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戦乱の帝国と、我が謀略~史上最強の国が出来るまで~ 作者:温泉文庫
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オウラン氏族に渡す物

 さっそく明日から文字の授業が始まる。

 生徒は若い子たちばっかりである。
 勿論嬉しい。可愛い子もいっぱい居ると思う。
 美少年も一考の余地は……流石に無いな。
 ……勿論冗談です。
 たった一人のエルフが、子供に下心なんて見せたら比喩抜きで袋叩きにされる。

 まぁ、大人は日々の仕事で忙しく、余裕が少ないので時間を取るのは厳しいのだ。
 子供の方が文字の覚えは早かろうし、私としても文句は無い。
 下心も無い。
 ……信じてくんろ。

 ちなみに、獣人まではケイの言葉が通じる。
 流石400年続く大国、半端無いっす。
 ローマっぽいマウって国の書物を、バルカ家で見せて貰ったが私には読めなかった。
 何故かケイのラングウェッジをネイティブにリードあんどスピーク出来ちゃう私だが、どうもケイのみのようだ。
 ケイだけでもサンキューゴッドだけど、ちょっと残念だった。
 学ぼうかと思いはした。しかし辞書も無いのに無理ザンス。
 教えてくれる人……エベレストを超えて更に旅しないといけない国の言語を喋れる人なんて庶民の先生になってくれるわけが無いっしょ。
 オリンピックのボランティア募集で、応募条件に語学が堪能で一日八時間十日以上働ける人を望む位無謀だ。

 まぁ、この文字が何故か読み書き出来ちゃうってのは、真面目に神が居て助けてくれたとしか思えない。
 とは言え、我こそは神に選ばれし者也なんてのはありえん。
 時空のねじれに引き込まれた私に、せめてもの援助をしてくれた当たりだろう。
 そう、私はバッツだったのだよ。多分。
 いやぁ、5は名作でしたね。最後は切れちゃって、銭投げ→ものまねしちゃったけど。

 閑話休題。

 算数も教えるかは凄く悩んだ。
 が、止めた。

 ケイで使われてる数字がアラビア数字じゃないのだ。ゼロが無い。
 これでは私は教えられないし、この超性能数字を教えて何処かに伝わってはヤバイ。
 オウラン様に言って、算数はケイから教師を呼んで貰った方がよろしかろう。
 計算も必要になるはず。頑張って貰いたいとケイの辺境から応援する所存である。

 さて、授業だ。
 大勢の子供たちが私を待っている。
 ……ちょっと緊張するね。


---


「こんにちは皆さん。これからケイの文字を教えます。文字を覚えれば、ケイで物を買ったり売ったりするのに役立ちますし、オウラン様の手助けを出来るようになります。頑張って覚えて下さい」

 む、反応が微妙。
 というか、すっごく胡乱気な顔でこっちをみている。
 なんでやねん。
 何時もはスポーツ刈りだけど、ここらは寒いから伸ばしちゃってる髪が悪いんか?

「エルフ……」
「エルフだ……。大丈夫かな? さらわれたりしない?」
「地味だけど……ううん、地味だからもっと怖いかもしれないよ」

 おうしっと。
 人種差別ですか。
 あれかね、これは一発『ぷるぷるぷるぅ! ファンネ……ボクわるいエルフじゃないよぅ』とか言うべきなのかね?
 十二割通じんな。
 異世界の時点で十割。ジェネレーションギャップで更に二割。尚数字には当方責任を持ちません。

 ……助けてオウランさん。

「え、えーと。皆、聞きなさい。この人はエルフだが、だからと言って文字を教えられない訳では無い。わたしもこの人から学ぶのだ。皆にも期待している。良いな? 真剣に学ぶように」

「で、でも、オウラン様、私怖いです……」

 ぬぅ、何という高きハードルよ。
 オウランさんの指導力不足とは思ってません。
 相手は子供だからね。
 疑っちゃダメダメ。

「皆さん、文字は明るい所でこんな風に目から離して見ないと目が悪くなる……と言っても分からないか。とにかく、絶対にそうして貰います。だから、基本的には外で勉強します。皆さんの親御さんがきちんと私を見張ってますから安心してください」

「……そうなんですかオウラン様?」

「う、うむ。そうだ。安心して学ぶように」

 あーそこそこ。
 こっちを申し訳なさそうに見ない。
 Youはここの長。私は雇われ教師。
 謙虚は美徳だが、この子たちになんかダンってエルフは偉そうだったなんて思われちゃ困る。

 だが、どう頑張ってもアニメ化もしたケシカラン小学校漫画みたいな話にはなりそうもない。
 早熟の女の子が売りだと思ったら、エンディングでは成長が小学校で止まっていたというご都ご……驚きの展開だった。
 ……うむ。これは危険な邪念だ。
 あんなのを希望していては親御さん達にマジで殺される。

 とにかく真面目に文字だけを教えよう。
 私が居なくても学べるように、筋道を作っておきたい。
 モンスターペアレンツが居ませんように……。



---


 もう一つ重要な教育をしたいと思う。
 それは衛生管理、特に出産関係である。
 どーも、此処の人達赤子は死に過ぎだ。
 まぁ、環境が過酷だからというのもあるだろうけど。

 オウランさんに獣人の人口を聞いたが、草原族だけだと五十万程しかいないようだ。
 獣人全体を合わせても、六百万行くのかどうか。
 その内戦える者は三分の一程度。
 一方ケイの人口は現在五千万人は居ると思われる。
 戦える人間の比率は四分の一程度だとしても、そりゃ獣人側が押されてるのは当然だな。
 もうちょい人口を増やした方がよかろうて。

 とはいえ男である私が女性の出産に物を言うのは中々ハードルが高い。
 が、引かぬ、媚びぬ、省み……るのは大事だ。私はしょっちゅう間違うだろうし。
 何にしても話し合わないと始まらない。
 オウランさんにお願いして、産婆の皆さんとオウランさんに集まって貰った。

「本日皆さんに集まって貰ったのは、出産の手助けする方法で、私が書物から手に入れた知識を皆さんに話す為です。……何でしょうか皆さん。もの言いたげですが」

 皆さん戸惑っていたら良い方で、不快そうな人も居る。
 ぬぬぅ、困ったね。

「ダンさん、お若いですよね?」

「はい。二十歳になってませんね」

 肉体的には、だけど。

「子供は居ませんよね?」

「……はい」

 付き合ってる女性も居ませんわい。
 だって、布団の中では男の口が軽くなるって言うじゃん?
 気を付けるべきじゃん?
 近頃どうも平民はこの年齢で結婚するらしい。と気づいてちょっと肩身狭いです。

「それで出産について知っていると言われても……」

「やっぱり信用出来ませんか」

「すみません……。出産は大仕事です。若い男性にやり方を変えろと言われても受け入れるのは難しいですよ。産婆の皆も、己の仕事に誇りを持ってやってくれているんです」

 当然ですね。
 だが、何とかちょっとずつでも試して貰わんとなぁ。

「良く分かります。ですが、これは私の意見では無くて書物とお医者様から得た知識です。話した内容のうち、受け入れられる部分だけでもやってみてください。そして、それで結果がどうなったかを文字に書いて残してくれれば、効果が分かると思います」

 何時聞いて調べたかは秘密。
 書名も秘密。
 ……胡散臭くて当然だった。
 が、聞かれなかったのでセーフ。
 突っ込まれない内に話を開始しよう。

「さて、まず使う道具は事前に二十分程は沸騰したお湯に付けて下さい。使う布もです。そして、産まれて一か月は赤ん坊に触る前に手洗いをし、口に綺麗な布を巻いて……」

 少しでも取り入れてくれれば、やがて効果を実感できるようになると思う。
 だって、下手をすれば汚れてる刃物を使ってへその緒を切ってるみたいなんですもの。
 うがい手洗いなどの衛生関係も、一応教えておく。
 面倒そうだったし、余りやってくれないだろうが一応ね……。

 他の時間は、乗馬の練習とオウランさんに伝えたい内容を竹簡に書いて過ごす。
 マル秘文章なのに、とんでもなく嵩張る物になってしまっている。
 紙の偉大さが身に染みる今日この頃だ。
 一応、紙はあるのだが……お高い上に脆い。
 移動しまくる遊牧民に渡しても、あっという間にゴミクズになってしまうだろう。

 確か、地球では蔡倫(さいりん)さんって人が改良したと思うのだが……。
 今手に入るのは、こっちでも改良された後の紙なのだろうか?
 何にしろ、未だに木簡と竹簡が主流である。
 残念であった。
 まぁ、紙が主流と成る程実用的になってしまった所為で、回りまわって二十一世紀の人類が破滅しかけてる気もするから、このままの方が良いのかもしれない。

 ぬぅ、無駄な愚痴になってしまった。
 とにかく書く。トーク領に戻る前に書き終わらないといけないので、まんま締め切りに追われた小説家である。

 正直キッツイ。
 書き終わった後に修正箇所を思い出すと発狂しそうになる。
 修正液も消しゴムも無いから、木を削らないといけないのだ。
 だが、計画には必須である。
 冬の間寸暇を惜しんで書き続けた。
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