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【社説】

ノーベル平和賞 内戦終結きっとできる

 和平を決してあきらめるな、という励ましだ。南米コロンビアのサントス大統領の受賞が決まったノーベル平和賞。半世紀以上にわたる内戦終結へ、コロンビア国民の英知も試されている。

 ノーベル賞委員会は授賞理由として、サントス氏が左翼ゲリラ「コロンビア革命軍(FARC)」との内戦終結に向け「断固とした努力」を示したことや、国民投票の形で和平合意に民意を反映させる方式をとったことなどを挙げた。

 政府とFARCは五年越しの交渉の末、八月に和平合意にこぎつけた。ところが、今月二日に行われた国民投票で僅差で否決され、最悪の場合、内戦再発の危険も出てきた。

 和平合意が否決されたのは、殺害や誘拐を繰り返したFARCの議会進出を容認する内容だったことや、元戦闘員への処罰が予想以上に軽かったことが、強い反発を買ったためだ。

 中南米諸国では一九五九年のキューバ革命を契機に、マルクス主義を掲げる反政府左翼ゲリラが台頭した。

 六四年に結成されたFARCは、最盛期には二万人の要員を擁し、国土の三分の一を実効支配した。内戦は二十二万人以上の犠牲者を生み、六百万〜七百万人が家を失った。

 そんな内戦に逆戻りすることを、国民が望んでいるわけではない。ノーベル賞委も「和平合意は死んだわけではない。国民投票は平和に反対したわけではない」と強調。そのうえで、和平交渉にはあらゆる政党を関与させることをサントス氏に、各党には建設的な関与と責任を分担するようそれぞれ求めた。

 いわば国民の総意を結集して違いを乗り越えてほしい、という注文だ。

 無論、仕切り直しとなった和平交渉の道のりは険しい。ノーベル賞委も国民和解と元戦闘員に対する処罰のバランスをとるのは「極めて難しい」と認める。

 テロや難民問題が噴き出した世界には、狭量な民族主義や排他的なムードが立ち込めている。それだけにコロンビアが和平を達成することは意義が深い。

 昨年は米国とキューバが敵対関係に終止符を打ち、五十四年ぶりに国交を回復した。

 ノーベル賞委は言う。

 「平和と和解と正義のために戦うすべての人々を励ましたい」。それは、コロンビアだけのことでは無論ない。

 

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