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Outward Matrix

戦略コンサルタントのブログ。コンサルティング業務、英語、戦略策定、採用、育成等について書いています。

電通は本当にブラック企業なのか?実際のところを調べてみた

社会

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こんにちは、Shin(@Speedque01)です。昨日、自殺してしまった電通社員の方について記事を書きました。

こちらです。

ぼくは正直、電通が「完全に腐りきったブラック会社」だとは思えません。ぼくは知り合いに広告代理店の友人が何人かいて、詳しく話を聞いたことがあります。

電通ばかりを責めるのも何か違う気がするので、実際電通とはどのような会社なのか、そのときの話を参考にしながらまとめてみます。

電通ってそもそも何をしているの?

電通は「日本を支配している強大な会社」というイメージがありますが、具体的に何をしているのかなかなかイメージがつきません。過去に友人に聞いたところだと、主に下記のような感じで分けられるとのことです。

営業

営業のミッションは、各業界のクライアントから仕事を取ってくることです。コンサルティングファームにたとえると、シニアマネージャやパートナーが客先に行き、予算をガチっと取ってくるようなイメージ。

予算を取ってきた後に、社内の人員をアサインしたり、もしアサインできる人がいない場合は自分で仕事を進めたりもするとのこと。ここもコンサルティングファームのシニアマネージャと似ていますね。

内容的には主に広告の仕事。CMの製作とか、新聞や雑誌広告のデザインの仕事を取ってきて、それを内部に振るというのが仕事になります。

仕事としては一般的な営業と大差はないですね。仕事のきつさや風土というところに関しても、クライアントの文化に依存することが大きいということでした。

メディア

「メディア」と呼ばれる人たちの仕事は、ラジオ局やテレビ局、新聞社や雑誌社など、各種メディアとの調整です。営業に、「このメディアの枠を売ったらどうですか」と逆提案することもある。

電通がCMを作った後には、各放送局の枠に乗せて全国放送をする必要があります。そこでどこの放送局で何を流すのか決めて、金額調整をやったり、実際に流すために必要な調整をしたりするのが仕事になります。

実際にその各テレビ、雑誌、ラジオの人たちとやり取りしながら、「コレを流して」といったり、流すための枠を仕入れたりしていきます。仲が良くなればよくなるほど、金額のやり取りの柔軟性も増してくるということも。

大事なことは、各メディアとの日常の関係を保ち、滞りなく広告を流すようにきっちりと仕事を回すことです。だから、この仕事には正確性と規律が求められ、ある意味体育会系気質といえます。

上下関係が厳しく、細かな所作を仕込まれることもとても多いとのこと。媒体者との関係をしっかりやるのも大事なので、人に嫌われない工夫や飲み会もとても大事になるようです。

ただ、インターネットメディア担当の場合はちょっと毛色が違うかもしれません。Webの場合はKPIが目に見えやすいということもあり、よりしっかりと分析をすることが求められる場合が多いようです。

マーケティング

マーケティングの人たちの仕事は、広告やその受け皿になるオウンドメディアを作る際に、最終的なKPIに対して貢献するための全体の絵を描くことです。イメージとしては、コンサルティングファームのマネージャやハイレベルなコンサルタントが近いかもしれません。

KPIがそもそもないクライアントにはこちらから定義してあげたりとか、もしくはもっと大きな次期成長戦略を提案したりすることがあるとのことです。

4P(価格:Price、場所:Place、広告:Promotion、商品:Product)に関わるところだったら何でもやるけれど、主には広告宣伝の整備をしてあげるような仕事が多いとのことです。

最近は分析寄りの仕事がだいぶ多くなってきており、SASやRを使って重回帰分析やコレスポンデンス分析をするような人も多いとのことでした。

クリエイティブ

クリエイティブとは、その名のとおり表現を作る人々のことです。ただ、アーティストであると同時に、マーケティング等ビジネス寄りの話にも精通していないといけないという特徴も持っています。

具体的なアウトプットとしては、CM及び新聞や雑誌用のグラフィックですが、最近はWebサイトやオウンドメディアなど、デジタルの製作物も多くなってきているとのことでした。

面白いところでは、店舗デザインもする。CDの歌詞を作る人、ショートムービーやスマホアプリを造ったりする人もいるなど、多種多様です。そういうところをなんでもできるというスター人材はあまりおらず、Webに強い、CMに強いなどなどどこかに特化している人が多いということでした。

電通の風土は?

友人たちの話によると、電通は「上下関係が非常に明確な風土がある」とのことでした。

上下関係が非常に強い分、上の人が下をちゃんと守るという雰囲気があり、使えない下を容赦なく切るというよりは、親分の上司が親身に指導をするという感じが多いとのこと。上下関係がある文、上が下を守れよ。その分下は上を尊敬して尽くせよ、という価値観が共有されている、非常にウェットな文化です。

つまり、上との関係がうまくいかないと、追い詰められる可能性が非常に高いといえるのではないか、ぼくはそう考えています。現に、上の人がヤバい人でそりが合わなくなって、会社にこなくなってしまったとか、下が生意気で放置プレイをかましたとか、そういう話は結構聞くんですよね。

ちなみに、電通の鬼十則についても聞きました。

  1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
  2. 仕事とは、先手々と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
  3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
  4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
  5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
  6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
  7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
  8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらない。
  9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
  10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

吉田秀雄 - Wikipedia

これは研修のときに叩き込まれるようですが、その後は特に何かあるわけではないらしいです。なので、全員が暗誦できるというワケでもないとのこと。

ただ、これ自体は気に入っている人が多く、古いタイプの広告マンは、これをよりどころにしているパターンもあるかもしれない、との友人談でした。

精神的に病んでしまう人はいる?

では、電通で精神的に病んでしまうはいるのでしょうか。当たり前ですが、答えはYESです。

しかし、友人たちの話を聞いていると、これは「電通だから」というわけではなく、コンサルティングファームのようなクライアントが目の前にいる仕事であれば、どこでもありえることです。

ただ、電通は割とそれでも保護されているほうだといえるとのこと。

そもそもの人数が多いため、業務の分担を自然とする空気があるそうです。人の余裕があるからこそなせるワザですね。産業医との面談や、上司からの「働きすぎだ!」という注意もあるため、そこまでの重労働になることは考えづらいそうです。

倒れてしまう人は、アラートをあげる余裕もなくなってしまったのかもしれませんね・・・。

電通から転職する人はいる?

電通から転職する人はあんまりいないとのことでした。

メディアは正直専門領域も技術もなく、転職市場での価値はかなり低いとのことです。また、これらの部署では若いうちに我慢して上に上り詰めることができれば、えらそうにしつつ下に実務を振るだけで高給がもらえますので、辞めない方がトクなのです。

営業やマーケティングにとっても、電通はトップオブトップであるため、外に出る意味がそもそもないそうです。年収がどんどんあがり、仕事も充実感がある。そんな状況ではなかなか外にでるモチベーションも湧かないのでしょう。

クリエイティブは、電通が完全にトップなので、やめることはほとんど考えられないそうです。外資系の代理店という行き先はあるにはありますが、電通に比べると平均年収が300万円-500万円ほど低いとのことでした。あと、そもそもクリエイティブの人で英語ができる人があまりいないため、外資にいくという考えもなかなか起こさないとのこと。

電通はオススメ?

友人たちの話を聞いていると、電通をまるっと評価することは難しく、配属された部門でその満足感がある程度定義されている印象を受けました。

マーケティングやクリエイティブだったら間違いなく良い会社といえるでしょう。

彼らの話によると、クリエイティブは日本の中で一番恵まれている環境で、外資のようなドライな感じもなく、しっかり育ててくれるとのことでした。製作物の受賞率や、受賞させるためのサポートも手厚く、個人としての価値がどんどん高まっていく感覚が得られるとのことでした。

マーケティングも、クライアントが膨大におり、短い期間でいろいろな案件に携われるとのこと。コンサルティングファームの場合、そこまで人数も多くなく、コンサルタント自身で営業をやっていたりするので、持てるクライアントに限りがあります。

しかし、電通の場合は営業部門がメチャクチャしっかりしていて案件を持ってきてくれるので、担当できる仕事の範囲がとても広いとのことでした。研修も手厚いし、パフォーマンス発揮できなかったら即クビのような話もないそうです。親切な先輩もたくさんいるとのことでした。

反面、営業やメディアはあまりオススメできないという声がありました。担当するクライアントによって風土が違うため、その風土に合わせられないと非常にきついとのこと。

端的な例で言うと、外資系のマーケティング部門担当のところと、ドメスティックなバリバリ保護産業担当のところだと、電通の風土もまったく異なります。

前者の場合はクライアントも人付き合いを発注してるのではなく、金になるプロモーションプランを求めているわけです。飲んだりごますったりするのなんてどうでもいいから、きちんとクオリティの高いものや新しいアイディアをもってこいという空気が漂っています。

後者の場合は、日ごろの人付き合いや関係構築が契約に直結します。だから、定常で受注しているものをいかにミスなくこなすか、クライアントに嫌われないかというところが何よりも大事になってくるのです。

電通自体は待遇も良くキャリアチャンスも豊富にあるいい会社だが・・・

友人たちの話を聞いていると、電通は待遇も素晴らしければキャリアチャンスもある、非常に良い会社だなという印象です。就活生からの人気が高いのも頷けます。

しかしながら、電通は今回の自殺事件でだいぶ大きなダメージを受けました。いくら全体として素晴らしい体制があったとしても、いくつかの部署で爛れた人間関係や労働環境があり、その結果が今回の事件であることは疑いようがありません。

また、サラリーマンのぼくらも、自衛の手段は多く持つべきであることもまた事実です。あまりにつらかったらアラートをあげる、友人に相談するなどの逃げ道を事前に準備しておき、自分を追い詰めすぎないような工夫も必要になってくることでしょう。

全てのビジネスパーソンが、楽しく仕事をできるような世界になることを心から祈っています。