2/146
起きると其処は
「お主、どうした? 生きておるのか?」
うん……背中を棒で突かれてる。
棒で突いて朝起こされるなんて記憶にないが……母さんか?
いや、今のは母さんの声じゃない。
というか、この体に当たる感触は草?
俺はそっと顔を上げて目を開き、相手の顔を見た。
「おお、生きておったか。お主、この様な所で如何した?」
いや、貴方こそ如何されたんですか。
色の薄い金髪。
動き易そうなミディアムポニーテール。
尖った耳。
どう見てもエルフっすよ。
きっちり美人で流石エルフっすね。
すっごく体育会系に見える凛々しい顔立ちで……。
……えーと……。あ、ポニーテールは関係無かったかも。
そうだよね。エルフはディード様の御代から風になびくロングだと決まってるよね。……いや、そういう話じゃない。
所で、その紫色の瞳はカラーコンタクト、略してカラコンなの?
「どうした。拙者の顔に変な物でも付いておるのか?」
「あ、いや……。えーと……。ちょっとお待ちください」
なんだここ……。
目の前の人もウルトラ変だぞ。
ウルトラと言っても三分で説明できるような変さじゃないが……、エルフ、簡素な皮鎧、槍、サンダルのような靴って……。
弓を持ってない上に『拙者』だなんて、エルフの自覚があるのだろうか。
あ、俺も同じような格好だ。
な、何がどうなって……。
「とりあえず水でも飲んで落ち着くと良かろう。ほら、全部飲んでも良いぞ」
「あ、有難うございます」
って、ヒョウタンで作った水筒かよ!
ぬぅ、生ぬるい。
とはいえ、確かに水のお陰で少し落ち着いた。
……あの耳、本物だろうか……どうしても確かめたい。
こう、もしかして、コスプレイヤーさん的な方だったりするのかも……。
「すみません、凄く、失礼だとは分かっているのですが、出来ましたら、お耳に触れても宜しいでしょうか」
「おお……乙女の耳に触れたいとはお主あまり感心せぬぞ? まぁ良かろう。地方によっては拙者のようなエルフの耳に触ると武運が高まると信じてるらしいが、そなたもその口か?」
え、マジでエルフって言うの。
いや、今は耳を確認しよう。
「そういう訳じゃないのですが……。凄い……本物だ……血管が通ってる……」
俺がそういうと、エルフさんは不快そうな顔をした。
「なんじゃお主、拙者が偽物のエルフだとでも思ったのか? 行き倒れかと思って親切にしていれば失敬な。両親は普通の人だが偽物などと言われる覚えはないぞ」
「い、いえ。とんでもありません。すみません初めてエルフの方を見まして。失礼しました」
「ああ、なるほど。そういう者もおろうな。こちらも早とちりした許せ。……うむ? なんだ、お主もエルフではないか」
「……は? 俺が? えっと、どうしてそう思われたのでしょうか」
「どうしても何も耳が尖っておる。最もその様子から見てそこまで魔力は扱えぬであろうが」
「魔力、です、か」
あ、マジだ。触るだけで分かる程耳が尖がってる。何これ。いつの間に俺は柔軟性の欠片もないオペレーターになったの。
エルフ耳に整形するなんていう発想をした人ってあのキャラだけっしょ?
いけない、一度落ち着いたのにまた混乱して来たぞ。
「お主、どんな田舎に住んでおったのだ。良く見ろこの槍を。芯は鉄で作ってある。このように重い物、魔力を扱って体を強く出来ぬと持ち歩ける訳無かろう?」
あ、はい。
重そうな槍ですね。
で、魔力が扱えると、重い物が持てるんですか。
身体強化の魔法とかですか? 攻撃力を二倍にしたり、防御力を二倍にしたりできるのでしょうか?
……今はこんなアホな考えを巡らせてる場合じゃないな。
「それでお主、どうしてこんな所に倒れていたのだ」
そう、それだ。
この人に、色々聞くか?
いや、何一つ分からない状況で武装した人に下手な情報を与えたくは無い。
とても良い人に思えるが……。
夢、ではないな。
夢の中での感覚は良く覚えてる。
あんな霞が掛かったような感じは全くしない。
……あれ? 俺、今凄まじくヤバイ状況なのでは?
家で寝て、起きたら……周り、全部、平原?
あ、遠くに……馬車がいっぱいあって、人の集団が……。
確実に、日本じゃない。
そして、もしかして……。
「すみません、あそこに見える馬車の群れは?」
「あれは商人の集団だ。見れば分かるだろうに。……顔色が悪いぞ? 何かあったか?」
やっぱり。
今、俺が喋ってるのは日本語じゃありません。
なのに、英語と違ってこの言語で思考できます。
ねいてぃぶっす。
……いや、これは助かったと言うべきだ。
言語が分からなかったら……死ぬ。
比喩ではなく事実として。
これは、あかん。
「実は、どうも迷子のようです。……出来ましたら、何らかの労働と引き換えに飢え死にしないよう助けて下さらないでしょうか」
槍を持った人間の前で、自分がどれだけ弱い立場か話すなんて正気か?
大人になってから初めてだ、他の人の善意に100パーセント寄りかかってお願いするなんて。
「む、そうなのか? ……その顔色、嘘ではなさそうだな。だが安心しろ。拙者は単なる護衛だが、商団では幾らでも仕事があろう。それに、次の町に着けば幾らか話も聞いてやるからに。大体、助けるつもりが無ければお主を起こそうとしたりする訳が無いであろう?」
「なる、ほど。有難うございます」
今、この人が言った言葉が全て本当なら凄まじく良い人だ。
とにもかくにも、信じて付いていくしかない。
……不安で吐きそう。
なんと、ロト太郎様よりキャラの絵を頂きました。
ラスティルになります。
やだ……凄く好み……。
私の脳内で作ってたキャラよりも、好みのお方に描いて頂けたように感じております。
寝て、起きたら目の前にこんな人が居て心配そうにこちらを見られたら、それだけで混乱しますね。
というか、ダンはこの人に耳を触らせて下さいとお願いした訳で……。
やっべぇ。図々しいと言うか、既に勇者の域に達している。
い、いや、混乱。そう、とてつもなく混乱していたから出来たお願いだったのです。
そういう事で一つお願いします。
所で、小さく描かれている白い歯がエロイと思っちゃうのは私だけでしょうか。
尚、この絵で私がロト太郎様にお願いをしたのは、前髪と表情のみです。
このイメージでと言ってる訳では無く、皆様の良いようにラスティルをイメージして下さればと思います。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。