名誉が手に入るのは間違いない以上…」

 カルマの配下として、三人とも俸給その他を受け取っているので不当に低い扱いを受けてる訳では無い。
 ……つまり、実利面から考えて三人が私の話に耳を傾ける意味は大してないんだよね。実は。
 私が三人に与えたのは……天ぷらと歯磨きの知識くらいか。
 先ほどの戦で、私がどれだけ大事だったかを知ってるのはリディアだけだし。
 うむ。微妙。せめて真田がどんな奴か分かるまでは、見捨てないで欲しいのぅ。

 真田……そろそろグレースが情報を仕入れてくれる頃だ。
 どの程度の奴なのか……。
 ああ、真田だけではなく、他にも居るかもしれないのだった。
 それらを確かめてる間、この私の下でも我慢できるかもしれないと思った三人が守ってくれれば有り難いのだけど。
「ダン」
 ついさっき自分でその我慢を叩き壊そうとしたよな私。
 し、信じられねぇ……。
 タイムマシンはどっかにねーのか。

「ダンよ」

「あ、ラスティルさん、どうかしました?」

「答えて欲しい。我等は皆お主の臣下になると言ったはず。しかし先程から聞いていると、我々が簡単に裏切ると思っているように聞こえた。ダンは我等の人品がその程度だと思っているのか?」

 ぬおぅ?
 ……あー……。
 ぶっちゃけ過ぎたかね。
 しかし……どういったものか。

「まず、私は皆さんが人品立派な信頼出来る方だと思ったからこそ、臣下になって欲しいと言えたのです。それと裏切りという言葉を使われましたが、働きに対して相応しい物を与えない主君を見限るのは当然でしょう?」

 ただしリディアは別だ。
 こいつを人品だの、信頼だのといった笑える単語で測るのは正に愚考。
 リディア・バルカが行動するとき、常識良識に縛られず最高効率の行動を発見するに決まっている。
 そして必ずやり遂げるに違いない。
 何と言っても貴族の身でありながら、庶人である私に膝をおりやがったのだこいつは。

 リディアにはこれ以上無い程助けてもらっているけども、彼女が私へ本当の忠義心を持っていると考える日は来ないだろう。
 案は出せても助け無しには何も出来ない私に、実行力の塊である彼女が不満を感じるようになっても何がおかしい?
 ま、ラスティルさんとアイラさんも大小の差はあれ当て嵌まる話なんだがね。
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