自動翻訳の技術 新システムや製品開発の動き広がる

外国語を瞬時に翻訳する「自動翻訳」の技術がAI=人工知能の活用などで急速に進化していることから、企業の間では新しいシステムや製品を開発する動きが広がっています。
富士通は12の言語を同時に自動翻訳するシステムを開発しました。パソコンに付けられたマイクを使って話すと、コンピューターが音声を認識し、翻訳した内容が画面に文字で表示されます。
複数のパソコンを使えば、さまざまな外国人と同時にやり取りすることが可能で、企業の会議や学校の授業など向けに早ければ来年の発売を目指しています。
開発担当の福岡寿和さんは「耳が不自由な人のために開発したものを、外国語ができない人にも利用範囲を広げられないかと考えた。これまでだったら通訳が必要な会議でも活用してほしい」と話しています。

日常会話だけでなく、企業の特殊な業務に使うシステムも登場しています。NTTドコモとベンチャー企業2社がおととし設立した、みらい翻訳は、医療や特許関連の業務といった特殊な翻訳のシステム作りを手がけています。
専門用語やその分野で使われる独特の言い回しなどの膨大な言葉のデータを集めて翻訳の精度を高めているということで、顧客の企業や大学の要望に合わせて設定できるのが特徴です。
さらに、電子メールのソフトに組み込むことで、瞬時に翻訳できるシステムも開発しました。海外の部署や取引先と頻繁にメールでやり取りする企業を中心に販売しているということです。
開発担当の鳥居大祐さんは「あらゆる分野で翻訳の精度を高めて、自動翻訳が生活に溶け込むようにしていきたい」と話しています。

三菱電機は自動翻訳できるタブレット端末の開発を進めています。日本語で話しながら画面を指でなぞると、日本語とともに外国語に翻訳された文章も表示され、音声も同時に流れます。
開発を担当した三菱電機の平井正人さんは「将来的にはアプリを入れれば誰でも気軽に使えるツールになるように実用化を急ぎたい」と話しています。

自動翻訳の技術が急速に進化しているのは、AI=人工知能の活用や検索機能の高度化が背景にあります。

一方、屋外などで持ち運びができる自動翻訳の製品の開発も進んでいます。パナソニックはメガホン型の翻訳機を開発し、空港や駅などで実証実験を行っています。
このメガホンを使えば外国語を話すことができない駅員なども災害時や混雑時の誘導を行うことができるというもので、英語、韓国語、中国語に対応しています。
メーカーは東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年までに実用化することを目指しています。

拡大する市場規模

民間の調査会社「矢野経済研究所」によりますと、昨年度の翻訳や通訳関連のビジネスの市場規模は2611億円で、前の年度に比べて3%拡大しています。
特に製造業や特許、それに医療などの分野で拡大しているということで、今年度の市場規模はさらに2%余り増え、2671億円になると予測しています。
一方、政府は、東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年に、日本を訪れる外国人旅行者を今のおよそ2倍の4000万人とする目標を掲げています。
目標の達成にあたっては、無料Wi-Fiなどの通信環境の整備と、外国語への対応が課題として挙げられています。このため、自動翻訳技術をめぐっては、企業だけでなく国も国家プロジェクトとして力を入れています。
国立研究開発法人「情報通信研究機構」は、スマートフォンなどで使う自動翻訳アプリを無料で公開し、実証実験を行っています。
この翻訳アプリは30の言語に対応し、観光地や病院などで想定される会話を音声と文字で翻訳するもので、2020年までに実用化を目指しています。