異例の謝罪 批判拡大に危機感
【ワシントン西田進一郎】米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏(70)の女性に関するわいせつな発言を記録した映像と音声が7日、米紙ワシントン・ポストによって公開された。共和党指導部から強い批判が出たこともあり、トランプ氏は8日未明、約1分半のビデオメッセージを発表し、「私は間違っていた。謝罪する」と語った。
トランプ氏が自身の発言について明確に謝罪するのは異例で、強い危機感の表れと言える。ただ、対応が後手に回った感があり、投開票日まで約1カ月の重要な時期に、大きな痛手を負った形だ。
映像と音声は2005年、トランプ氏が人気ドラマの撮影現場に向かうバスの車中で記録された。トランプ氏は既婚女性と性的関係を持とうとしたことを「くどこうとしたが、失敗した」と告白。また「スターなら、彼女たちは何でもやらせてくれる」などと言い放った。トランプ氏は当時、メラニア夫人と結婚したばかりだった。
トランプ氏はこれまでも、「女性への敬意を欠く発言」があると批判されてきた。民主党候補のヒラリー・クリントン氏(68)との第2回テレビ討論会を9日に控えており、新たな攻撃材料を得たクリントン氏は、攻勢を強めるとみられる。
映像などの公開直後、トランプ氏は「誰かの気分を害したのであれば謝る」との声明を出して乗り切ろうとした。しかし、批判は民主党側からにとどまらず、共和党のライアン下院議長が「気持ちが悪くなる」と切り捨て、地元ウィスコンシン州で8日に開く集会にトランプ氏を参加させないとの声明を発表。党予備選を戦ったジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は「どんな謝罪の言葉も通用しない」、オハイオ州のジョン・ケーシック知事も「コメントは間違っており、侮辱的だ」と相次いで非難した。
今回の発言が、女性だけでなく、トランプ氏の大統領としての資質を不安視する有権者を遠ざけることになるのは必至だ。すぐに明確な謝罪をしなかったことで発言に関する認識の甘さも露呈した。