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カルマがランドに赴いた影響17
「話を戻しますと、トーク様へ何か指示がありますか? 私は思いつきません」
「考えはありますが、我が君の方針次第です。誰を最大の敵とお考えか?」
「うんむ……そうですね、イルヘルミとビビアナ。主君としてはどちらが上でしょうか?」
「イルヘルミです。私は彼女より有能なケイの人物は居ないと考えています。しかし、それでも……」
「ビビアナには基本勝てない、と?」
「ええ。ビビアナは最も富んでいる二州を我が物としていて、既に公爵さえ超えております。やっと侯爵程度の地力に指先をかけているイルヘルミでは余りに厳しい」
同意見か。良かった。
「まずはビビアナがトーク様に抱いている憎しみを減らしたいですね。それに……イルヘルミの野望はどの程度でしょうか」
「……おお。変わらず見る所が素晴らしい。彼女の野心、行動力、文武は図抜けております。彼女が強くなれば、ケイ全土を我が物にしようとする公算は高い。これ程賢明では私の居る意味がありませぬな」
……臣下になったと言いつつ、プレッシャーを掛けないで欲しい。
或いは私の被害妄想か?
出来る限り無能だと思われたいのだが、上手くいかないな。
誰であろうが野望がどの程度かは気にするべきだ。と、思ったから聞いたのに。
しかもアイラの前で話すのは現状だと情報の拡散に繋がるかもしれない。
勘弁してちょーだいな。
「バルカさん……。分からないから聞いた私と、それを既にご存じで教えて下さった貴方、比べ物になりません。私を煽てて試すのは止めてください。アイラさんが勘違いしたら困ります。それに試すのは止めて下さると約束して下さいましたのに……いえ、私との約束を守る必要は確かにありませんが」
「……もしや、不興を買いましたか」
「いいえ。でも、敵となりそうな人が攻めて来そうかどうか聞いただけでそのように言われては困ってしまいます」
不興なんて物じゃない。
不安が増えただけだよ。
まぁ、不快感を与えて来る人よりも不安な人の方が困るんだわな。
「……どうかお許しを。余計な物言いを致しました」
「許すも許さないも……私はお願いしか出来ません。とにかくビビアナと将来的には手を組みたいと思います。そうすればイルヘルミも怖くありませんから。何か手はありませんかね?」
更に言えば、イルヘルミの邪魔をしたい。
会った印象、あれからの行動、一度見た軍。全てにおいて強烈な意思と有能さを感じる。
それに加えて街の噂から推測するに彼女は改革者だ。
既に最強であるが故に改革する気の薄いビビアナと違って、イルヘルミは力を持てば持つほど危険が大きくなる。
彼女には出来るだけ苦労して頂きたい。
何だったら苦労しすぎて死んでくれても良い。
「中々の難題を仰る。しかし正しい。……こうしては如何か。カルマ殿が帝王との連名で次の大宰相をビビアナに推挙するのです。ビビアナは必ずや喜ぶはず」
「ああ、それは良い手ですね……それに……うん。良い手だ。はははっ。バルカさんは本当にすごいですね。どうしてこんな良い手を思いつくんですか?」
「直ぐにご理解頂けるダンの教えあってこそ……何故そこで嫌そうな顔をなさるのか。とは言え大した思い付きでは御座いません。元よりビビアナが次の大宰相となるでしょうから。現実に少し手を加えただけ。しかしカルマ殿が屈辱と感じて拒否する可能性もありますが。その点はどうなさる?」
「次の権力者はビビアナなのでしょう? だったら嫌がっても仕方ありません。そう書いて送るしかありませんよ。付け加えるならトーク様が散々苦労した地位です。そんなに羨ましいならやってみさせてはどうだって所ですね。
これを嫌がるようようではとても私に決定権を渡したりしないでしょうし逃げます。……アイラさん、これで逃げたとして納得頂けますか?」
「……したくない。だけど……ダンの言う通りだと思う。多分大丈夫だよ。カルマは屈辱だってだけで判断を間違えたりしないと思う」
厚い信頼だな。
私もカルマは比較的冷静だと思ってるが、今の精神状態がどうなってるか分からない。
ただビビアナにババを押し付けて、お前も出来ないだろザマァってするチャンスなのは間違いないはず。
……これでビビアナがケイを安定させたら……ちょっと困る。
ま、幾らなんでも無理っしょ。
「ではそのように書いて送りましょう。所であの近隣領主が攻めて来た際の策、細かい方策は御座いますか? ダンが戦の準備についてご存じならば問題ありませぬが、無い場合は……」
勿論知らない。
元々其処らへんはグレースに任せるつもりだった。
私に兵を集めたり指揮をとったりは無理っす。
「全く分かりません。私は以前言ったようにお願いするのが限界です。他の所はグレース様やバルカさんにお願いしたいと思ってました」
「本当に、あの通りに出来るのですな?」
「多分、大丈夫です。それにこれしか手を作れません。これで駄目なら最初から無理だったという事です」
「変な所で思い切りの良い方だ。しかしそう考えて下さるのならこちらもやり易い。雑事はお任せあれ」
「雑事……かなぁ? とにかくよろしくお願いします」
「僕は? 何をしたらいい?」
「ありませんね。戦となればアイラさんが頼りですから、それまでは休んでいて下さい」
「……残念だな」
しょんぼりしてしまった。
でも、アイラが変な行動を取るとカルマ達が警戒するかもしれない。
それに一緒に住んでくれてるだけで、私のストレスが激減するのだ。
「アイラさんが私たちを守ってくれるから安心して動けるのです。頼りにしてますアイラさん」
「……そう?」
「そうですとも。適材適所ですよ。リディアさんの代わりなんて……無理でしょ? でも戦となればアイラさん以上に頼れる方は居ませんから」
「うっ。……わ、分かったよ。戦まで休んでおく」
そーしてちょーだい。
さーて……。
……すんげー事になったな。
アイラが願いを聞いてくれて、欲を言えばカルマ達を領主として生き延びさせられれば最高と思っていたのに。
まさかリディアとアイラが配下になってくれるとは。
望外の結果という言葉以外に何といった物か。
二人ともどこまで付いて来てくれるかは分からないけど、今後とても頼りになるだろう。
後はカルマ達がどうするかだが、早くても一か月後か?
今の内にオウランさんへ連絡を取って準備を頼んでおこう。
ただ無意味になる可能性がある。とも言っておかないとな。
私は……一か月後に向けて問答の想定をしておくくらいか。
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