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戦乱の帝国と、我が謀略~史上最強の国が出来るまで~ 作者:温泉文庫
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リディアの将来予測1

 販売先が決まり、草原族とアルタ様側の担当者との面通しなどの雑事で忙しくなった。
 貰ったお金は私が持ち、食料を買う時になったら責任者に渡そうと思う。
 草原族が何を欲しがるかなんて私には分からないからね。

 草原族は皆酒飲みである。
 つまり、不必要な時には大金を渡してはいけない。
 酔った勢いで乱費なんて基本だからな。
 ちなみに私はこっちにきてから酔う程飲んだ事は無い。
 酔って口を滑らせるのが怖いのだ。


 やっとやるべき仕事を終えた日の夜、私はリディアの部屋に来ている。
 お願いしていた予想を教えて貰う為に。
 私がカルマの将来について推測する為の、ヒントを貰えると良いのだが。

「ダン殿、以前お尋ねになったカルマ殿が中央にて出世する為の条件と手段。そしてその後の予測について考えが纏まりました」

「有難うございますリディア様。早速ご教授ください」

 はよはよはよ。プリーズギブミーヒント。

「いえ、先にダン殿の意見をお聞きしたい。その後、私の考えを話しましょう」

 えっ。
 や、やだよ。
 この子、将来誰かの元に仕官するんでしょう?
 その時乱世ならば、他の所に仕官している人は基本的に敵だ。
 なのに私の思考を披露したくない。

「私の意見など、リディア様の前でお披露目出来るような物では……」

 あ、あかん。
 咄嗟過ぎて言い訳にもなってない。

「ダン殿。私は不思議なのです。貴方が草原族の所に行って茶を売る準備をし、此処に来たとなれば月日的に殆どカルマ殿と会ってないはず。トーク領にも長く滞在する時間は無い。なのに、貴方はカルマ殿についてこのような心配を抱いた。
 私の探求心はとても刺激されている。とはいえ、貴方の考えを教えて頂けるのならそれも忘れるでしょう」

 真っ青。
 そう言えば、此処まで殆どトライアンドエラー等に日数を掛けていなかった……。
 気が逸ってたし、確かに調べる日数は殆どかけていない。
 それが、こんな所で失敗になるなんて!
 何か、なにか言い訳は……。

「ち、地方の権力者が、中央での出世を願うのは普通では? しかも本人が若いとなれば尚更に」

「おや、よくご存じで。ダン殿も若いのに周りが見える方だ。確かに仰る通り。カルマ殿が中央での出世を願うのは珍しくも無い話。地方の者は中央の勝手な言い草に不満を持つものですから」

 あってたか……まぁ、普通そうなるだろうとは思っていた。
 命令を出すのが中央であって、しかも距離が離れてるってのに命令してたら現場の事を欠片も考えてない内容になるだろうし。
 事件はランドで起こってるんじゃない!
 国境線で起きているんだ!!
 って話だな。
 ドラマ自体は嫌いだったけど、あの台詞は良かった。
 これで納得してくれれば、有り難いのだが。

「それはそれとして、ダン殿。私はこれでも貴族。貴方の要望に応えて調べもした。その労力に対する報いとして貴方の意見を聞きたいというのは奇妙でしょうか? 私の好奇心を満たして下さっても良いとは思いませんか?」

 ……ごもっとも至極。何の反論も無い。
 弁護士に相談するよりも遥かにハードルの高い人に、知人だからってだけで骨折りをお願いしておいて私は対価を用意出来ない……。

 ……。
 駄目だ、諦めよう。

「愚考であり、恥ずかしいのですが……其処まで言われるのでしたら。
 カルマ様が出世する為には中央から引っ張って貰う必要があると思います。普通ならば、中央の貴族たちは懇意にしてる相手が居て、その者を頼れば十分ですが……。
 現在ザンザが皇帝の親族となり、庶人から大出世をしている。彼ならば頼れる貴族が居ないかもしれません。ですので、ザンザが地方の、紐が付いていない番犬を欲しがれば……カルマ様の中央でのご出世もあり得るのでは、と」

 カンペ……違う、参考元は当然、大出世を通した後に迂闊行動咎められての暗殺コンボを食らった何進(かしん)さんである。
 それと豊臣秀吉も。彼の出世も急に配下が必要となった織田信長あってこそだった。

 これを考えた時には、アレな事を思い出してしまった。
 つまり、銀河の英雄な伝説の話だ。
 金髪のイケメンが、番犬として国の偉い人から求められたのも紐が付いてないからでは無かったっけ?
 銀河の話は何進を参考にしたのだろうか……。
 一応述べておくと、情報のソースは無い。

 さて、このまま明々後日の事を考える訳にも行かない。
 深く頷くリディアを見てると非常に不安になるが、現実と戦わなければ。

「うむ。素晴らしい。大筋に異論はありません。先生、私が同じ考えに辿り着いたのは二日前。私の方が教えを請うべきかもしれない」

「ご冗談を……。それに私が考え付いたのは今朝ですから」

「ダン殿。その言い訳は少々酷い」

 で、ですよね。
 脊髄反射でした。

「ごめんなさい……」

「ええ、以後気をつけた方がよろしい。さて、世の動きは、というとザンザは近衛隊長となりました。このまま行けばケイ帝国全軍の頂点に立つ大将軍となる。しかも、彼は意外に軍人として才能があったようで、現在少しずつその力を広げている。
 大将軍ともなれば、ビビアナ・ウェリアさえ逆らえなくなるかもしれません」

 凄いなそれは。
 肉屋の兄ちゃんだったのに、いきなり一軍のトップになって上手くやれるとか信じられん。
 帝王の妻の兄という立場がそれだけ強いのか?

「それはそれは……順風満帆な。でも、そうなると今王宮を牛耳っている十官にとって煙たくなるのでは」

「可能性はあります。現在はザンザも十官の引き立てがあってこそと理解しているため謙虚ですが、自分の力が増えていくのを自覚すれば。そしてより上を求めるならばやがて衝突するようになるでしょう」

 じゃあ、確定じゃん。
 アーカーベー商法使う人間なんて上昇志向の塊でしょ。
 あの光景は忘れようがない。
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