〈時代の正体〉 あすヤマ場の副読本問題 「朝鮮人虐殺」記述どうなる
- 公開:2016/10/06 12:00 更新:2016/10/06 19:43
- 神奈川新聞
【時代の正体取材班=石橋 学】横浜市教育委員会発行の中学生向け副読本から関東大震災時における朝鮮人虐殺の記述が消える可能性がある問題が一つのヤマ場を迎えようとしている。7日開催の市教委定例会で虐殺の史実を掲載するよう求めた要望書が議題に上ることが決まった。「負の歴史をなかったことにするのか、教訓として次世代に伝えていくのか。いま、大きな分かれ道に立っている」。虐殺の記述を巡る市教委の対応に政治の圧力への迎合を映しみてきた市民団体のメンバーは、要望書に対する市教委事務当局と教育委員の発言に注目している。
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市民団体「歴史を学ぶ市民の会・神奈川」が現在作成中の新副読本「Yokohama Express(ヨコハマ・エクスプレス)」の原案を情報公開制度で入手したのは6月30日。代表の北宏一朗さん(75)は歴史のページをめくり、「ここまできてしまったか」と愕然(がくぜん)とした。関東大震災を説明する箇所に朝鮮人虐殺の記述は一切なかった。
予感はあった。旧副読本「わかるヨコハマ」の虐殺を巡る記述が保守系市議の批判を受け、その声に押されるように後退した表現に改訂されてきた経緯があるからだ。
発端は2012年7月、市会常任委員会での自民党の横山正人市議の発言だった。横山氏は「あたかも軍や警察が虐殺したようになっている」「『虐殺』は世間で使われる表現ではない」と指摘し、外交問題に影響を及ぼしかねないと問題視。市教委はその場で改訂を約束し、12年度版わかるヨコハマは回収された上、焚書(ふんしょ)を思わせる溶解処分にされ、13年度版では虐殺の主体から「軍隊と警察」が削除され、「迫害と虐殺」は「殺害」に書き換えられた。
だが、軍隊と警察の関与は数々の歴史研究が明らかにしてきた揺るがぬ事実であり、だから虐殺と表記している歴史教科書は少なくない。
そうした教科書が外交問題になったこともない。横山氏の批判は不見識に基づく筋違いなものにすぎなかったが、その主張を受け入れる市教委の不可解な対応に、北代表は政治権力に対する忖度(そんたく)の影をみてきた。
「日本が行った加害の歴史にほおかむりし、被害者として振る舞おうとする大きな流れが政治によって強められている。13年度の改訂では、震災当時子どもだった日本人が虐殺に対する反省を込めて建てた慰霊碑の写真まで削除された。政治家の意向に迎合してなされた忖度以外のなにものでもない」
一方で、同会のほか山田昭次・立教大名誉教授ら歴史研究者が記述を元に戻すよう要望しても、市教委が顧みることはなかった。
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