北朝鮮 “核保有国”既成事実化図る狙いか

北朝鮮 “核保有国”既成事実化図る狙いか
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北朝鮮が初めての核実験を行ってから9日で10年です。北朝鮮はちょうど1か月前に5回目の核実験を強行したばかりですが、北東部の核実験場での活動を継続していると見られ、核開発を一段と推し進めることで、みずからを「核保有国」だとする主張の既成事実化を図る狙いがあると見られます。
北朝鮮は、10年前の2006年10月9日、北東部ハムギョン(咸鏡)北道のプンゲリ(豊渓里)にある核実験場で初めての核実験を行い、「地下核実験を安全に実施し、成功した」と発表しました。
その後も、北朝鮮は2009年5月、2013年2月、ことし1月と地下核実験を繰り返し、ちょうど1か月前の先月9日には、初めての核弾頭爆発実験と称して5回目の核実験を強行しました。

核爆発の規模は、1回目がTNT火薬にして1キロトン以下でしたが、5回目では推定で10キロトンから12キロトンと、実験を重ねるごとに大きくなっていて、核開発技術が向上しているという見方が出ています。
リ・ヨンホ外相は先月23日、国連総会での演説で、「アメリカの脅威に対する自衛的措置であり、核武力の質と量を引き続き強化していく」と強調しました。

アメリカの研究グループは6日、北朝鮮の核実験場の衛星写真を分析した結果、3つある坑道の周辺で人影や車両などが確認でき、活動が継続されていると指摘したほか、韓国政府も新たな核実験を行う準備ができていると見て、警戒を強めています。

北朝鮮は核弾頭の運搬手段である弾道ミサイルの開発も加速しながら、核開発を一段と推し進めることで、みずからを「核保有国」だとする主張の既成事実化を図る狙いがあると見られます。

核開発能力の向上目指す北朝鮮

北朝鮮は、核保有国のアメリカと「対等」に渡り合い、体制の保証を取り付けるためには、核兵器を保有しなければならないという考えの下、この10年間で5回にわたって核実験を繰り返し、核開発能力の向上を目指してきました。

北朝鮮は、旧ソビエトから核開発の技術を得て、1980年代までに実験用原子炉の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを抽出し、核開発の動きを本格化させました。
その後、プルトニウムだけではなく、ウラン濃縮による核開発にも乗り出し、「アメリカの核の脅威から国を守るための自衛的措置だ」として、みずからの核開発を正当化しています。

北朝鮮が10年前の2006年10月9日に初めての核実験を行った際、爆発の規模はTNT火薬にして1キロトン以下と、広島に投下された原爆の15分の1以下にとどまりました。
しかし、2009年5月の2回目は数キロトン、2013年2月の3回目は推定で6キロトンから7キロトンと、実験を重ねるごとに規模が大きくなります。
そして、「初めての水爆実験」だったと主張することし1月の4回目は6キロトン程度でしたが、「核弾頭の爆発実験」と称して行った先月9日の5回目は推定で10キロトンから12キロトンと、これまでで最大規模となりました。

北朝鮮は「小型化、軽量化、多種化された核弾頭を、必要なときに必要なだけ生産でき、核の兵器化はより高い水準に達した」と強調し、みずからの核開発技術が着実に進展していると内外にアピールしています。

また、北朝鮮は、核弾頭の運搬手段である弾道ミサイルの開発も加速させています。ことしに入ってからは事実上の長距離弾道ミサイルや、新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイル、それに中距離弾道ミサイル「ノドン」など、射程の異なる弾道ミサイルを20発余り発射していて、核ミサイルの脅威をあおっています。

北朝鮮の瀬戸際外交

北朝鮮は、過去、核開発を巡って朝鮮半島の危機をあおり、アメリカから譲歩を引き出そうとする「瀬戸際外交」を展開してきました。
2006年10月、北朝鮮が実験用原子炉の使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを使って初めての核実験を行うと、当時のアメリカのブッシュ政権が北朝鮮との対話姿勢を見せ始めます。

2007年2月の6か国協議では、北朝鮮が核施設の無能力化などを条件に、各国がエネルギー支援を行うことで合意し、2008年10月にはアメリカ政府が北朝鮮のテロ支援国家の指定を解除しました。

しかし、オバマ政権発足後の2009年5月、北朝鮮は2回目の核実験を行います。2010年11月には、アメリカの専門家を核施設が集中するニョンビョン(寧辺)に招いて、数多くの遠心分離機が並ぶ施設を公開し、ウラン濃縮による核開発も進めているという懸念が強まりました。

アメリカは北朝鮮との直接交渉を重ね、2012年2月には北朝鮮が核実験やウラン濃縮の一時凍結などと引き替えに、食糧支援を行うことで合意します。
ところが、そのわずか1か月半後、北朝鮮が事実上の長距離弾道ミサイルの発射を強行したことで、アメリカが食糧支援を見合わせることを決めると、北朝鮮は米朝合意を破棄する考えを表明し、2013年2月には3回目の核実験を強行しました。

その後、北朝鮮はみずからを「核保有国」だと主張して、6か国協議をはじめとする非核化を前提とした交渉を拒み、アメリカに対しても「核保有国」として「対等」の立場で話し合うよう求め、米朝間の直接対話は4年半以上途絶えたままです。

ことしに入ると、北朝鮮はこれまで3、4年ごとに繰り返していた核実験を、たった8か月という異例の短い間隔で再び強行し、「核保有国」だとする主張の既成事実化を図ろうとしていると受け止められています。

国際社会の対応は

核開発を続ける北朝鮮に対し、国際社会は制裁を強化しながら圧力を加えてきました。

国連の安全保障理事会は、北朝鮮による核実験などのたびに、合わせて5回にわたって制裁決議を採択しています。
一連の決議では、国連加盟国に対し、北朝鮮による核兵器や弾道ミサイルの開発につながる物品や技術の輸出入の禁止、核兵器などの開発などに関わった個人や組織の資産凍結や渡航禁止などを科してきました。

中でも、ことし1月の4回目の核実験を受けて3月に安保理で採択された制裁決議は、これまでで最も厳しい内容で、各国から北朝鮮への航空燃料の輸出を原則として禁止することや、北朝鮮からの石炭や鉄鉱石の輸入制限などが新たに盛り込まれました。
しかし、制裁が強化される中でも、北朝鮮による核開発には歯止めがかかっておらず、制裁の実効性が問われており、関係国の間には手詰まり感も広がっています。