「怒られないための自己防衛の嘘」って子どもにはよくあることですよね。私自身、子どもの頃を振り返っても思い浮かぶシーンがあります。
子どもとしては1度ついた嘘はなかなか認めにくいんですよね。
でも親としては、事実をちゃんと認めて伝えることは伝えたいと思ってしまうから、つい、嘘を認めさせることに固執してしまったり。
お笑いコンビ「爆笑問題」太田光さんの妻であり、芸能事務所「タイタン」の敏腕女社長でもある太田光代(おおた みつよ)さん。
彼女が幼い頃についた嘘で、父親がとった行動が素晴らしかったのでご紹介します。
太田光代さんの生い立ち
太田光代さん、行動力があって決断力も早い。数々のエピソードを耳にするにつけ、そのかっこよさに憧れてしまいます。
そんな彼女は、母1人子1人の母子家庭で育ちました。父親とは離婚でも死別でもありません。母は未婚のまま光代さんを授かり出産したのです。
女手ひとつで光代さんを育ててきた母でしたが、光代さんが6歳のときにお見合いをして結婚が決まりました。
幼い彼女にとってこれは苦痛でした。突然現れたこの男性に、母親を取られたような気持ちなったと言います。その心情は想像できますね。
そんな気持ちから、養父にはなかなか馴染むことはできなかったそうです。
私はやってないと嘘をつく
小学校1年生のある日、両親の留守中にこっそり火遊びをしていた光代さんは、うっかりガラスの灰皿を割ってしまいます。
怒られる!火遊びも、灰皿を割ったことも。
必死に隠そうとして、瞬間接着剤で灰皿を元の形に戻そうとしましたが、割れたのを隠すことはできない。
それを見つけた母親は彼女を叱りました。しかし咄嗟に「私はやっていない!」と嘘をつきます。
不自然につなぎ合わされた灰皿を見れば、子どもがやったことは明らか。しかし光代さんは、その事実を決して認めませんでした。
そのとき父が言ったこと
そのとき、はたで見ていた父親が口を開きました。
「オレがやったんだ」
父の言葉に戸惑う光代さん。母がその場から立ち去ると父は言いました。
「ウソをつくと、誰かが犠牲になる。1つのウソがたくさんの人を犠牲にするきっかけになるんだ」
父親は身を以てして、嘘をつくこととはどういうことかを伝えようとしたのです。「怒られるより効きました」と光代さんは言います。
子どもが悪いことをしたときに、それが「悪いこと」だと伝えるのは必ずしも「怒る」だけじゃない。近年よく言われる「怒らない育児」というのとはまた違う。
自分の嘘で誰かが犠牲になるという体験をさせ、その心苦しさや、嘘が生み出したものがなにかを学ばせたのです。
子どもたちの未来のために
光代さんの父親のやり方を通じて見えてきたもの。
親が子どもに何かを伝えるのは、今日明日を正しく生きるためではなく、いつか親の手を離れ、社会に出ていく子どもたちの未来のため。
そのために大切なのは、ただ怒るだけではなくそれがどれだけ心に触れられるか。
私も子どものころに自分がやったこと人のせいにして嘘を突き通してしまったことがありました。そのために犠牲になった人がいました。
言い出せなかったし、謝れなかった。何十年経ってもそのときのことが、頭に焼き付いていて、思い出すたびに胸が痛みます。
小さな嘘を正すことに固執する必要はないけれど、それがときには、他人や自分をも傷つけてしまうことを伝えられたらなって思います。
追伸
その後の光代さんと父親は非常に良い関係を築き、今日の行動力や思考の形成は父によってもたらされたものだと語っています。