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戦乱の帝国と、我が謀略~史上最強の国が出来るまで~ 作者:温泉文庫
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カルマがランドに赴いた影響24

「ダン様、何点か確認させて頂いてもよろしいでしょうか」

「はい。どうぞ仰ってください」

「今後ダン様の仰った内容は全て(わたくし)がお教えした物。そして貴方様がどのような方かは誰に対しても話してはならない。そういう事でよいのですね?」

「……はい。明日話し合うオレステとウバルトの対処は話し合ったとおりに貴方が説明をしてください。
 実は私も確認したい事があります。今日、カルマが全兵の前で私とバルカさんに指揮をさせると言えば良いのか? と言いましたよね。あれは万が一の場合、私とバルカさんを代表者、つまり身代わりにして自分たちの安全を計ろうと考えていたように思ったのですが……どう思われました?」

「ご賢明であらせられます。何といっても物分かりが突然良くなりました。駄目で当然、上手く行けば儲け物とすれば良い手でありましたし、一般的に決定権を持とうと考えれば兵の指揮権が必要。一顧だにされず驚いておりましたし十中八九そうかと。……あのような提案をした理由としては、ダン様の考えをカルマは把握しかねたのでしょう」

「よかった。拒否して正解でしたね。次の質問です。これは今後のため正直に答えて頂きたいのですが、バルカさんは現状でご自分の名を広め、また高めるのを望んでおられますか?」

「いえ……御意に沿わないのでしたらお許しを。出来ましたら我が名は秘しとうございます。カルマの今後は未だ不透明。勝った後どのような行動に出るかも分かりません。この状態でカルマの臣下として名を知られる不利はダン様ならご理解頂けるかと」

「よく分かります。だからこそ聞いたのですし。でしたらこの戦いに勝てたならば、世間に対しては全てグレースさんの考えだったとしてしまいましょう。
 必要が産まれるか、バルカさんが望むまでは出来るだけ貴方とアイラさんの名前を出さないようにし、トーク姉妹の名前のみが広がるようにしませんか?」

「……(わたくし)を其処までお気遣い頂けるとは意外で御座います」

「バルカさん、この通り無能無才の身ですが。いえ、だからこそ私は貴方に感謝し、貴方について考えています。そして幸せになって欲しいとも望んでいる。それは信じて欲しいですね」

 但し不都合が無ければ、だ。
 今までは大変頼りになった。
 これからも頼りになるだろう。
 だが、最後まで私に従ってくれるかどうか分からない。
 人は少し意思疎通を失敗しただけで、恨んだりする物。
 これから来る時代を考えれば、小さな恨みが殺し合いになる事もあり得る。

「ダン様のお言葉有り難く頂戴致します」

「所で、何故さっきから様付けを? 非常に怖い物を感じているのですが」

「今はそうすべき時と感じたので。ご安心を。何も致しません」

……あ、はい。
勿論これ以上文句を付けて、不興を買うような真似はしませんとも。

えーと、話、聞きたい事……何か……ああ、あった。

「突然思い至ったのですが、バルカさんは私以外に誰か他人を直接詮索した事はありますか?」

「いいえ。……危険ですので致しません」
 必要があれば細作等を使い、本人に知られないようにするのが常道。と淡々と仰っておられます。

 そうだよね。使える手段の多さが私とはダンチだからね。

「もしかして、バルカさんは昔から私にかなり気を許して下さっていたのでしょうか?  色々と詮索されたように思います」

「言われてみれば……確かに(わたくし)としては珍しい行動です。止められていなければ、今でも探っていたでしょう。ダン様が余りに奇特というのもありますが……」

 そりゃ私より特異な人間は今の所この国に……いや、地球上に後一人しか存在しないんじゃないかな。
 やっぱりリディアには色々と頼って自分を出し過ぎた。
 あまりにも強力なコネだったから……しかし、彼女が助けてくれたからこそ今の状態がある。
 多くを望み過ぎだな。
 何かを手に入れればもっと、もっともっともっともっと、か。
 私も所詮は二十世紀産まれというこったかね。
 ヘドが出そうだ。

「ま、私が貴方へ危害を与えようがない人間だからというのもあるんじゃないでしょうか? それにしてもやはり分かりません。どうして貴方程の方が私の配下になろうだなんて? 貴方は貴族。そして本当に有能で立派な方にお育ちになりました。誰であろうがもろ手を挙げて歓迎するでしょう。そんな人材が庶人で、全ての能力において劣る者の配下になど。誰もが言語道断……いえ、一笑に付すはずです」

 この有能さ、慎重さ、忍耐力、どんな時でも感情を表に出さない自己制御能力。
 これ以上何を付け加えたら良いのか思いつかない程だ。
 私が思い描く理想像に比べれば温い所はあるが、若いのだから当然だろう。
 そんな人が私の配下にと自分から来るなんて奇奇怪怪。

 実のところ、私はカルマやグレースよりも勝っている部分があると感じてはいる。
 受けた教育が全く違うし、知ってる歴史と国の動きの情報量が違うからだ。
 だが、そんな所は極力出していないはず。
 それに少し勝ってる所があったとしても、総合すれば私はカルマにも著しく劣っている。
 能力もだし、勤勉さ等として現れている覇気、野望、そんな物が段違いだろう。
 それなのに……明らかにあっという間にカルマさえ超えるであろう彼女は跪いた。
 ……何度考えても寒気がする。

「過分なご評価です我が君。そうですね……ダン様は(わたくし)が誰かの配下になった場合どうなると思われますか? ……いや、失礼。意味の無い質問でした。
 まず間違いなく、私の能力を危険視する。下手をすれば命を狙われるほどに。同僚も同じように私を危険視し、何とか追い落とそうとしてくるでしょう」

 十七歳の小娘がこんな事を言えば、普通は鼻で笑う。
 自意識過剰だと。しかし……コイツの場合……。

「普通ならば自分を過大評価し過ぎだと言う所ですが……どうしてそう思ったのですか?」

「残念ながら体験済みなのです。宮廷で働いていた時に誰もがそのような態度を取って来たので。自分より若い人間が、何をしても自分より優秀なのはこれ以上無い程に人の神経を逆撫ですると知りました。
 加えて(わたくし)の考えは非常に読み難いらしく、それが更に不信感を持たれる要因になっている様子。いやはや、軍師となるべく努力していた結果が主君に不信感を持たれる事に繋がりそうだとは。人生は難しい」

 ……聞いてるだけで涙が込み上げてくる話だコレ。
 常に功績を上げられると、主君はやがて臣下が自分よりリディアの下に付きたいと思っているんじゃないか? といった疑惑を感じてしまうかもしれん。
 その方が上手く行くと自覚してしまえば、リディアを殺したい程恐れるかな?
 しかし、それをこの年齢で予想しているのは流石の一言。
 大したものだ本当に。

「それは又……若いのに苦労されたんですねぇ……。心より同情申し上げます。とは言え、それだと私も同じではありませんか? 小人(しょうじん)と違う行動を取る自信はありません」

「まず(わたくし)は貴方様を小人とは考えておりません。そして一つ、貴方様は(わたくし)と似たような考え方をなさること。二つ、これまで何回も貴方様を詮索致しましたが、結局は許して下さった。誰よりも詮索を嫌うダン様がです。忍耐力があり、貴方様に不利益な行動をしない限り疑いだけでは決して危害を加えない方と見ました。これら全てが(わたくし)にとっては貴重な資質なのです」

「つまり、今まで私を散々試し、調べたと?」

「はい。付け加えますれば、つい先日ご相談下さった時。(わたくし)が貴方様の意見と違う意見を言った際に欠片も妬心を出されなかった。あの時まで迷っておりました。お許しください我が君。貴方様と同じく(わたくし)も慎重に慎重を重ねたい性質(たち)なのです」

 はぁ……流石だな。
 不快感は感じない。むしろそうでなくては困る。
 私はリディアの前に立ち、両手を使ってリディアの頬で遊んだ。

「私としては貴方が慎重なのは有り難い話です。それに正直に言いましたからこれで許してあげましょう」

 ……偉そう過ぎたかもしれない。
 それと、美女の頬っぺたをグニグニして嬉しかったのが伝わってないと良いのだが。
 正直に言うと、欲望に負けました。
 反省しております。

「感謝いたします。必ずやこのご恩に報います」

「事実として、私に貴方を処罰する力は無いのですから恩なんてありませんよ。バルカさんが主君扱いして下さるので調子に乗ってしまいました。すみません。それで、今仰ったのだけが私の配下になりたい理由ですか?」

「まだございます。貴方様の下が生き残るために最も良い場所に思えたのと、何よりも貴方様が恐ろしいからです。あの時、(わたくし)がイルヘルミに命を狙われるかもと仰った時からダン様への恐れを感じておりました。貴方様は誰よりも敵に回したくないお方です」

「……バルカさん、それは誤解です。この国に住む誰に聞いても、貴方が私を恐れる理由は無いと言いますよ。私を過大に評価し過ぎではありませんか? しかし、気を許しながらも恐ろしいとは……矛盾してますねぇ」

「己を完全に制御するのは至難である以上致し方御座いません。ダン様程見通せない人物への感情が、複雑になるのも至極当然では。
 何にしても(わたくし)は貴方様に従います。まずは貴方様を表に出さない事で忠誠を証明致しましょう」

「それは、有り難いですね。頼りにしていますバルカさん」

 これで、終わりかな。
 かなり緊張した……。
物見櫓様より、今度はアイラ絵を頂戴致しました。
挿絵(By みてみん)
以下のように仰せです。
今回は以前ロト太郎様が描いたものを参考にアイラを描かせていただきました。
鎧のデザイン考えながら描くのが楽しかったですね。
ぶっちゃえそこまで凝ったものではありませんし、少し西洋風を意識してパパパっと描いて適当に色付けて終わり!な感じですけどね。(大体40分くらい)
実はみんな中華風の鎧設定とかだったらすいません。
本当は装飾とか稼動部のパーツとか鎧の光沢など凝ったもの描きたかったのですが、世界観的にそこまで高性能な装備が存在するのか疑問だったので無難にアイアンプレート的なものにした。
しかし、描いてみるとやはり防御力が非常に心配な外見ですよね。女騎士系が出るほとんどの作品にも言えることですけど、機動力確保とか魔力や気などの不思議防御があるから大丈夫と考えても前線に露出度高い格好で出陣とか現実的に考えてそういう趣味でもない限り精神的にキツそう。ダンはおそらく規律や個人予算が許す限り、移動困難にならない程度に全身フル装備で戦場に出ていそうですね。兜は必需品。


このアイラが装備している物。つまり『絶対領域』この名を初めて聞いた時、世には天才が居ると心で知りました。
はー、山ほど見て来たのに、どうして尚此処まで有り難い物を見たと思うのか。
その上支援絵として私に送られて来たかと思うと、有り難さで富士山が噴火しますね。
……さて、獣人は全て狼のつもりだったのですが、アイラはネコ科で決定してしまった昨今です。
……猫で良いか。可愛いし。
装備品ですが、中華系のつもりは全くありません。西洋鎧も好きですから。
作中の文化レベルは一応1800年程前のつもりなんですよねぇ。そうなると色々カッチョイイのが無くなって地味になっちゃうんですけど……。まぁ、装備品の見た目は……気にしなくてええやーろ? と申し上げます。
それと、女性の装備は 薄 着 だし、頭部は基本出してます。何故なら魔力によって頭部を覆ってる髪の毛が頭を覆う程度は防具並みに強固になるからです。髪は女の命なんです。防具としての意味で。髪が魔力を通しやすいというのは常識、英語で言うとコムォンスェンスだと思います。
ロト太郎様のラスティルが頭部に何もつけてなかったのも、そういう理由です。
絶対領域に至っては、Aちゃらフィールドが出ててまず怪我をしません。
体全体も、男性よりも多い魔力によってかなりの防御力が出るので、動きの邪魔にならない程度の防具を皆好みます。
例えばビキニアーマー…………流石に無理が……でも、鳥山御大が……あの人は絶対罪人……ビキニアーマーは酷い罪の産物……でも……大好きだし……。
……あると思えばある。無いと思えば無い。イルヘルミ辺りが着てる可能性も……ある。という事にしておこう!
設定はこんな感じに違いない。いや、こうと決まった!
でも、ダンが常識に縛られてアイラとラスティルが気に入る兜を必死で探すのも間違いない!
それで納得できないのなら、味方の士気高揚の為に美しいお顔を皆出してるんですだよ。□ードス島理論だ。良いですね?

物見櫓様、プリティーキュートなアイラを有難うございます。
こんなに複雑な表情で臆病さが凄いと言われたら、ダンは裏の意味を悩んで三日は睡眠不足です。
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