人工透析ブログ炎上の背景にデタラメな「日本財政破綻論」 無駄削減には客観的線引きを (1/2ページ)

2016.10.07

 人工透析について、ネット上で話題になった。ある著名人が自分のブログで「人工透析患者の多くは自業自得なのに医療費を使っている」と問題提起したところ、多くの批判が寄せられ、テレビのレギュラー番組を降板せざるを得なくなった。ネット上だからか、本人の不注意だったのか、不適切な表現があったためだ。

 そのブログを読んで、大いに気になる点があった。日本の財政がもたないと思い込んでいることだ。だから医療費のカットが必要だとして、人工透析を例示していた。おそらく本人は日本の財政をおもんぱかっての発言であり、何が悪いのか、わかっていなかったのではないか。

 筆者は、医療関係者に日本の財政状況を説明する機会も少なくない。本コラムの読者であればわかっているだろうが、日本の財政はそれほど危険な状況ではない。

 日銀を含めた連結ベースのバランスシート(貸借対照表)を作れば、「負債」に見合う「資産」があり、資産から負債を差し引いた純債務額はほぼゼロである。それに、見えない資産である徴税権を加味すれば、明らかに資産超過である。

 つまり、標準的なファイナンス理論から見れば、日本政府が破綻するという話はホラー小説と同じレベルだ。実際、日本政府が破綻するといわれて20年くらいたっているが、金利は高騰せず、為替が円高になっている現実をみれば、破綻話がいかにデタラメであるかを示しているだろう。

 この破綻シナリオは、保有する国債や銀行預金を売らせて、他の金融商品を取得させるような悪徳商法にも使われる手法であるので、この種の話をする人には気をつけたほうがいい。

 

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